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ベーゴマ

 俺が手に取った物、それはベーゴマだ。「ベーゴマ」それは昭和の頃、主に男子児童が遊んだ鉄製のコマだ。シルエットはピラミッドを逆さまにした感じだが、丸みがある点が違う。それに、2つ結び目を付けた紐を巻き付け、複数人が同時に場に出して回し、先に止まるか弾き飛ばされたら負けになる。そうな感じの遊びだ。紐の結び目の付け方で、「男巻き」「女巻き」といった呼び方がされていたらしい。ちなみに先述の漫画では、男巻き女巻きを卑猥な呼び方で呼んでいたという下りがあるが、真偽は定かじゃない…

 男巻きより、女巻の方が紐は巻き付けやすいがその分パワーは落ちるらしい。とりあえず俺は女巻きで最初にレン達に教え、競技させる事とした。


 「あー、上手く巻けないぞ。」

 「俺もだ。むずいぞ。」

 「上手く引っ掛けるんだ。こんな感じに…」


 俺が教えで子供達は次第に巻けるようになった。そして、地面で練習を始めた。 

 子供は覚えが早い。最初はろくに回りもしなかったが、次第に様になってきた。全員が回せるようになれば、早速本番だ。


 俺は仕事先の牧場から貰った(正確には、片隅に放置されていたやつ)、底に穴の開いたオンボロバケツに、リリーナに提供して貰った使い古しの布を被せて紐で縛り、土俵を作った。


 「この上に乗せて勝負するんだ。」

 「よーしやるぞ!」

 「負けねーぞ!」

 「俺だって。」


 子供達は早くも熱気がムンムンしてきた。ここでも俺が審判となり試合を始めた。


 「いいか?チッチのチ!って言ってから、一斉にこの台、土俵に乗せるんだ。解ったか?」

 「うん、解った。」

 「そんじゃ始めんぞ。せーの、チッチのチ!」 


 俺の掛け声と共に、子供達は一斉にベーゴマを土俵に投付けた。


 「あー、やられた。」

 「げっ、自滅かよ…」

 「俺のは、乗りもしなかった…」

 

 子供達はベーゴマ勝負に白熱して盛り上がっている。土俵の上では回転しているベーゴマ同士の激しいぶつかりあいで、火花が出そうな勢いだ。

 その光景は、何時ぞや元の世界で見たテレビ番組の光景そのものだ。一つの遊びに熱中し、駆け回ったりして盛り上がる子供達。

確か、N○Kの「今は懐かしき昭和の時代」とかいうタイトルの番組だったな。古い映像で、乱れまくっていたな。何より白黒だった。だが今こうして、俺の見ている光景はリアルなものだ。

決して、子役が演じている再現VTR(ドラマ)でもない。紛れもない本物だ。


 俺は不思議と懐かしい感じになった。何故だろうか、平成生まれの俺がこんなこと感じるなんてな。

 レトロな店とかに行くと、懐かしさを感じるのと同じだろうか?実際それらは、当時のものに似せて作った代物なのだが…


 「やりー、俺の勝ち!」

 「ちぇっ負けた…」

 「おい、もう一度だ。」

 「今度は負けねーぞ。」

 

 子供達は夢中になっているな。

何でも、当時は負けたらコマは取られるルールだったらしいが、今はそう言うのは一切無しとした。

 暗くなってきたのでその日はそれでお開きとした。子供達に使ったベーゴマはプレゼントした。みな喜んでいた。


 子供達を見送った後、俺は片付けを行い、自身も帰宅した。


 「評判は上々だな。さてと、後はどう売り出すかだが…まっそれはゆっくり考えよう。」


 俺は少しウキウキした気持ちで帰路についた。

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