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ボウリング

 「見事でしたよディンくん!絶妙な角度でカーブして、ピンを倒したんですから!」

 「へー、そうなんですか!」

 「俺も見てみてーな!」


 オヤジさんの店で、話に花を咲かせている。

 内容はもっぱら、ディンとボウリングの事だ。


 「そんな大した事じゃないって…」


 と言うディン。そう言いつつも、何処か誇らしげな顔をしている。

 初めて会った時と比べると、顔色もいい気がする。

 これまで何度も挫折してきた彼が、初めて人に称えられたのが効いたのだろう。


 「で、明日、子供達にコツを教えてくれって頼まれちゃったんだよ!」

 「ほー、子供達に⁉」

 「あぁ。でも俺に出来るかな…今まで指導された事はあっても、教えた事なんてないからな…」

 「何事も経験だよディンくん。して見なければ、どうなるかは分からないんですから!」

 「先輩…」

 「そうですよディンさん。やってみたら、案外上手くいくかもしれませんよ⁉」

 「嬢ちゃんの言う通りだディン。やってみろ!」

 「…みんな…そうだな。やれるだけやってみるかな…」

 「そうそう、その意気だぞディン!」

 「まぁ、子供は飽きっぽいからな。どうせチヤホヤしてくれるのも、今のうちだけだろうからな…」

 「おい。又ネガティブな事を…」

 「あっ、イッケネ!」

 「ははははは!」


 和やかな雰囲気になった店内に笑い声が木霊した。

 その後も暫く、皆で談笑した。

 因みにレオは、運動して疲れたので、たらふく食った後、ちゃっちゃと寝てしまっている。


 「それでは僕はこれで。」

 

 明日、朝早いショーが帰宅した。


 「さてと、俺等もそろそろ寝るかな!」

 「そうだな。」

 「明日も、忙しくなりそうですね!」


 と、寝支度をしようとしていたら、


 「なあ、ところで…」


 ディンが尋ねてきた。


 「何だディン⁉」

 「何って、この人達…」


 とディンは俺とリリーナを見ながら、


 「この人達とはどういう関係なの?住み込みで人雇ったの?」

 「「⁉」」

 

 そういえば、初めは忙しそうだったので、善意で手伝いをしていたが、それがいつの間にか、住み込みで働いている従業員みたいになっていた俺等。

 俺もリリーナ、そしてオヤジさんもそれが当たり前になりつつあった。

 慣れって怖いな…


 それから改めてオヤジさんと話し、この国に滞在している間は、ここで厄介になる事となった。勿論、店を手伝いをする上でだ。

 宿代も馬鹿にならないのでありがたかった。この国の宿代は、良心的な値段設置ではあるが、連日となると痛手だ。まさに、「塵も積もれば山となる」だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日。

 レオを今度は、スローイングボールのスクールに預けた。勿論、弁当付きで。

 それから、オヤジさんの店の手伝いをする。この日は俺等だけでなく、ディンも手伝っていた。そうしてたら、あっという間に午後になった。

 昼食の時間帯が過ぎると、この店は夜の営業時間までは一旦店を閉める。その間オヤジさんは、休憩と夜用の仕込みをする。仕込みはオヤジさん1人でするので、俺等は暇になる。

 一息入れてる俺等に対し、ディンは簡単な身支度をした。


 「出かけるのか?」

 「ああ。昨日言ってたろ?子供達にボウリングのコツを教える約束したから、今から行くんだよ!」

 「あっ、そうだったな!しっかり教えてやれよ!」

 「行ってらっしゃいませ!」

 「おうよ!」


 そう言って出かけていったディン。


 「ディンさん、元気になって良かったですね!」

 「ああ。昨夜に話したが、一先ず今後は、オヤジさんの店を手伝いながら、普通の仕事探すんだってよ!」

 「そうなんですか!」

 「ああ。吹っ切らたみたいでな、もう悩むのは止めだってよ!」

 「そうですか、落ち着かれたようで何よりです!」

 「だな。」


 と、茶を飲みながらリリーナと話す俺だったが、この時はまだ知らなかった。

 

 ボウリング。初めは、適当な素材で行っていた、ホンの子供のお遊び程度のものだった。

 それが、子供達の間で広まっていき、やがて大人達の目にも止まる。

 そして、このスポーツ大国であるこの国で、この国生まれ(発祥)の全く新しいスポーツとして、正式に認可されるのだった。

 明確なルール等が設けられ、メジャーなスポーツとなって行くのだった。

 

 そしてやがてディンが、そのボウリングのプロ第一号となるのだった。

 プロ第一号の生まれ育った店として、オヤジさんの定食屋が、ますます人気店となる事を。

 プロ選手のことを、プロボウリストと呼ばれる様になることを。

 ルールブックの一節に、ボウリングの考案者として、俺の名が書かれることを…

 

 まぁそれは、また別の話。


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