2日目
こうして、収穫祭の1日目は無事終わった。
「それでは皆さん、また明日!」
「私もこの辺で失礼します。明日の仕込みがありますので…」
カフェを店じまいした後、そう言って帰っていく2人。サヨは家に帰り、ブルマン氏も祭の間は彼女の家に厄介になっているらしい。
2人と別れた後、今俺等が居るのは、祭の運営側の施設。エムーの計らいで、収穫祭の間は、施設に泊まらせてもらえることとなったのだ。祭の期間は、町中の宿の宿泊代も割り増しになるみたいだから、俺等にはとても有り難い。
「すみません、使わせてもらって。」
「構いませんよ。お陰で、武道大会の方は、結構盛り上がりましたし。」
「最後はあんな感じだったけどな…」
「ははは…まあ一応、無事に最後まで出来たから十分ですよ!」
施設の隅で、俺とリリーナがエムーと話している。
「では私はこの辺で。また明日の打ち合わせとかがありますので!」
エムーはそう言って離れて行った。
彼を見送った後、俺等も自分達の部屋へと戻った。
「戻ったぞ、って…」
「すぅすぅ…」
部屋に入るとレイナは静かに寝息を立てて寝ていた。側ではレオも寝ている。こちらは静かとは程遠いイビキをかいて。
「2人共もう寝ちまったのか…」
「大会で疲れてたんですよ、レイナちゃん。」
「みたいだな。レオも、祭で満足するまで食ったからみたいな…」
「お祭り自体にも、結構はしゃいでましたからね。やっぱり子供ですね。」
「だな…」
そう言って俺等は、2人に布団を被せた。
「さて、少し早いけど、俺らも寝るか!?」
「ええ。明日も色々しますしね。」
明日に備え、早めに就寝し。収穫祭の2日目を迎えた。
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ワイワイガヤガヤ!
収穫祭2日目。2日目も賑わっており、早くも観光客が沢山いる。
「うめ~!」
「レオくん、口汚れてるよ!」
リリーナがレオの口を拭いている。
何度見た光景か…
「レオ、昨日も沢山食ったろが!?」
「美味いモンは何度食ってもイイんだよ!特に、こういう場所だと尚更!」
確かに、こんな何処でも食えるものであっても、こういった祭の会場とかだと、より一層、美味く感じるんだよな。
「たく…食いすぎて後で困っても知らねーぞ!?」
「ところで、サヨちゃんは?」
口を拭いたハンカチを仕舞いながらリリーナが聞いてきた。
「向こうで待ち合わせだよ!」
待ち合わせ場所に行くと約束通り、サヨは既に来ていた。
「お待たせ。待ったかい?」
「いいえ。今来たところです!」
お決まりの(? )返答をするサヨ。
「それでは、本日はよろしくお願いいたします!」
礼儀正しく挨拶するサヨ。
「そんな固くならなくていいって…」
「そうそう、タイガーの言う通り。あたし達はもう、友達も同然なんだしさ!」
「でも…」
「スグでなくていいよ。徐々に慣れていけばイイんだ。ソレよりも、例のイベントまでは、まだ時間あることだし、一緒に会場回ってみるか?」
「ハイ。」
こうしてサヨと共に祭会場を回った。
「あっ!?」
「どうしたのサヨちゃん!?」
サヨがとある出店に注目している。
それは、輪なげだった。この世界にも輪なげの出店ってあるんだな。
「何だ、欲しい景品でもあるのか?」
「…いえ…その…あれ…」
サヨが指差したのは、ウサギの人形だった。
どうやら、アレがお目当てみたいだ。しっかりしているとはいっても、やっぱり女の子だな。
彼女曰く、買うと結構値が張るらしい。高いだけあって、複数ある景品の中でも、奥の方にある。取るのは難しそうだ。
一回につき輪っか3本。チャンスは3回。
取れる確証は無いが、皆で挑戦することにした。
「それ!やっ!とぉ!」
結果、全く駄目だった。カスリもしなかった。
その後、リリーナとレイナも挑戦したが…
「あ~、ダメです…」
俺と同じ様な結果のリリーナ。
そして、
「えい!」
ガッ!
「ぐぇ!」
「タイガーさん!」
レイナに至っては、特に酷かった。どういうわけか、近くにいた俺に命中した。
「何処狙ってんだよ!」
「ごめん…」
結局、マトモに投げれなかったレイナ。レイナがこんなにも、ノーコンとは…
駄目だなこりゃと、思っていたら、
「オレっちにやらせてみろ!」
と、レオが名乗り出てきた。食い物絡みでないの珍しいな。まぁ、ダメだとは思うが、ものは試しとやらせてみた。
すると、
「ほい!」
スポッ!
「は、入った!」
なんと、一発で成功したのだ。
「ほいほい!」
残った2本の輪も、
スポッスポッ!
一見、適当に投げてる様に見えるが、輪っかは正確に景品に届き、あっさりと景品に入った。先程の、ウサギの人形と同じ位の位置にある、玩具をだ。
「スゲーなレオ!何で出来んだよ?」
「山の中でな、食い物とる時に…」
何でも山で、石を投げて高いとこにある木の実や、小動物を落として採っていたらしく、その時の要領でやったらしい。
レオにこんな才能があったとは…
なにはともあれ、目当ての景品を手に入れれた。
「ほらよ!」
「ありがとうレオくん!」
「いいってことよ!」
なんだかいい雰囲気の2人。ローラとも気が合ってたし、レオのやつ、意外とモテんのかもな…
なんてことしてる内に、目的のイベントの時間になったので、俺等はイベント会場に向かった。