2日目終了
思いの外白熱した、激辛スープ早飲み大会も無事に終わった。
それからサヨは、2日目の残った時間で、ブルマン氏の店を手伝っていた。手伝いと言っても、出来た品を運んだりするくらいだが。
そうこうしている間に、収穫祭2日目の方も無事に終わった。
そして、ブルマン氏の店の、後片付けが終わった後。
「それじゃあレオくん、お行儀よくね!」
「分かってるって!」
「(本当に分かってんのか?)サヨちゃんのご両親に迷惑かけるなよ!後、ガツガツ食うなよ、祭であんだけ食ったんだからな!」
「だから分かってるって!」
そう。この日レオは、サヨの家にお泊りする事になったのだ。
ブルマン氏の店の、片方けを始めようとした時に、彼女の親御さんがやって来た。
俺等も挨拶を交わすしたんだが、その際に、サヨの親御さんがレオの事を随分と気に入ったらしく、
「よかったら、家に遊びに来ないかい!?」
と、誘って来た。
俺等とも話し、収穫祭が終わったらこの町を離れるし、いい思い出作りにもなる。それに、友達の家に泊まるっている事を体験させるいい機会になる。
といった理由で、俺等は了承した。
レオの方もサヨが、
「お母さんの料理、美味しいよ!?」
と言ったのが決め手となった。毎度の事ながら、現金なやつだ…
手な訳で、レオはサヨの家に一晩厄介になるので、今夜は俺とリリーナ・レイナの3人のだ。
明日の 3日目の準備のあるブルマン氏とも別れ、俺等は、町を歩いている。
「さて、夕飯どうすっかな?…」
寝る場所は、例の運営側の所があるが、食事はこっちで済ませないとならない。
適当な店がないか散策してると、
「お~い、あんちゃん!」
「おお、アンタか!?」
ラーメン屋の店主 ケイと再び再開した。横には、知らない男がいる。
「その人は?」
「俺の友人のボンだ!」
「ボンだ!ヨロシクな!」
そう言って握手を求めてくるボン。
俺はそれに答えるように手を伸ばし、ボンと握手を交わした。
ボン。フレンドリーな性格で、ケイとは幼い頃からの付き合いらしい。
仕事は露店商で、普段は大きな町で串焼きの肉を売っているらしく、この収穫祭でも出店しているようだ。
「それで、揃ってドコに行くんだ!?」
「俺の店だよ。今日は定休日なんだよ。そこで買い込んでた、酒とツマミで軽く飲もうと思ってな!」
「飲み屋に行くよりも安く済むからな!何しろ女房にこづかい減らされてっからな…」
「なる程な…(てか結婚してんだな…)」
「そう言うあんちゃん達は!?」
「ああ、俺等は…」
状況を簡単に説明した。
すると、
「そうか…だったら、店の方に寄ってかないか!?食いもんも、沢山買い込んであるし!」
「今からか?」
「ああ!」
「でも、ご迷惑じゃ!?…せっかくお友達と…」
「構わねーよ!なぁボン!」
「おう!男2人で飲むよりも楽しそうだ。それに、美女2人がいるだけで華やかになるぜ!」
「そういう事!」
「(奥さんいるのに、いいのか?…)」
と思ったが、まぁ特に、やましい事をする訳でもないし、大丈夫だろう。なので、お言葉に甘えさせてもらうと事とした。
とわいえ、流石に手ぶらという訳にもいかないので、空いてる店で適当に、簡単に食える物を少しだけ買い込み、ケイの店に向かった。
そして、ケイの店にて…
「なんと、武道大会の優勝者ってレイナちゃんだったのか!?」
「ええ、そうよ!」
「店の方で手が一杯だったんで、見に行けなかったけど、若い女の子が優勝したって聞いてたけど、それが君だったとは…」
「見かけによらねーな…」
「レイナちゃんだけじゃないですよ!ココにはいませんが、レオくんも…」
「ああ、そっちは見てたぜ!ゴマクッキー投げ大会だろ?」
「ええ。レオ君もそれで優勝したんです!」
「なので、俺等の中から優勝者が、2人も出てんだよ!」
「スゲーじゃん!」
「だろ!?」
ケイの店のテーブル席を使って、俺等は飲食を楽しんでいる。
やっぱりココにお邪魔して正解だったな。他所の店だったら、こんなに大声でおしゃべりなんて出来なかった。
「ところでボンさん、屋台の方はいいんですか?明日の分の仕込みとかがあるんじゃ…」
「そっちの方は大丈夫だ。仕込みは女房がしといてくれるんだ。俺は当日、焼いて売る役だ。女房は前日の仕込みと、接客担当だ。」
「そうか…」
そんな感じで楽しんで、買い込んでた食料が残り少なくなってきた頃はだった。
ガラ!!
「アンタ!」
勢いよく店の戸が開いたと思ったら、女性が入って来た。
「どうしたんだよセリ!?」
どうやらボンの奥さんらしい。
「それが…」
「何だって、牛肉と豚肉が無いだと!?」
ボンの奥さん、セリさんの話によると、明日の分の牛と豚が先程届いた…と思って風を開いたら、なんと、中は全て鶏肉だった。
どうやら肉の卸売りの業者の方で、発注漏れが起きたようで、牛も豚も、1gも入っていなかったらしい。
「どうしようアンタ!?…」
「どうするって…今から注文しても間に合わないしな…鶏肉を串焼きにして売るしかないか…」
鶏の串焼き…ソレって焼き鳥何じゃ…
「…奥さん、その鶏肉って、部位は何があるんです!?」
「えっ…モモとムネ肉よ!?」
「モモとムネか…だったら、焼くよりも唐揚げにした方がいいかもな!?」
と何気なく言った。
すると、俺以外、皆キョトンとしている。
「!?…あれ、俺なんか変な事言ったか?…」
「から…あげ…あんちゃん、何だよソレ?」
ケイが聞いてきた。どうやら皆、唐揚げを知らないようだ。そう言えば、この世界に来てから見たことなかった。そもそも、揚げ物自体、お目にかかっていない…
そういえば以前にも、マリーの店で、こんな展開になった事あったな…
ホットケーキ(パンケーキ)を、作って見せたってけかな。あん時と同じで…
「…コレは、説明するよりも、作った方が分かりやすいかな…」
奥 (セリ)さんが、間違って届いた鶏肉の一部を持ってきていた。ケイの店にも、調理に必要なモノは大体揃っている。
という訳で、久々に料理を披露することとなったのだが、これがまた、一つのブームを呼ぶキッカケになるとは、この時の俺はまだ、思っても見なかった…