宿
ガッガッ!
咀嚼音を立てて、食事するレオ。
「うめ~!」
「だから、もっとゆっくり食えって…」
そう言って、レオの口元の汚れを拭く俺。
「本当にこの子、スゴイ食欲だね姐さん!」
「うん。まぁ、私達はもう、見慣れてるんだけどねレイナちゃん!」
ここは、この町の宿屋だ。今日はここで一泊する事にした。そして今いるのはその宿屋の食堂室だ。宿泊料金によって異なるが、宿泊者には、ここで夕飯が提供される。
で、今がその、夕飯の時間だ。
食堂室のテーブルの一卓に俺等がいる。俺とレオ、リリーナとレイナがそれぞれ隣り合って座って、向き合っている。
今までは、レオの横にはリリーナが座っていて、今の俺みたく、レオの口元を拭いたりしていた。が、今リリーナの横にはレイナが座っている。リリーナが座ると当然のごとく、横に座ったのだ。レイナはリリーナに好意的だから当然と言えば当然か…
なので、レオの世話は俺の役目となったのだった。
「よし、そろそろ寝るか!?」
「ですね!」
「レオ!しっかり歯みがけよ!」
「ん!」
「トランプ戻しとくね!」
食後、俺等は部屋で待ったりと過ごした。
生憎この世界には、テレビの類はない。なので、皆で駄弁ったり、部屋に備え付けてあったトランプや見慣れないボードゲームで遊んで過ごした(案の定、全ゲーム、俺がビリだったのは言うまでもない…)。
ボードゲームは、リリーナやレイナもよくルールが分からないらしく、直ぐに止めたが…(多分、元の世界のバックギャモンとか言うやつに近い物だと思う。そっちの方も、ルール知らないけど…因みにバックギャモンは、名前は知ってるけど、ルール知らないゲームの代表格と俺は勝手に認定している。)
洗面等を済ませて、俺等は部屋にある2台のベットに入った。
俺等は4人いるが、節約の為に交渉して、ツインの部屋にしてもらった。なので、ベットは2人で1台となる。食堂の時と同様、俺とレオ、リリーナとレイナという組み合わせだ。
「ねぇタイガー。」
「ん?どうしたんだレイナ?」
灯の火を消す前に、レイナが、
「暗くなってから、姐さんやあたしに、変な事しようとしないでしょうね?もし、姐さんにチョッカイを出そうものなら…」
と、手を合わせて、ポキポキ音を立てながら言ってきた。
「しねーよ!子供の前で変な事言うなよ!!」
そう言って返した。
「レイナちゃん!タイガーはそんなことする人じゃないよ!」
「姐さんがそう言うなら…」
一応は納得するレイナ。
「でも、タイガーでなくとも、何時、変な奴が襲ってくるかわかんないからね!男は大半が、スケベな生き物だし。でも大丈夫!その時は、あたしが必ず守ってみせるから安心して寝ててね、姐さん!」
「う、うん…よろしく…頼りにしてるね、レイナちゃん…」
「任せといて!」
少し困り顔のリリーナ。
本当に、厄介なのに好意を持たれちまったもんだなリリーナ…
そして、その夜中…
ガッ!
「うっ…」
顔に弱いが衝撃が入った。目を開けるとレオの手が、俺の顔に当たっていた。どうやら、寝返りしたら俺に当たったようだ。
レオの手を直し、再び目を閉じる。
が、間髪入れずに、
ガブッ!
「痛…」
今度は腕を噛まれた。
「へへへ、ブタの…丸焼き…」
と寝言を言いながら、俺の腕を噛むレオ。
コイツは夢の中でも食ってるのか…
「寝相の悪いやつだな…」
と、小声で言う。
てことはだ…リリーナ、今までずっと、苦労していたのか…
出会ってから今まで、夜中にレオの相手してたのはリリーナだ。彼女の苦労を全く知らなかった俺。
ふと、隣のベットのリリーナとレイナを見る。
スヤスヤと寝息を立てるリリーナ。
その横で、品よく寝るレイナ。お転婆とはいえ、そこはお嬢様だな。
気づいてあげれなくて、すまないなリリーナ…
そう思いながら、2人のベットに静かに近付こうとしたが、その直前にレイナが、
ピクッ!!
と、反応を見せたので、直ぐに後退りした。
寝ながらも、俺の気配を感じと取ったようだ。流石、武道家だけのことはあるな。
彼女がいれば、リリーナに危険が及ぶことは、無さそうだ…
それから俺は、ベットに戻り、レオの側で横になった。