武道大会 準決勝・決勝戦
「あの子の控室は…」
試合後暫くしてから、先程の試合で、恥ずかしい思いをさせてしまった事を謝るため、サヨを探すレイナの姿があった。
探している最中、何やらいい匂いがしてきた。
「!?香ばしい匂い…お肉…それとニンニクの…」
匂いに誘われるよう、匂いの下に足を運ぶレイナ。そこは控室のある建物の裏側で、大柄の男が分厚い肉を豪快に食べていた。
その側では、別の男が肉を焼いている。
ガッガッ!
「おい、ソレまだ生だぞ、サーロン!?」
「いいんだよ!オレはレアが好みだ!」
「たく…てかそんなに食って動けんのか?次の対戦相手のレイナって女、中々強えらしいぜ!?」
「だからこそだ!試合に備え、食って力つけんだよ力を!俺はな、肉を食わねーと力でねーんだ!わかったら、黙って焼けスーネ!」
「ヘイヘイ!」
等と会話しながら肉を食う2人。
どうやら、あの大柄の男が、準決勝でレイナと戦う相手のようだ。
「(あの男が次の相手か…)」
物陰から様子を見ていたレイナ。匂いを嗅いでいたら、自身も小腹が減ってきた。
「(控室に軽食あったわね…)」
各選手の控室には、簡単な軽食と飲み物が用意されていて、各選手、自由に口にしていいのだ。
控室に戻り、軽食で栄養補給するレイナ。そうこうしている内に、試合時間になったらしく、係員が呼びに来た。
控室から試合会場に向かうレイナ。
その最中、
「(!?あっ、しまった、あの子を探すのすっかり忘れてた…)」
肝心の事を忘れていた事を思い出した。
仕方なく、そのまま会場に向かうレイナ。そして、エムーの進行で会場に出て来た。
「対するは青コーナー…アレ?」
しかし、肝心の対戦相手が出てこない。
「ええっと、サーロン選手!?…」
出てくる気配のない相手。
少しすると、代わりに係員が小走りで出て来た。
「どうしたの?」
「エムーさん、それがですね…」
ヒソヒソ…
エムーに耳打ちをした。
「と、言うわけです…」
「えぇっ!?そうか…えー、お知らせします。」
「何かあったんですかね?」
「さぁ…」
観客席の俺等も首を傾げる。
「サーロン選手ですが、試合に備え、レアステーキを食したところ…」
「……」
「食べ過ぎて、酷く下痢になったそうです!更に、豚と鶏も一緒に食べたらしいのですが、そちらも生焼けの状態で食べたので、同時に食中毒も引き起こしたらしく…」
「はぁ〜」
「それにより、近くの病院に運ばれたそうです。よってこの試合は、レイナ選手の不戦勝となります!」
「(再び)はぁ〜!なんだよ、そりゃあ…」
手なわけで、レイナの準決勝は、不戦勝に終わったのだった…
何ともバカバカしい展開なので、話を進める。
武道大会は佳境?、決勝戦を迎えた。
「たあ!」
「うおっ!」
決勝戦は、レイナとペプチドという細身ながら締まった身体の男との試合。
「ハーッ!ターッ!」
「ぐっ!…」
レイナが絶え間なく、連続攻撃を打ち込み、それをガードするペプチド。が、完全には防ぎきれず、攻撃を食らうペプチド。
ようやく、武道大会らしくなって来たな。試合はレイナが圧倒的に優勢だった。
相手のペプチドも、決して弱い訳では無いが、レイナに比べれば、パワーもスピードも劣っている。
ドッ!
「ぐぇっ!」
等と言ってる内に、レイナの蹴りが、彼の腹にモロ入った。
「ぐっ…はぁはぁ…」
苦痛を顔に浮かべるペプチド。
試合は完全にレイナのペースとなり、ペプチドは防戦一方だ。
「こりゃもう決まりだな!?」
皆が皆、レイナの勝ちを確信した。
しかし、ペプチドは、
「よ~し、こうなりゃ…」
バックステップで後方に下るペプチド。するやいなや、スボンのポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。
「何でしょう、まさか武器!?」
「(暗器ってやつか?)武器の使用は禁止されてるはずだぞ!」
するとペプチドは、取り出したのご武器で無いと証明するかの様に、手に持った物を、皆に見えるように出した。
それは、ニンニクだった。
「アレって、ニンニクですね?」
「あぁ…」
ニンニクなんて何する気だ?
と疑問に思っていると、ペプチドはニンニクを丸かじりした。
「食ったぞ!」
「何で試合中に?」
するとペプチドの目が見開いた。
「うお~、来た来た来たーー!!」
「な、何だ!?」
突如、元気ハツラツといった感じになったペプチド。
「ハハハ!俺はニンニクを食うとこうなるんたぜ!こうなったら、元気百倍よ!!」
そう言って、力こぶを見せるペプチド。
「なんですかあれは?…」
「あんなのありかよ…」
食ってパワーアップするなんて、漫画やゲームみたいだ。例えるならば、ホウレン草を食ったポ○イみたいだ…
「さぁ、勝負はここからだ!いくぜ!」
身構えるレイナ。
が、
ピピーッ!!
エムーが笛を鳴らした。
「ハイ、そこまで!」
突然、試合を止めるエムー。
「はぁ、何故試合を止めるんだよ!勝負はここからだってのに!?」
抗議するペプチド。
それに対してエムーは、こう返した。
「ペプチド選手…」
「!?なんだよ…」
「試合中のエネルギー補給は反則です!」
「いっ!?」
「よってペプチド選手は反則負け。反則により、レイナ選手の勝利とします!」
「ええー!!」
そう。この武道大会では、試合中のエネルギー補給は禁止されているのだ。
よって、ルール違反をしたペプチドは、即反則負けとなったのだ。
説明あったのに、迂闊すぎるぞ…聞いてなかったのかペプチド…
てなわけで、決勝戦は完全にペプチドのミスにより、レイナの勝ちとなった。
よって大会は、レイナの優勝となったのだった(…こんな盛り上がりに欠ける幕引きでいいのか?…)!