武道大会 一回戦 第一試合
しばらく、ブーム等とあまり関係のない話が続きますが、ご了承ください。
いよいよ武道大会が始まった。
この大会は、出場者は男女混合で全32名。その32名でトーナメント方式で試合する。
組み合わせは、事前に出場者達が引いたクジで既に決まっている。
ルールはシンプル。一対一の時間無制限。武器なし(グローブ等はOK)。勝敗は、相手を気絶させる(ノックアウト)、降参させる、又は場外に落ちても負け(リングアウト)。
ルールといい、全体の雰囲気といい、何だが初期の頃の、DBの天下一武道会みたいだ。
等と思っている内に一回戦の第一試合だ。
エムーのアナで出場者が出て来る。
「赤コーナー、レイナ選手!」
「おお、早くもレイナの出番か!」
「がんばってレイナちゃん!」
格闘着姿のレイナ。リリーナの声に速攻で反応し、手を降る。
で、対する相手は…
「青コーナー、ドラムー選手!」
相手は、背丈は高いが、チャラそうで余り強そうに見えない男だ。
とはいえ、油断は大敵だ。人を、見かけで判断しちゃいけない。見かけによらず強いってケースもあるからな。
「それでは用意はいいですか?…では、試合開始!」
エムーの合図で試合は始まった。
身構えるレイナ。
対して相手のドラムーという男は、大手を振ったレイナに近づいてきた。
「レイナちゃんに堂々と近づいてきた!?」
「何だ?相当、自分の腕に自信があるのか?」
レイナの直ぐ側まで近付いたドラムーは、徐ろに懐から何かを取り出した。
「何か出しましたよ!?まさか武器!?」
「いや、この大会では、武器の使用は禁止されてるはずだ!?」
先程も述べた通り、大会ルールで、武器はなしと決まっている。使えば反則だ。
等と考えている間に、ドラムーは取り出した物を、レイナに見せた。
それは、数枚の長細い紙で、ドラムーはレイナにこう言った。
「これ、隣町の人気の劇の鑑賞券だ。これやるから負けてくれや!」
と。
「は!?」
と声を漏らすレイナ。観客の何名かも、同じ様に声を漏らした。
「実を言うとだな、俺、隣町では名の知れた名家の者なんだよ。早い話が金持ちだ。で、家の金を使って遊びまくってたんだ。そしたら、いい加減働けって、親父がキレてよ…」
「…」
「でも、働くのめんどくせーしよ、そこで、家の家宝をこっそり売り飛ばして金にして、遊んでたんだ。ところが、それがバレちまって、親父のやつ大激怒だよ!」
「そりゃそうでしょうね…」
「とうとう親子の縁を切る。家から追い出すっていい出したんたぜ!ヒデーと思うだろ?」
等とまるで被害者かの様に言うドラムー。
「1ミリも思わねーよ!」
とは、観客席の俺声。
「追い出されたら、スーパー金持ちから一転、スーパー貧乏人になっちまう。そんなの死んでもイヤだぜ!」
なんか、こ○亀の某キャラクターみたいな事を言ってやがる…
「で、必死に謝ってよ、そしたら、この大会で優勝とまではいかなくとも、良い成績を収められたら考えてやるって言われたんだ!」
「まさかそれで…」
「そ!だーかーら、ねーちゃん!俺のためだと思って、負けてくれよ!タダとは言わねーぜ。さっきも言った通り、この券やるからさ!」
「……」
チケットをチラつかせるドラムー。
黙って俯くレイナ。
「あっそうだ。何だったら、俺の5人目の愛人にしてやってもいいぜ!?どうだ、いい話しだろ!?愛人になれば贅沢出来るぜ!」
等と、終いには言い出す男。
碌でもない奴だ。絵に書いたような、金持ちのドラ息子だ。まぁ一応、親の方はマトモそうだが…
「……」
隣りにいるリリーナも、かなり不愉快な気分なのか、苦虫を噛み潰したよう顔をしている。こんな顔のリリーナ、出きれば見たくはなかった…
「俺みたいなスゲー顔も良くて金持ちの男、そうそういないぜ!?な!な!」
聞いてるだけでも不快だ。
そして、黙って聞いていたレイナがため息をついた後に、口を開いた。
「話は以上かしら?」
「あぁ、で、返事は?」
「返事は…こうよ!」
そう言ってレイナは、ドラムーの顔に拳を打ち込んだ。
「ぐぇ!!」
と奇声を上げ、ドラムーはその場に仰向けに倒れた。そのまま、呆気なく気絶した。やはり、大した奴じゃなかった。
ベタな漫画だったら、顔の前で、鳥が円を描くように飛んでいるだろう。
「誰がなるか!!」
と気絶しているドラムーに対して、吐きつける様に言い放った。
「勝者レイナ選手!」
勝利の判定をくだすエムー。
拍手の湧く会場。勿論、それは決して、いい試合を見せてくれたからと、来るものではないのは、言うまでもない。
一先ず、レイナは一回戦を通過した。