意外な再会と最後のプログラム
間違いなく、ホープス子供合唱団として、 壇上に上がってきた子供達。その真ん中に立つのは、ホープスタウンの孤児院の年長者、ナタクだった。
「ナタク?誰だソイツ!?」
「確かあたし達と出会う前に立ち寄った町で、知り合った孤児院の子だよね!?」
レオとレイナにも、2人と会う前の事は、一通り話してある。レオはすっかり忘れてるようだが、レイナの方は、覚えていたみたいだ。
「ああ。その町を出てから間もなく、山中でレオと出会ったんだ。」
「あの子間違いなく、ナタクくんですよ。よく見たら、他の子供達も、同じ孤児院の子達ですよ!」
「本当だ!」
ナタク以外の子供達も、見覚えがある。
あの合唱団の子供達は、皆、あの孤児院の子供達だ。
ホープス子供合唱団って…
等と疑問に思っている内に、合唱団の合唱は始まった。
♪♫♬〜♪♫♬〜♪♫♬〜
子供らしい、高い声でナタク達は歌った。子供故、少々の拙さはあるが、指揮者の女の子を指揮に合わせ、声は揃えられ、皆息が合っている。
「(指揮者のあの子もしかして…)」
等と思ってる間に、合唱は終わった。
会場からは拍手が送られた。客席に向け、頭を下げるナタク達。
指揮者の子もこちらを向き、頭を下げた。その子の顔を見て、
「(やっぱそうだ…)」
「やっぱり、あの子ロールちゃんですよ!」
リリーナも気付いてたようだ。
そう。指揮者をしていたのは、ナタクと同じく、孤児院の年長者の、ロールだった。
ナタク達の出番は終わり、壇上を降りていった。
その後も、プロの演奏家によるピアノの演奏等が行われ、演奏会は終わった。
演奏会後、俺等はナタク達を訪ねた。
向こうも、俺等に気付いていたらしく、すんなりと面会出来た。
「いやはや、こんな所でお前等と会うとは思わなかったぞ!?」
「俺達もだよ。なぁ、ロール!?」
「ええ。壇上でタイガーさん達らしき姿があって、顔には出さなかったけど、驚きましたよ!?」
「そうなんだ。ナタクくんにロールちゃん、他の皆も元気だった!?」
「「うん!」」
皆が元気よく返事した。
「てか、何なんだよ、ホープス子供合唱団って!?何時から合唱団になったんだよ!?」
「ああ、アンタラが町を出た後でな…」
聞けば、俺とリリーナが町を出た後、アチコチでイメージソングを創って歌っていた。
そしたら、それを見た下の子供達も、自分も歌いたいと言って来て、歌を教えていた。
それを教会の方で発表したら、大盛況。
テレシアや神父の進めもあって、合唱団を正式に結成した。
以降、町の各地で発表、それが話題となり、他所の町とかからも、公演の依頼が来るまでになった。
と、いった感じらしい。
「マジか?スゲーな、最初はロールが作詞したのをお前が歌っていただけなのに。それが、こんなに離れた場所にまで…」
「本当にスゴいよ皆!ところで、神父様やテレシアさんはお元気!?」
「ええ。お元気ですよ。合唱団のお陰もあって、経営の苦しかったあの頃がウソのように、潤ってますよ!」
「へぇ~それは良かったな!」
なにわともあれ、皆元気そうで何よりだ。聞いた限りによると、ピートやエージ達も元気で、店の方も順調らしい。
何よりだ。俺等も、レオとレイナを紹介し、運営の人が用意してくれた菓子をつまみながら、話に花を咲かせた。
それから、ナタク達は、明日には別の町での公演があり、それの準備をしなければならないらしい。
小さいのに大忙しだな。今日も、町に着いてから予行練習で忙しかったらしい。お陰で気の毒にも、この収穫祭の方を楽しむ余裕は無いらとのこと。下の子供達も、残念そうにしていた。
ナタカ達と別れて間もなく、暗くなって来た。
収穫祭、最後のプログラムの時間になった。
「おお!」
「スゴい!」
「キレー!」
「ブラボー!」
と、見た人達が、口々に感想の声をもらす。
場所は収穫祭の会場横の畑。収穫祭前に、収穫を終えたこの畑に、何百本もの火のついたロウソクが並べられた。それもただ、無造作に並べられた訳では無い。
ある形になるようにだ。
「これが香辛料の神々か…」
そう。ロウソクの火で浮かび上がったのは、この町に伝わる香辛料の神々の姿だ。
優しそうに微笑む女神やら、まるで毘沙門天の様に厳つい姿をした神もいる(多分、ニンニクの神だろう…)。
そうやって、何柱もの神々がロウソクの火で描かれている。収穫祭の最後に、このロウソクの火のアートで締めくくり、来年の豊作を願う。
それがこの町の収穫祭だとか。
俺等が見とれていると、
「スゲー!」
「うわぁ~!」
合唱団の子供達がやって来た。
「あっ、タイガーの兄ちゃん達。また会ったな!」
「おう!お前等も見に来たんだな。」
「ああ、折角だからな。買い食いとかは出来なかったけど、せめてコレだけでもと思ってな!」
「ああ。皆 頑張ってるんだ、このくらいしたって、バチはあたんねーよ!」
「へへ!」
そう言って俺等は、眼の前の光景を目一杯、脳裏に焼き付けた。
こうして、収穫祭は幻想的な雰囲気の中、無事に終りを迎えたのだった。