武道大会 二回戦 三回戦
今年(令和6年)最後の更新です。
来年もよろしくお願いします!
余裕で一回戦を通過したレイナ。まぁ、相手が大したことなかっただけだけど…
一回戦の、他の選手の試合が淡々と行われたが、長くなるのでその辺は省略。
そして続く二回戦。
レイナと次の対戦相手が出て来た。相手は、少し背の高い男だ。ドラムーとは違い、ガタイのいい男だ。
「赤コーナー、レイナ選手! 青コーナ、マセイヌ選手!」
エムーの紹介が済むと、対面するレイナとマセイヌという対戦相手。
「ファイト!」
早速、試合開始した。身構えるレイナだったが、相手は余裕そうな顔をしていた。
「女に手を出すのは、余り気乗りしねーが、試合だからな。そんじゃあ、遠慮は要らねぜ、かかってきな、ねーちゃん!」
「言われなくても、本気で行くわよ!?」
「ヘヘヘ!さぁ、こい!」
「それじゃあ遠慮なく…ハッ!!」
ガッ!!
マセイヌの脚に蹴りを打ち込んだレイナ。
「…」
蹴りを入れられたマセイヌは、無言で佇んでいる。動こうとしない。
「…」
「マセイヌ選手?どうしました?」
マセイヌが、余りにも動かないので、エムーが近付き話しかけた。
話しかけられたマセイヌは、口を開いた。
「…ない…」
「?…はい?…」
「…ないんだよ…」
何言ってるのか、よくわからない。マセイヌは、力を振り絞る様にして答えた。
「あ、脚が痛くて動けないんだよ!!」
涙・鼻水・ヨダレと顔から出るものを出しまくって泣き叫ぶマセイヌ。そして、その場に倒れ込む。エムーが確認すると、マセイヌの脚は腫れていた。
「うわぁ~、痛そ…」
声を漏らすエムー。
「骨は折れてないだろうか?…」
「大丈夫よ、その辺は加減したから!」
「はぁ…(加減って…コレで?…)」
「イデーー!!」
「おーい、担架を!」
スタッフに担架で運ばれていくマセイヌ。戦闘不能ということで、レイナの勝ちとなった。
二回戦も難なく突破したレイナ。
続く三回戦。
「赤コーナー、レイナ選手!」
これまでと同様、選手の紹介をするエムー。そして三回戦の対戦相手は…
「青コーナー、サヨ選手!」
出て来たのは、レオと同じ位の歳で、かなり小柄な女の子だった。
相手を見て驚くレイナ。選手の控室は皆個室で、これまで他の試合は、殆ど見てなかったので(控室でウォーミングアップ等をしていたらしい)、相手が誰なのか、直前まで知らなかったようだ。
「ちょっと待ちなさいよ、何でこんな小さな子が出場してるのよ!?」
「当大会には、年齢制限は特に設けられてませんので…早い話が、誰でも出場可です!」
「だからってね…(でも、ここまで勝ち残ってるくらいだし、実力はあるみたいね…)」
流石に、子供相手にはやりづらそうなレイナだったが、意を決して試合に挑む。
「(とはいえ、怪我はさせたくないしな…一先ず、様子見で…)」
サヨに蹴りを入れるレイナ。最も、マセイヌの時に比べ、威力は弱めだ。
しかしサヨは、それを軽く避けた。
そして、避けるやいなや、レイナに攻め込んだ。
「!?」
「ハッ!」
レイナに飛び蹴りを打ち込むサヨ。それを咄嗟に防ぐレイナ。
サヨの攻撃は続く。
「ハッ!ハッ!ハッ!」
小さな拳から、連続で突きを打ち込むサヨ。
「この!」
反撃するレイナ。が、サヨはそれを交わし、小さな身体を活かし、転がるようにレイナの下をくぐり抜け、反対側に回った。そして起き上がるやいなや、回し蹴りを繰り出した。
「くっ!」
チッ!
身体を反らして避けるレイナだったが、僅かにかすった。
「レイナちゃんが押されてますよ!?」
「あの子やるな。小柄な体型を、十分に活かしてる。それにイレナも、子供相手でやりにくいんだろうな。」
「動きも、レオくん並みに素早いですよ!」
「ああ。幼いから攻撃力はさほど高くはないみたいだが、アレだけチクチクと打ち込まれたらな…」
試合は完全に、サヨのペースになっていた。
「試合は、サヨ選手が優勢!何を隠そうサヨ選手、町外れにある武術道場の一人娘。幼い頃から鍛錬を積み続けてきたそうです。現7歳ながら、格闘技歴約5年です!」
と、実況で説明し始めるエムー。お陰で、彼女の強さの秘訣が解ったが。
しかし、レイナも負けてはいない。防御しながら、一瞬のチャンスを見逃さなかった。
「(今だ!)」
ガシッ!
「あっ!」
僅かな隙をつき、サヨの格闘着を掴んだ。
「ハッ!」
彼女の勢いを利用し、そのまま投げに入った。投げられたサヨだったが、高所から飛び降りた猫のように、軽々と受け身を取って着地した。当然、ダメージは無い。
「ダメか…って、コレは?…」
レイナの手には、何かが握られていた。
それは…
「!?……!!」
サヨはすぐに違和感に気付いた。そして自身の下半身に目をやる。
「い、いやーー!!」
そう。レイナが握ってたのは、サヨの格闘着の下だった。投げた時に、勢いで脱げてしまったようだ。
顔を赤らめて恥ずかしそうにするサヨ。
観客席の俺等は、
「!?…」
即座に顔を逸らす俺。その横では、リリーナがレオの目を、自身の手でふさいでいた。
「あっ…ゴメン…」
思わず謝るレイナ。
サヨはズボンを引ったくるように取ると、涙目でそのまま逃げる様に(というより本当に逃げたと言ったほうが正しい)、退場して行った。
無理もないだろう。乙女心が傷付いたのだからな…
「えっと…サヨ選手は、試合放棄とみなして、勝者レイナ選手!」
エムーの判定で、レイナの勝ちとなった。が、当然ながら、レイナは喜べる訳もなく…
「(悪い事したな…謝りに行こう…)」
罪悪感で一杯だった。
兎も角、こうしてレイナは、二・三回戦を突破し、準決勝にコマを進めたのだった。
サヨ戦の決着は、当初は彼女の苦手な生き物(ネズミ等)が入り込み、それを見て怖がって逃げ出すという展開を考えてましたが、コレだけ鍛錬を積んだ子が、生き物で逃げるというのも変かなと思い、本編の展開にしました。が、その為少し下品な内容になってしまいました…
今後は出来る限り下品なのは無いようにします。