メイド
その後、レイナの兄達も交えて、茶を味わった。
「うめ~!」
「ハハハ、そうか美味いか!」
「さぁ、コレもいけるぞ!」
「うほぉー!」
「沢山あるから遠慮はいらんぞ!」
「元気があって、結構結構!!」
そんな感じで菓子を食うレオと、そんなレオに菓子を勧める、長男サンダスと次男デービィッド。兄弟の中でも特に強面の2人だが、意外にも、子供好きなようだ。
近くでは、リリーナが、ハンナ・レイナ姉妹とお喋りをしている。
「へぇ、あなたの友達、自警隊にいるの!」
「えぇ、少しガサツなところがありますけど、友達思いのいい娘ですよ!」
「でも、そのケティって娘が自警隊で、ニコ・トーマス・ロットマンが司書だなんて…」
少し不満げな顔のレイナ。
「あの強さ、彼女の方が、絶対自警隊向けだと思うのにな…」
「ニコは家がカリボーの道場だったので、幼い頃から鍛錬は積んでたけど、争い事や痛い事は嫌いな性分だったから…」
「……」
「レイナ、アンタまだ負けた事根に持ってんの?」
「⁉べ、別に根に持ってないわよ姉さん!ただ、ライバルとしてその辺が…」
「何時からライバルになったのよ…互角の勝負だったならまだしも、完敗だったんでしょ?しかも、向こうの道場にまでお仕掛けて。多分、そのニコって娘の方は、アンタの事ライバルとか思ってないわよ、きっと!」
「ぐっ…」
痛いところを突かれたって顔になるレイナ。
「でも…」
「それに、下手をすればその娘、もうアンタの事なんて忘れてるかもよ⁉いや、もう既に…」
「そんな!ライバルのことを…」
「だから、ライバルだのなんだのと言ってるのは、アンタだけよ…」
「うぅ…」
そんな感じで会話に花を咲かす3人。
対して、
「この傷は、若かりし頃に…」
「はぁ…」
「父上、その話僕の記憶だと、かれこれ20回以上はしてますよ…」
自分の身体の傷に関する武勇伝を語る侯爵。それを聞き、適当に相槌を打つ俺と、剣を磨きながら冷静に返すハーランドだった。
そんな最中、リリーナとお喋りしていたレイナが立ち上がり、
「ロッテ、ちょっと来てくれる!」
「かしこまりました、お嬢様。」
メイドの少女を連れて部屋を出ていくレイナ。ロッテが、メイドさんの名前らしい。いきなりメイドを連れて、どこ行くのか気になったが、
「で、この辺にある傷が…」
「……」
侯爵は逃がしてくれなかった…
しかし、
「すみません。少しお手洗いを…」
と、リリーナはそう言うと、レイナ達の後を追う様に部屋を出ていった。
リリーナも気になったようだ。2人のことはリリーナに任せるとして…
「更に、この脚にあるのが…」
「……」
侯爵の武勇伝語りから、解放されるのはまだまだ先になりそうだ…
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一方、レイナ達の後を追ったリリーナは…
「(あっ、いたいた。こんなところで、一体何するのかな…)」
ロッテを連れたレイナは、屋敷の池の近くにある木の下にいた。
リリーナは近くに隠れて様子を見ている。
「ロッテ、誰が何と言うが、ニコ・トーマス・ロットマンは、私のライバルよライバル!!」
と力強く言うレイナ。
「(まだそこに、こだわってたの…わざわざメイドさんをつれだして、あの人もいい迷惑なんじゃ…)」
と、リリーナが思っていると、メイドは
「はぁ…はいはい、アナタがそう言うんなら、ライバルよレイナ!」
「(えっ⁉)」
「流石ロッテ、わかってる!」
「アナタとは、一体どれだけの付き合いだと、思ってるのよ⁉」
先程までと違い、 主であるはずのレイナに完全にタメ口を使うロッテ。
リリーナが困惑していると、
パキ!
「(あっ!)」
足元の小枝を踏んで、音を立ててしまったリリーナ。
「誰⁉」
少々ベタな感じで気づかれてしまったリリーナ。
「わ、私です…」
「何だ、あなたか…」
仕方なく、姿を現したリリーナ。
そして、
「幼馴染!」
「そうなの。彼女は小さい頃から、お母さんと一緒に屋敷に住み込みで働いてて、私とは同い年でね、立場関係なしに遊んでたの。あなたでいうところの、ニコやケティって娘達みたいなものね!」
「立場上、常に対等に話すわけには行かないからね。それで、2人っきりの時は、立場関係なくタメ口でって事にしてるのよ!」
「へぇ、なんかいいですねそういうの!」
「でしょでしょ⁉」
「あっ、でも今は2人っきりじゃ…」
「ん、そういえば…ってまぁいいでしょ!細かいことは!」
「だよね!」
と軽い感じの2人。
「(随分と軽いな…流石、幼馴染…私とケティ達も、こんな感じだったけ…)」
立場を超えて仲の良い2人を見て、自身の幼馴染達の事を再び懐かしむリリーナ。
その時だった。
ドシーン!!
突然、 大音が聞こえてきた。
「な、何よ今の音は⁉」
「屋敷の方からよ‼」
「何かあったのかしら⁉」
「とにかく、戻るわよ!」
そう言ってリリーナ達は、屋敷に急いで戻った。