表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/185

大会後

 収穫祭の武道大会は、レイナの優勝で幕を閉じた。

 試合場で簡単な授賞式がおこなわれ、優勝したレイナには、トロフィーと副賞の賞品が贈られた。


 「それではロウジィ氏、今大会で優勝したレイナ選手に、一言お願いします!」


 最初に(本当に)挨拶した(だけの)、ロウジィが再び出てきた。

 変わらず、ただならぬオーラを纏っていて、隙がない。そこは流石は、師範だけのことはある。


 「……」

  

 レイナの前まで来たロウジィ。


 「今度は何を言うんですかね?」

 「さぁ、流石にまた一言だけってことはないと思うが…」


 俺等がアレコレ言っていると、ロウジィは口を開いた。


 「おめでとう!」


 それだけ言うと、またも踵を返したロウジィ。


 「ありがとうございました!」

 「うぉーい!」

 「また一言だけでしたね…」

 「本当に偉いのかあの爺さん…」


 そんな感じで表彰式は終わった。

 式が終わり、控室から出てきたレイナを俺等は迎えた。


 「レイナちゃん!」

 「あっ姐さん!それに、レオくん、あとタイガーも!」

 「よっ、お疲れ!」


 俺だけついでみたいな呼び方だったのが気になったが、そこは黙って(スルー)した。


 「優勝おめでとうレイナちゃん!」

 「ありがとう姐さん!」


 リリーナに祝われて、嬉しそうにするレイナ。

 しかし、


 「なぁレイナ…」

 「何?」

 「正直なところ、達成感ないだろう?」

 「…うん…」

 「だろうな。一人目と二人目は一撃で終わったし、四人目は不戦勝で、最後に至っては相手の反則で終わっなかんな…」

 「唯一、手応えあったのが、三回戦のあの子だけだったわよ…」

「そういえばレイナちゃん、あの子にだけは、苦戦してたね。」

「ええ、だから結局…」

「結局?…」

「三回戦で戦った、あの子が1番強かったわよ…」

「だよな…」


所詮は、この祭のイベントの一つに過ぎない大会だったって事だな。殆ど余興みたいなもんか…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それでは、レイナの優勝を祝して…乾杯!」

「「乾杯!」」


そう言って俺等はジュースの入ったコップで乾杯した。

ここは祭の会場の一角のイートスペース。出店で買ったモノを座って食べられる。地域の祭でもあるやつだ。

俺等は出店で色々な食べ物と飲み物を買い込み、ここでささやかながら、レイナの祝勝会をすることにした。


「うめ~!」

「もぉ、レオくんたら…沢山あるから、ゆっくり食べなさい!」

「そうそう、沢山買ったしな。もっと味わって食えよ!」


何時もの様に、目の前の食い物にがっつくレオ。それを注意する俺とリリーナ。


「そもそも、レイナの優勝を祝う会だからな!それを、忘れんなよ!」

「ははは、別にいいわよ、あたしはなんだってね!」


そう言いながら、出店で買った菓子を口にするレイナ。こうしていると、リリーナと同じで、至って普通の女の子に見える。


「あっ、来た来た!コッチよ、コッチ!」

「!?」


レイナが誰かに気付き、俺等の席に招いた。


「あの…どうも…」

「おお、君か!?」


招いた相手、それは、大会三回戦で、レイナの対戦相手だったサヨという子だった。

大会で恥ずかしい思いをさせてしまったお詫びにと、レイナが呼んだのだ。


「いらっしゃい。ほら、遠慮なくと座ってね。」


リリーナもサヨを席に招いた。


「いいのですか、わたしなんかがご一緒しても?お邪魔では…」


少し遠慮している様子のサヨ。言葉遣いからも、育ちのいい、しっかりした子だと分かる。


「子供がそんなの気にしなくていいって!」

「そうそう。あたし達が招いたんだし、遠慮は無用。それに、年は離れてるけど、拳を合わせたんだから、あたしあなたはもう、友達みたいなもんよ!」

「はぁ…」


少年漫画みたいなことを言うレイナ。

だけどそのかいあってか、サヨは気兼ねなく会に溶け込めた様だった。


「レイナさん、また何時か、再戦(リベンジ)させてもらいますからね!」

「受けて立つわよ!」


と、何時の日かの再戦の約束していた。脳筋みたいだな、この2人…


「それは兎も角、サヨちゃん、これも美味しいよ!」


リリーナがサヨに菓子を勧める。


「あっすみません。でも、こんなに沢山、買って大丈夫なのですか?」

「それなら心配いらねーよ!コレがあっから!」


そう言って俺は、紙の束をサヨに見せた。


「なんですそれは?」

「レイナの貰った、賞品だよ!」


レイナが大会で貰った副賞、それは、収穫祭の全出店で使えるタダ券だった。券と引き換えで、出店の品々が手に入るのだ。

それも、結構な枚数ある。


「この祭の間しか使えないからな、さっさと使っちまおうって理由(わけ)よ!」

「そうでしたか。」

「あっタイガーさん、食べ物はまだ沢山ありますけど、飲み物の方がもう…」

「無くなったか…よし、追加で買ってくるかな!」


そう言って席を立つ俺。するとサヨが、


「飲み物でしたら、オススメの出店(ところ)がありますよ!」


と言ってきたので、彼女の勧めるトコに向かった。彼女に案内されて向かった先は、出店のカフェだった。


「ここか?」

「ええ。わたしの叔父さんがやってるんです。」

「へぇ~叔父さんが…ん!?」


カフェに近づくと、コーヒーのいい匂いがしてきた。俺はその匂いに、覚えがあった。


「叔父さん!」

「おおサヨか!…ん、おやおや!」

「あっ!」


そのカフェのマスター。それは、この町に来る前によった山の中の店のマスター、ブルマンだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ