カード
「何ですその四角いのは?」
「カードだ!」
「カード?」
元の世界の名刺大の大きさのカードを見てリリーナは全くピンと来ていない顔をした。当然だが。俺はリリーナにそれを渡した。
「厚めの質の良い紙で出来ているみたいですけど、あっ、この絵って確か、「ヤンバールの冒険」の主人公じゃ…」
「察しがいいなリリーナ、その通りだ。」
ヤンバールの冒険とは、この世界の有名な小説の一つだ。ヤンバールと言う名の少年とその仲間達の活躍を描いた物語だ。俺等が働く村の本屋でも見かけた。
「これだけじゃないぞ。ほら!」
「この絵はヤンバールの仲間のキャラクターで、こっちは悪役のキャラクターのものですね。」
「こんなのもあるぞ。」
「わっ、変な悪魔みたいな絵ですね。あっ下に文字が、名前かしら…「デーデス」!確かこのあたりに伝わる伝承に出てくる魔物の名前ですよね。」
「そうだ。イラストはゲンの知り合いの絵のうまい人に書いてもらった。」
俺はリリーナに、何十枚とあるカードの一部を公開した。
「沢山ありますね。でも、これで一部なんですか?」
「そう、全部で55種類はあるぞ。」
「55種類…随分あるんですね…ところで、そんなに種類のある紙をどうするんです?」
紙って…さっきのベーゴマといい、リリーナはこれにも関心が沸かないらしい。
まぁ、仕方ないか…。
「お菓子にオマケとして付けてだ、購入者に集めて貰うんだ。」
「集める?」
「そう。普通のお菓子は買って食べて終わりだろ。ところがこれが付属している菓子はだ、買って開けるまで何か入っているか分からないようになっている。子供は買ってカードを集める。どんなカードが入っているか分からないワクワク感がある。そして、1枚2枚じゃない、何十種類とあるカードを全て集める、コンプリート出来るのか!と言う楽しみがある訳だ。どうだ面白いと思わないか、リリーナ?!」
「はぁ…」
相変わらずリリーナは関心が無いって顔をしている。俺は少し虚しい感じになった。これだけ力説しても、この表情かよ…
「まぁ、そう言う訳で、近々これがオマケとして入っている商品を町で子供をターゲットに売り出す予定だ。」
「どこで売るんです?」
「ベーゴマを売ってる町の駄菓子屋だ。既にあっちこっちで準備は進んでるからな。売る店・付属する菓子・メインのカード作りと、テツやゲンそれからマリーの知り合い等と、色んな人達に頼んで協力して貰ったんだ。」
「思っていた以上に、結構大掛かりですね。」
「あぁ、なけなしの金を殆ど注ぎ込んだからな。」
「えっ、そんな事して大丈夫何ですか?」
「はっきり言って、一世一代の大博打だ!」
リリーナは心配してくれているのか、不安そうな顔をしている。
「リリーナ、俺は決めたんだ。俺は財産残せるような男になるってな。」
そう俺は決意した。
「前世の記憶を元に、流行りものやブームを生んで一山当ててやる!」
と。