レイナとオヤジさん
それから俺等は、支払いを済ませてレイナと共に店を出た。
そして、スクールが終わったレオを引き取りに向かった。レイナも家が同じ方向なので、一緒だ。
「よっ!」
「今日のスクールはどうだったレオくん⁉」
「まあまあ楽しめたぞ!」
「そう、それは良かった!」
「それよりも、腹減ったぞ!」
「レオくんそればっかりだね…」
と、他愛のない会話をするリリーナとレオ。
「あの子が、例の山で保護したっていう子?」
「あぁ、レオだ。名前は俺が付けた。」
レオのことは、店でレイナにも話していた。
「私はレイナだよ。よろしく!」
「ん、おれっち、レオ!」
簡単にレイナの事を紹介してから、挨拶を交わしたレオとレイナ。
「それよりも、たくさん身体を動かしたから、スゲー腹減ったぞ!」
「さっき聞いたよ、それ…」
「話には聞いてたけど、本当に食いしん坊なんだね、あの子…」
「えぇ、お陰で食費が…」
冗談抜きで本当に、レオの食費は半端なもんじゃないのだ…因みに、レイナにごちそうしたやつも、結構な値段だった…
レオがゴネるので、オヤジさんの定食屋に急いだ。定食屋の直ぐ側に着くと、
「!!あなた達、ココに世話になってるの?」
「そうだけど、知ってるの店なのか⁉」
「えぇ、店長とは顔なじみよ!」
「そうなのか…(まぁ彼女は、この国出身だ。そういうことだって、あるだろうな…)」
店に入るとオヤジさんが、既に開店準備を始めていた。
「帰ったか…って、おおレイナちゃん!」
「お久しぶりです、ディカプリオさん!」
「「!!」」
俺とリリーナは面食らった。
「どうしてのよ2人共?」
「レイナさん…今、おじ様の事をディカプリオと…」
「呼んだけど、それが何⁉」
「オヤジさんの名前、ディカプリオっていうのか?」
「あぁ、そういや言ってなかったな⁉そうだぜ、それが俺の名前だ!それが何か⁉」
「いや、何でも…」
オヤジさん、ディカプリオっていう名前だったのか…言っちゃ悪いが、似合わない。ハリウッドスターとは、雲泥の差だ…
リリーナも、そのギャップに驚いている様子だ。
「腹減ったー、腹減ったー!!」
と、レオはオヤジさんの名前には、全く興味がないらしく、空腹を訴えている。
その後、俺とリリーナは店の手伝いを、レオは店の奥でオヤジさんの作ったまかないを食ってる。レイナはレオの横で茶を飲んでいる。彼女には、レオの世話を頼んだ。
少しすると、ディンも帰ってきた。
「ただいまー!」
子供達と遊んでたので、全身汚れていたが、顔色は以前と比べると、良くなっている様に感じた。少し前は暗い感じだったが、今は、垢抜けた感じだ。
「俺も手伝うよ…って、ああ!」
「あら、久しぶり!」
レイナを見て驚くディン。
「帰ってたんですか?」
「ええ、数日前にね!」
「「??」」
年上のディンの方が敬語を使ってる。その事が気になる俺とリリーナ。
それについて尋ねるとディンは、
「何でって、この人は…」
「待って、もう開店時間でしょ⁉その事は置いといて、今はお店の方を優先して!」
「はぁ…」
気にはなったが、彼女の言う通り、間もなく開店時間になった。なったのと同時に、常連客が入って来た。
お客は時間が経つにつれ、増えていった。
オヤジさんを始め、俺もリリーナ・ディンも忙しかった。
閉店時刻になり、最後の客を送った。
それから、後片付けを終えて、ようやく一息入れられる。その頃には、レオは寝てしまっていた。やっぱり子供だけに、寝顔は可愛かった。
レオを寝室にやると、皆で遅めの夕飯だ。余った店の食材でオヤジさんが作った、いわばまかない飯だが、そこはオヤジさん。とても美味かった。
「すみませんディカプリオさん。私までごちそうになっちゃって…」
夕飯は、レイナも一緒に食べた。
「良いってことよ、飯は大勢で食った方が美味いからな!」
と気前のいいオヤジさんだった。
皆でお喋りしながらの夕飯。オヤジさんもディンも、俺等が強盗に襲われて、レイナに助けられてとと聞き、心底ビックリしていた…
夕食後、レイナは帰って行った。外は、 すっかり遅くなっていた。本来も女性一人で夜道を出歩くのは危険なところだが、まぁ、彼女ならその心配はいらないだろう…
翌朝。
今日オヤジさんの店は、夜営業のみだ。加えてスクールも休みなので暇だ。
そこで、3人で買い物にでも行こうという事になった。長旅で靴とかもくたびれてきた。食糧とかも揃えておきたかった。
町の方に繰り出し色々な店を回っていたら、ジョギング中のレイナに遭遇した。
「買い物してるの?」
「ああ、旅を再開する上で必要な物を揃えておこうと思ってな!」
「そうなんだ。あっ、間違っても、昨日みたいに、変な所には行かないようにしなさいよ⁉」
「わかってるよ。オヤジさんにも、再三注意されたよ!」
「ならいいけど…そうだ!わたしの家、この近くなの。寄ってかない⁉美味しいお菓子も有るわよ!」
お菓子という単語に反応したレオが、
「行く!!」
と、即答した。
で、そのまま、彼女の家にお邪魔する事となった。
彼女に案内されて向かった先には、
「着いたわよ。ココよ!」
「えっ…」
「…こっ、ココって…」
驚く俺とリリーナ。彼女の、レイナの家というのが、結構な広さをほこる、お屋敷だった。
意外や意外。レイナはなんと、お嬢様だったのだ…