イベント2
ゴマクッキー投げ大会の出場者も残り2人、レオとサヨだ。
エントリー順で、サヨが先だ。
「それではどうぞ!」
司会者レニーの掛け声の後、グッとクッキーを構えるサヨ。
レイナとの試合の時と同様、真剣な目をしている。遊びてあっても、手を抜かないのが、彼女のスタイルなのだろう。
そして、
「ハァ!!」
と、勢いよく、クッキーを投げた。
武道の心得のあるあの子が投げると、まるでチャクラムを投げているかのように見えた。
因みにチャクラムとは、インド発祥の投擲武器の一種で、投擲武器としては珍しく、斬ることを目的としている。某有名忍者漫画に出てくる、キザで目立ちたがりやな男の得意武器である「戦輪」も、その一種だ。
それは置いといて、彼女の手から離れたクッキーは、勢いよく飛んでいった。
「おお、いいぞ!」
「いけるんじゃないの、これ!?」
真っ直ぐに飛ぶクッキー。
しかし、
ヒュー!
「あっ!?」
クッキーが30メートル近くまで飛んだ所で、タイミング悪く向かい風が吹いた。
風に煽られ、サヨの投げたクッキーは一気に失速。バランスを崩しつつも、飛んていたが、やがて落ちた。
「只今の記録、30.06メートルです!」
子供にしては、飛んだ方だが、残念ながら、フーラって人の記録には届かなかった。
「あ~、サヨちゃんおしかった…」
「あそこで風さえ吹かなければ、もっと飛んだんだけどね…」
「自然現象だ。こればかりはどうしようもない出来ないな!」
パチパチパチ!
と、記録更新とはいかなかったが、健闘したサヨには拍手が送られた。
「それではいよいよ、最後の選手です!」
そして、最後はレオだ。
フーラの記録、40.37メートルを越えないと優勝はない。果たしてどうなるか…
「なあなあ、一番になるには、どの辺まで飛べばいいんだ?」
「えっ?そうですね…そこに、木と岩がありますねよ?その間ら辺といったところですかね?」
「ふ~ん…」
レオと司会のレニーの間で、そんな感じのやり取りが行われた。
「それではどうぞ!」
「……」
投げの姿勢に入り、クッキーを持って構えるレオ。しかし、中々投げようとしない。見れば、目をつぶっている。
「レオくんどうしたんでしょう!?…」
「まさか、寝ちゃたんじゃないでしょうね?」
「いや流石に、それはないだろうけど…」
目をつぶったまま、投げようとしないレオ。
「あの…投げて下さいよ…」
レニーがレオに話しかける。
と、次の瞬間。
カッ!
レオの目が開く。
「そりゃ!」
掛け声と共に、勢いよくクッキーを投げるレオ。
真っ直ぐに飛んでいくクッキー。
「すごい!レオくん、このままいけば、いけるんじゃないですか!?」
「いや駄目だよ姐さん!このままだと、コースアウトしちゃうよ!?」
レオの投げたクッキーは、真っ直ぐ飛んではいるが、このままだと、コースから出てしまう。
等と言ってる内に、クッキーはコースとコース外の境目まで飛んでいた。誰の目にも、コースアウトは確実に見えた。
「あ~、駄目だ…」
と俺が言った瞬間、
ビュー!
と再び強い風が吹いた。
そしてレオのクッキーは、その風に乗って、大きく弧を描く様に、カーブした。
「ああ、曲がった!」
「まさかあの子、風が吹くタイミングを読んでっていうの!?」
そしてクッキーは、先程レニーに聞いた、木と岩の間を通過した辺りの地面に落ちた。
「「「オオー!!」」」
会場中から驚きの声が上がった。
「すご…レオくん、風が吹くタイミングと、それによりクッキーが流される場所を計算して投げたっていうの…」
「スゴすぎるよレオくん…」
「……(まるで、「プ○ゴル○ァー猿」みたいな奴だな、本当で…)」
と心の中で思った。
で、肝心の記録は、
「只今の記録…45.83メートル!今大会、最高記録更新です!!」
「「「オオー!!」」」
再び会場中、歓声に包まれた。
歴代最高記録にこそは、届かなかったものの、子供でこの記録は、スゴい事だ。
という訳で、
「ゴマクッキー投げ大会、今年度の優勝はレオくんです!記録は45.83メートル!」
パチパチパチ!
ゴマクッキー投げ大会はレオの優勝で幕を閉じた。俺等も含め、レオには盛大な拍手が送られた。
最後の最後で記録を抜かれたフーラも、残念そうな顔をしつつも、レオに惜しみない拍手を送っていた。
まさか優勝するとは…参加させて良かった。
あっ、てことは、コレでレイナの武道大会のと合わせて2冠になるのかな。
俺等の中から、優勝者が2人も出るとは…
いい旅の思い出になったもんだ!
と、俺は染み染み思ったのだった。
当初サヨは、家の道場でチャクラム的な投擲武器の扱いの鍛錬もしていて、それを活かして相応の記録を出す!というストーリー考えてましたが、それだと輪投げ屋、彼女でもいけたんじゃ?と思ったのでやめました。