香辛料
「うっ……朝か…」
翌朝、窓のカーテンから漏れる陽の光が顔に当たった事で、俺は目が覚めた。
横のレオはまだ寝ている。起きていると、あんだけ食い意地の張ったやつだが、そこは子供、寝顔はカワイイ。
レオを起こさないように、そっとベットから起きた。
横の、リリーナとレイナの寝ているベットをみるが、2人の姿は無かった。既に起きているみたいだ。
この宿は、トイレと洗面は共同で外にある。多分、2人共そこだろう。部屋の備え付けのタオルを手にし、俺はそこへ向かった。
案の定、2人はそこにおり、洗顔をしていた。
「あっ、タイガーさん、おはようございます!」
「おはよう!」
「おはようさん2人共!」
簡単に朝のあいさつを交わす俺等。
「ところで2人共、どうだ、寝れたか?」
「寝れたかって?」
「2人共、2人で1台のベットで寝たろ!?寝苦しさとか無かったかなと思ってな…あぁ、俺の方は問題ない。レオはまだ小さいしな!」
本当のところは、レオの寝相の悪さに手を焼いたが、そこは黙って置くことにした。
「私は大丈夫でしたよ。でも、レイナちゃんの方は…どう、寝苦しくなかった?」
リリーナがレイナの方に視線を向けて聞いた。
それに対しレイナは、
「あたしも大丈夫だったよ、姐さん!」
と返した。
「元々、修行の旅でアチコチ回ってて、宿がない時は野宿してたくらいだしね!」
「野宿!?大丈夫だったの? 」
「うん。特に何もなかったよ!」
「(若い娘が野宿…まぁ、レイナなら何があっても対処出来ただろう。仮に強盗に襲われても、返り討ちにしただろうな…)」
「だから、それに比べたら、快適だったよ!」
「そうなんだ…」
「それに、姐さんと一緒なら、何処でだって大丈夫だよあたしは!路地裏だろうが、岩の上でだって寝れるよ!!…って、仮にだよ仮に!? あたしは間違っても、姐さんをそんな劣悪なとこで寝かせたりなんてしないから!?」
「う、うん…」
少し引き気味のリリーナ。
リリーナ…本当、面倒な奴に好かれたな…
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「ありがとうございました!」
宿屋の主人に見送られ、宿を出た。
宿をチェックアウトした俺等は、町を見て回った。各種香辛料で有名なとこだけに、それらを栽培している畑が多かった。元の世界でいう、京都宇治の方の、茶畑が多い地帯の様なものだ。
昨日のこともあってか、流石のレオも、それらをおいそれと食べようとはしなかった。
「昨日の胡椒を初めて、唐辛子やシナモンなど、沢山育てられてるな!」
「そうですね。これは何かしら!?」
「確かそれ、サフランっていう香辛料の花だよ姐さん!」
「へぇ、こういうの詳しいのレイナちゃん!?」
「子供の頃にね、屋敷の料理人が使っているのを見て、聞いたことあるんだ!」
「屋敷の料理人ね…流石、そういうとこは、お嬢様なんだな…」
他にもゴマやニンニクなんかも育てられていた。ここで、
「ゴマやニンニクは香辛料なの?」
という、疑問が出てくるが、そもそも「香辛料」とは、調味料の一種であり、加える事で食材に香りや色等を出す植物全般のことを指す。そのため、ゴマ・にんにくは、野菜であり香辛料でもあるのだ。
確か元の世界で、学校の家庭科の時間に、家庭科の先生から聞いた覚えがある。
等と考えてると、
「お~いタイガー、腹減ったぞ!」
と、レオが言ってきた。
又このパターンかよ…だんだんと、テンプレ展開の様に思えてきた…
「もう腹減ったのか!?…まあ確かに、そこそこ歩いたけど…」
「朝も、宿の売店で買った、軽食で済ませただけだからね!」
昨夜利用した宿屋、食堂は夕食時のみ利用可なのだ。なので朝は、各自で自由に済ますスタイルなのだ。俺等は、その宿屋の売店(そこは朝からやっていた)で軽食を買って済ませた。
なので、空腹とまではいかないが、俺の方も少々小腹が空いてきた感じがする。
「仕方ない、少し早いけど、昼にするか!?」
「そうですね。レイナちゃんは?」
「姐さんが行くってんなら、あたしも行くよ!」
リリーナ・レイナも賛成したので、早めの昼食をとることとなった。
「問題は、何処にするかだな…」
近くにあるのは、小さめのパーラー的な店と、ラーメン屋がある(こういう店が、あるものなのか?等という疑問は考えない事とする)。個人的にはラーメンが食いたい気分だが、問題がリリーナとレイナの2人だ。2人共、ラーメンはあまり好きじゃないらしい。汁で服が汚れたりするから、苦手だとか。
かといって、俺の方は、昼にスイーツをって気分ではないのだ…
なので、
「そんじゃあ、後でな!?」
「はい!レオくん、お行儀よくね!タイガーさんに、迷惑かけちゃダメだよ!」
「おう!」
「(返事はいいんだけど、本当に大丈夫かな?…)それじゃあ行こっか、レイナちゃん!」
「うん、姐さん!」
二手に分かれる事となった。
俺とレオはラーメン屋に、リリーナとレイナはパーラーに行く。
4人いるから、こういう時、半々に分かれやすい。4人での旅の利点だ。
「レイナ!リリーナの事、頼んだぞ!」
「言われるまでもないわよ、任しといて! (あれ!?姐さんと一緒に…てことは、コレってデートなんじゃ!?…)」
1人顔を赤らめるレイナ。
「どうかしたのレイナちゃん!?」
「はっ、ううん、何でもないよ姐さん!」
レイナの顔を見て、何考えてるか、内心は大体察した。別の意味で少し心配になったが、まぁ、大丈夫だろう(多分…)。
手なわけで、男・女同士に分かれ、昼食に向かった。2人がパーラーに入ってくのを見届け、俺とレオは、ラーメンに入店した。