レイナ
突如現れた女性。
彼女の足元には、男が1人倒れている。失神しているらしい。
「なっ、何だテメーは⁉」
リーダーらしき男が叫ぶ。
それに対して女性は、
「あんた達みたいな、下劣な連中に名乗る名はないは!」
と、強気に返した。
どうやら、ケティ並みに気の強い性格らしい。
「舐めやがって!ヤッちまえ‼」
「「「オウ!!」」」
リーダーの指示で他の男たちが、彼女に襲いかかった。
「キャっ!」
「危な…」
危ないと叫ぼうとしたが、途中で止まった。
彼女に襲いかかった最初の1人が、突如として、空中に舞ったのだ。
「ガハッ!」
そしてその男は、そのまま地面に落下。この男も又、失神した。
彼女の方を見ると、右足を上げた体制で立っている。
男達が邪魔でよく見えなかったが、どうやら、蹴りか何かをお見舞いしたようだ。
「ハッ!」
更に彼女は、間髪入れず、別の男の顎に蹴りを入れた。顎を思いっきり蹴られた男は倒れ、ピクピクと痙攣している。
その後も彼女は、凶器を持って襲いかかってくる相手に、全く動じる様子もなく、次々となぎ倒していった。
そして残るは、リーダーの男1人となった。
「なっ…」
予想外の出来事に、あ然とする男。その隙に、俺とリリーナは男と距離をとった。
「さて、残るはアンタ1人だけど、どうするの⁉」
「⁉このアマが!!…許さねー!!」
頭に血が上り、ヤケになった男は、彼女に突っ込んできた。そして、2人の距離が縮まると、ナイフを彼女に突き付けた。
が、彼女はナイフを裏拳で弾いた。弾かれて飛び、地面に転がるナイフ。
そして、男の腕と肩辺りの服を掴むと、突っ込んでくる勢いを利用し、投げ飛ばした。
男はそのまま、他の連中と同様に、失神した。
時間にしてホンの数分。彼女はたった1人で、凶器を持った強盗達を全滅させた。
「スゴい…」
「あぁ…アッという間に…でも…」
最後、リーダーを倒した時の彼女の動き。もしかしたら…
等と考えていると、彼女の方から話しかけてきた。
「大丈夫?ケガはない?」
「えっ、あっ、ハイ!おかげさまで助かりました!」
「ああ、本当に助かったよ。ありがとう!」
俺等は礼を言った。
「このくらい、大したことないわよ!にしても、こいつ等にも困ったモノよ。こいつ等のせいで、この国の治安と評判が悪くなるんだから…」
と、のびている強盗達を見ながらため息混じりに呟いた。
それから、この国の自警隊に連絡。強盗達は拘束され連れて行かれた。追って沙汰があるだろう。
後に聞いたが、強盗達は余罪がかなりあるらしく、故に当面の間、外には出てこれないとか…
まぁそれは、自業自得だけど…
一方、俺等の方は、近くの自警隊の監視所(交番みたいな物)で、事情聴取を受けてから開放された。
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「えーっ!レイナさん、18歳なんですか⁉」
「まさか、俺達より年下とは…」
「そうよ。てか、何歳だと思ってたのよ?」
ココは、町の方にある喫茶店(一般の観光客向け)。
助けてもらったほんの礼とばかりに、彼女をお茶に誘った。
彼女の名前は「レイナ」。この国の出身であり、武術家で各地を修行しながら回っているとか。
歳は先述の通り18歳。ショートヘアーで、見た目から20代の前半位と思ってた。
放浪の格闘家ってやつか。それで、人気格ゲーの、昇龍拳でお馴染みのキャラを思い出した。
それは置いといて、
「それよりも、良いのコレ、ごちそうになっちゃっても⁉」
レイナは運ばれて来た、この喫茶店でも一際、値の張るケーキを指差しながら、聞いて来た。
「勿論ですよ。危ないところを助けてくれたんですから。ですよね、タイガーさん⁉」
「ああ。危うく全財産奪われ、下手すりゃ命までもが危なかったんだ。それに比べりゃ、安いもんだ!」
「そう…それなら遠慮なく!」
ケーキを食べだすレイナ。食べているその姿は、至って普通の女性らしく、先程見た強さを全く感じさせなかった。
食べながら色々と話した。
「へぇ、あなた達も旅してるんだ!」
「ああ。アチコチにな!今は見ての通り、この国に滞在中だよ!」
「それにしてもレイナさん、お強いですね!」
「まぁね!幼い頃から、色んな武術を学んでてね。」
そう言って、会得した武術の名前を次々に上げていくレイナ。
パンチャラー・回転脚法等と、イマイチ知らないやつばかりだ(後にボクシング・カポエイラに値するものと知った)。剣術など、実際に見たことこそないが、知っているものもチラホラ。
「…棒術、そしてカリボーと、こんなところかな⁉」
「カリボー…あぁ、そうだ!」
最後に知っているやつが出てきた。それを聞いて思い出した。
「どうしたんですタイガーさん⁉」
「いや何、レイナが強盗のリーダーのナイフを弾いただろ⁉その動き、何処かで見た気がしてたんだが、今思い出した。あれ、ニコがチンピラをやっつけた時に見たの、似てたんだ!」
そう。かつてホリィのパン屋に嫌がらせをしようとしてたチンピラ連中。それをニコがやっつけた。その際、ニコもナイフを持ったヤツを撃退した。その時の動きとレイナの動きがよく似ていたのだ。
カリボーの名前を聞いて思い出した。
「ああ、ありましたねそんなことも。いい思い出とは言えないけど、懐かしいです。ニコ、それにケティ達も元気にしてるかな?」
と、長い事会っていない親友達の顔を思い描き、懐かしむリリーナ。
が、ニコという名を聞き、
「!!ニコ…だって⁉…今、ニコって!!」
向かい席のレイナがいきなり、勢いよく立ち上がると、リリーナに顔を近づけて、
「ニコって言ってたけど、もしかしてそのニコって、「ニコ・トーマス・ロットマン」の事じゃないの⁉」
「は、はい…確かに彼女のフルネームは、それですけど…」
「やっぱりあのニコか…ニコ…」
ニコの名を何度もつぶやくレイナ。
突然のことに、困惑する俺達。
彼女とニコ。一体、2人にどんな因果関係があるというんだ?