閑話 お土産2
「で、あのハゲオヤジときたら…」
「うっ、うん…」
「いきなり、「結婚するから辞めます」だなんて言い出すのよ!!」
「そうなんだ…」
準備も終わり、始まった女子会。
最初こそは、和やかな雰囲気で、和気あいあいとしていた。が、ケティの酒が入るのと共に、やがてケティとミミの、仕事での愚痴が始まり、それをホリィ・ニコが聞くというパターンに入った。
ホリィ・ニコ共、
「(これが無ければ、楽しい会なのにな…)」
と心の中で思っているが、口に出さないでいる。
そんな中、
「そういえばミミ、準備中に今回はもう一つお楽しみがあるとか言ってたけど、それって何なの?」
ニコが尋ねる。
「ああ、そうだった。今回の会はね、こっちの方がメインと言ってもいいかな⁉」
そう言ってミミは、ケティにも手伝ってもらい、店の奥から例の荷物を運んで来た。住んでる家の大家に手伝ってもらって、前もって運び込んでおいたのだ。
そしてこれが、リリーナからだと説明した。
「リリーナから⁉」
「何が入ってるの?」
「私もまだ中は見てないの。皆で見ようと思ってね!」
「いいじゃんいいじゃん!早く開けようぜ!」
ケティもテンションが上がっている。
なので、それぞれの名前が入っている物を、各自手にして、早速開封することとした。
「あたしのは…おっ!」
ケティ宛の物には、酒と赤い石のアクセサリーが入っていた。
中には、手紙も同封されていた。
「なになに…「島のお酒を送るね。追伸、飲み過ぎないように!!」だってさ!」
更に、酒の肴用にか、島で採れるナッツ類、干し肉(ビーフジャーキーのような物)も一緒に入っていた。
メンバーで唯一、酒を飲むケティ向けの品々だ。
「私のは…コレは!…」
ニコ宛の物には、白い石のアクセサリーと、島の景色が描かれた栞と、本2冊が入っていた。
「スゴい!これ、かなり前に絶版になってて、図書館の書庫にも置いてないやつよ!」
と彼女にしては珍しく、テンションが高くなるニコ。同封の手紙には、島の古書店で見つけたから、送ると書いてあった。
同じ本好き同士であるリリーナとニコ。互いの好み等を、理解しているのだ。
ウキウキするニコ。
そんなニコの隣で、ホリィもウキウキしていた。
ホリィ宛のには、青い石のアクセサリーと共に、木彫りの置き物そして、珍しい調味料類、レシピが入っていた。
「旅先で知り合った人達から、この辺りでは手に入らない調味料を貰ったらしいの。「教えてもらったレシピを同封するから、パン作りに役立ててね」て書いてあるは!」
タイガーとリリーナは旅先で、エージ・ピート・ジョウ達といった料理関係者や、コリート達等と様々な人々と知り合いった。
その際にリリーナは、ホリィが喜ぶと思い、レシピを教えてらったり、調味料等を貰ったりしていたのだ。
レシピには、ホリィも知らない種類のパンの作り方等が書いてあり、今から腕がなっていた。
「私のは…」
ミミのには、緑の石のアクセサリーと干し果物と民芸品の人形が入っていた。
「島で作られている人形で、送った相手に幸福を呼ぶと言い伝えられているか…」
同封の手紙を読みながら、人形を見て微笑むミミ。
実はミミは、人形の類が好きなのだ。が、子供っぽいからと、皆には隠しており、知ってるのはリリーナだけだ。
「(ありがとうリリーナ!でも…)」
と、同じく同封されていた干し果物を見つめるミミ。ミミはフルーツが好物だが、実は、干し果物は余り好きでないのだ。それは、リリーナも知らないことだ。最も、土産として送る以上、日持ちする必要あるゆえ、仕方がないことだが…
皆、リリーナからの土産を開封した。
「アクセサリーだけは共通だったね。」
「でも、使われている石の色は違うね!」
「手紙に書いてあるわ。色によって、違う意味があるみたいよ!」
リリーナが皆に送ったアクセサリーは、島でお土産品として売られているもので、使われている石にはそれぞれ、意味があり、
ケティの赤い石には、「出世成功・昇格昇進」
ホリィの青い石には「商売繁盛・千客万来」
ニコの白い石には「家内安全・厄除け」
ミミの緑の石には「健康祈願・無病息災」
的な、神社の御守りの様に、願い・祈りが込められているらしい。皆に合った、色の石の品を選んだのだ。
それから、残りの方も確認した。
中身は、クッキーやチョコレート等な菓子類に、干し肉・干し魚(乾物)・干し果物等が入っていた。
手紙には、マリーやテツ、職場の人達にと書かれていた。
それらを、多くの人に行き渡る様に、選別し、小分けにすることにした。
「テツさんは甘い物好きじゃないみたいだから、干し肉を、息子のレンくんには…」
「干し果物は誰にあげようか…」
「う~ん、これだとボリュームが無いなぁ…」
と、色々と考えながら小分けした。配分に苦労したが、なんだかんだでこういった作業は、思いの外、結構楽しかった。
しかし、そんな最中に、
「なっ⁉」
突如、ケティが妙な声をあげた。
「何々?」
「どうしたのよケティ?」
「いや何って、これ…」
ケティがあるものを皆に見せた。それは、お土産の干し魚の1つだった。
が、それを見て他の皆も驚いた。
「えっ!?…」
「こ、これって…」
「な、何で…」
そして、声を揃えてこう言った。
「「「何で歯型が⁉…」」」
そう。その干し魚には、クッキリと歯型が付いていたのだ。
その理由はというと…
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少し時間は戻り、タイガー達が公国に入国する前の乗り合い馬車の車内にて。
「あっ!」
「どうしたリリーナ⁉」
「タイガーさん…それが…皆に送ったお土産に、間違えて、レオくんが噛って歯型が入ったヤツを、入れちゃったみたいです…」
「ええ!?」
そう言うリリーナの手には、送ったつもりでいた、歯型の付いて無い、キレイな状態の干し魚が握られていたのだった…