収穫祭
タイトル変更しました.12/5
「大会?あたしが?」
「そうです、どうでしょうか!?」
「どうっていきなり言われても…いやそもそも、あなた誰なのよ?」
「あぁ、申し遅れました、自分はエムーと言います。」
エムーと名乗った男。聞けば、この町の町会の役員をしているという(この世界にも、町会や自治会とかあるのか…などとは思わない。もう慣れたし、あるものはあるということにしとく)。
「で、エムーさん、その大会って何なの?」
「えぇ、実は明日からこの町で3日間、収穫祭が行われるんです。」
「収穫祭!?」
収穫祭は、作物が無事に育ち、収穫出来ることを祈って主に農村で行われる行事だ。
それが、明日から行われる様だ。
「収穫祭ね…でも、その割には、特に準備とかされている様子が無いぜ!?祭は明日なんだろ!?」
「えぇ、祭は町中ではなく、近くの広場で行われるんです。」
そう言ってエムーに案内され、俺等は祭の行われるという広場に行った。
「飾り付けはこんなもんかな!?」
「いいんじゃないか?」
「お~い、案内板はどうした!?」
「イケね!用意するの忘れてた!」
「何してんだよ、祭は明日だぞ!?」
「スマン!急いで作る!」
「急げよ、間に合わねーぞ!!」
といった感じで、広間では祭の準備が執り行われていた。
「皆さん気合い這入ってますね!」
「ええ、何しろ年に一度のイベントですから。まぁ正直に言いますと、見ての通りこの町は香辛料の畑ばかりですので、この祭くらいしか売りが無いものですから…」
「意外と切実だな…で、レイナに出てほしい大会ってのは?」
「あそこを見てください!」
エムーが指差す方には、四角い舞台が設けられていた。相撲やプロレスみたいに、周りには観覧スペースになっている様だ。椅子・ベンチ等は無いので観戦は立ち見らしい。
「あそこで武道大会が行われるです。」
「武道大会!?何だって収穫祭で、そんなのやるんだよ?」
「それはニンニクの神が、武道・格闘技の観戦がご趣味という神話があるからです!」
「ニンニクの神…」
香辛料の栽培が盛んなこの町では、各種香辛料にはそれぞれ、一柱づつ神が居るという神話があるらしい。収穫祭では、その神々の趣味や逸話にちなんだ、催し物をするらしい。
で、ニンニクの神は武道・格闘技の観戦が好きという設定の為、武道大会をするのだとか。
スタミナの付くニンニクの神が武道・格闘技ね…まぁしっくり来なくも、ないかな…
「収穫祭の初日の午後より、その武道大会が行われる予定なのですが、参加者の一人がトレーニング中に怪我をしてしまい、欠場になってしまったんです…」
「なら不戦勝でも、シード扱いにでもして調整すりゃいいんじゃないか?」
「生憎、ニンニクの神は不公平がお嫌いで、そういうのを好まないのです。なので参加者はキッチリ揃っていないといけないルールなのですが、この町には、急遽参戦してくれるような人が居らず困っていたところなんです…」
「それで、レイナに声をかけたって理由か!?」
「はい。人数さえ揃っていれば、参加者の身分も経歴は不問なのです。ですので、レイナさんでしたね、どうでしょう、参戦してもらえないでしょうか?…」
「もらえないでしょうかってね…あたしの武術は、見世物じゃないのよ!」
その気は無い感じのレイナ。
「参戦者全員に記念品が出ますし、何より、優勝者には豪華な賞品と賞金が…」
「あたしはね、お金の為に日頃から鍛えて理由じゃないのよ!」
キツめの顔をし、エムーに睨みつけるレイナ。
「なぁレイナ、急いで次のとこに行く予定もないし、旅の思い出作りだと思って、出てみたらどうだ!?」
見かねて俺が、助け舟をだす。
が、
「そう言う問題じゃないの!」
聞く耳を持たないレイナ。
こりゃダメそうだな…と思っていたら、
「ねぇレイナちゃん、エムーさんも困っているみたいだし、人助けだと思って、参加してあげてくれないかな?」
「うん出る!観てて姐さん、必ず優勝賞品を、姐さんに捧げるからね!!」
「うぉーーい!!」
リリーナに言われ、コロッと、180度考えを速攻で変えたレイナ。
「急に変わるなよ!」
「いや何、実のところ、内心は興味あったのよ。いつの日か分からないけど、ニコとの再戦に備えて、一つ、腕試ししてみたいと思ってたのよ!」
「嘘つけ。リリーナに言われたからだろが!」
「…よくわかりませんが、とりあえず、参加して頂けるということですね?…」
「ええ!」
「参加して頂けるのならは、理由は何でも構いません。コチラも助かりますので…」
それから、大まかな大会の時間とルール等の説明を聞いたレイナ。
「では、こちらの方で出場登録はしておきますので、時間になったらお越しください!」
「オッケー!」
という理由で、武道大会への参加を決めたレイナだった。同時に俺等も、3日間行われる収穫祭を、楽しむ事とした。