新露店とメインイベント
収穫祭3日目。多くの露店が立ち並ぶ場所の一角で、一際、お客を集めている露店があった。
ジュウゥゥー!
「よっと!」
ジュワ~!!
ボンが高温の油の中から、カラッと揚がった唐揚げを引き上げた。
「揚がったぞ!」
「アイよ!」
威勢やく返事したボンの奥さん、セリが竹の皮の器に唐揚げを盛り、楊枝を刺した。
「はい、唐揚げお待ちどう!熱いから気をつけるんだよ!」
「わ~い!」
唐揚げを、お客の子供達に手渡し、喜んで受け取った子供達は、
「「フーフー!」」
カリッ!
「熱、美味!」
「うめ~!」
揚げたての唐揚げをフーフーしながらも、美味そうに食っている。
「あんなにも沢山、お客さんが並んで、盛況ですね!」
「ああ!」
「あっちの方も、盛況みたいだよ!」
レイナが見る方でも、
ジュワ~!!
「いらっしゃいいらっしゃい!フライドポテト、今なら揚げたてホヤホヤだよ!」
「2つちょうだい!」
「まいど!」
フライドポテトが飛ぶように売れている。
売っているのは、ボンと共同で串焼き肉を売っている仕事仲間だ。
ポンは、基本的に仕事仲間数名で、串焼き肉の露店を数店、祭などで出店している。チェーン店みたいなものだ。
ところが今回は、発注漏れで食材が無い。そんな中、俺が唐揚げとフライドポテトを作った。
それを食って、
「コレだ!イケる!」
と感じたらしく、俺に作り方を聞き、(別にいらないけど)俺に販売する許可を得て、唐揚げとフライドポテトの販売に踏み切ったのだ。
勿論、見慣れないモノが故、最初はすぐには受け入れられなかったが、試食を行ったところ、たちまち好評になり、今やこの有り様だ。
「どっちも凄い人気ですね!」
「だね。特に子供人気がスゴイよ姐さん!」
「うん。レオくんも…」
「うめ~!」
2人の側で唐揚げとフライドポテトに舌鼓を打つレオ。美味そうなものに、レオが食いつかないわけがない。
「(そうそう。やっぱコレが無いとな…)」
そんなレオを尻目に俺は内心で、染み染みしていた。
実は俺は、初日の頃からこの祭に、何か物足りなさを感じていた。それが何か分からなかったが、今日、分かった。唐揚げにフライドポテトの屋台が無いことだ。唐揚げにフライドポテト。やっぱり、祭の露店でも特に人気のこれ等が無いとな。
他にも、チョコバナナや金魚すくい、たい焼き屋とかも捨てがたいが、流石に全部は無理だし、贅沢は言えない。
でも…
「(たい焼きか…)」
「タイガー、何 一人ニヤついてんのよ!?」
「いや、何でも…」
次の目的地が楽しみで、少しウキウキしているのだ。
それはともかく、収穫祭も今日が最終日。俺等は心残りがないよう、祭を堪能して回った。
各露店で食べ歩きを味わい、所々で大道芸人が大道芸を披露していたりと、もう3日目だが楽しめた。
因みにサヨは、ブルマン氏の店を朝から手伝っている。
「美味しい~!」
「姐さん、ほっぺにクリーム付いてるよ!」
「レイナちゃんもだよ!?」
リリーナとレイナの2人も大いに楽しんでる。
「あっタイガーさん、そろそろ時間ですよ!」
「あぁ、そうだな!」
この日のメインイベントの時間になったので、会場に向かった。
そこでは既に多くの人が集まっていた。
「それでは本日のメインイベント、音楽会を始めます!」
早速に、エムーの司会でイベントは始まった(てか、またエムーが司会かよ。本当、大忙しだな…)。
そう。最終日のメインイベントとは、この音楽会のことだ。
香辛料の神の何柱かが、音楽が好きという神話から考案されたらしい。
初めに、指揮者と共に、バイオリンやチェロ・ハープを持った奏者達が出て来た。
最初は、弦楽器奏者達による演奏会からだ。
♪♫♬〜♪♫♬〜♪♫♬〜
音楽には詳しくないが、素晴らしい演奏なのは分かった。
リリーナとレイナも聞き入ってる。
「この音色…あのバイオリン、かなり高価なやつよ姐さん!」
「わかるのレイナちゃん!?」
「うん。父さんに連れられて、兄さん達とコンサートには、何度も行ってるからね!後たまに、家に招いて演奏してもらったり!」
招いてって、家に音楽家を直接?
うむ…そこは流石は貴族だな…まぁ確かに、いい音色なのは素人の俺でも解る。
因みにレオは、演奏を他所に、何時もの様に買ってやったものを美味そうに食ってる。
まさに、馬の耳に念仏・猫に小判だなこれは…
なんて思ってる内に、演奏会は終わり、皆が奏者達に拍手を送った。
演奏が終わると、次の出演者達に代わる。
「奏者の皆様の素晴らしい演奏でした。ありがとうございました!では、続きまして、遠い所ホープスタウンからお越しいただきました…」
!?ホープスタウン!…
「タイガーさん、ホープスタウンって…」
「ああ、テレシアやナタクにロール、ピート達がいた…」
そうホープスタウンは、俺等がパティーシェタウンの次に、滞在した町の名前だ。
「ホープス子供合唱団の皆さんです!」
エムーの紹介で、小綺麗な格好をした子供達、男女およそ20人程が登壇した。
登壇し、キチッと並ぶ子供達。
「あっ、タイガーさん、あの真ん中の子って…」
「ああ…あれ、ナタクじゃないか!」
なんと現れた子供達の中にいるのは、ホープスタウンの教会の孤児院の年長者、ナタクだった。