表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/185

橋の上

 ディンを探して、俺とショーは町の方まで来た。

 が、


 「今日は、やたらと人が多いな…」


 町の方は、多くの人で賑わっていた。元々多かったが、今日は一層多い。


 「今日は、観光客等が多い日ですよ。」


 と、ショー。


 何でも、今日から大きな試合が行われるらしく、観光客も沢山駆けつけている上に、他国に出ていた選手も、試合のために戻って来ているとか。なので、何時もより人が多いのだ。よりにもよって、こんな時に…

 この中から探すのは、骨が折れるな…

 これは、闇雲に探してても、埒が明かないな。何か、当たりを付けないとな。


 「何処か、ディンが行きそうな所に、心当たりは無いかショー⁉」


 側のショーに訪ねた。


 「そうですね…あっ、そういえば…」


 何処か、心当たりがあるようだ。


 「この近くに川があるんですけど、ディンくん、そこによく行くって、前に言っていたような…」

 「川か…よし、そこに行ってみよう!」


 ダメ元で、俺等はその川の方に行った。

 川には、ほんの数分程で到着した。その川は、そこそこの広さがあり、川原もあった。


 「ココか。思ってたより広いな!」

 「ええ。この国の水源なので。向こう側に渡るには、あそこにある橋を…あっ!」

 

 説明の途中で、大声を上げるショー。


 「どうした、急に大声上げて⁉」

 「いました…」

 「えっ⁉…」

 「ディンくんですよ!ほら、アソコに!」


 ショーは川の上流の方を指さした。

 指の指す方には、橋が架かっていた。鉄骨ではなく、石造りの物だ。俗に言う、眼鏡橋っというやつだ。

 言う通り、そこにはディンがいた。


 「本当だ。しかし、何だってあんなところに…」


 そう言った直後、嫌な予感が走った。


 「まさか、アイツ…」


 そう言った直後、俺はディンの元に走った。

 走っている最中、


 「(早まんじゃねーぞ!)」


 と、何度も思った。

 そして、橋の入口に着いた。


 「はぁはぁ…ディンは…」

 「先程から動かず同じ所にいますよ!」


 と、ショーが言った。

 短い距離とはいえ全力で走ったので、息があがっている俺に対して、平然としているショー。

 それだけで、運動神経の差がよく現れている。普段からトレーニングを積んでいる彼と俺とでは、基礎体力からして違うのだろう。

 それはさておき、ディンはというと、


 「……」


 橋の上の中央で、ただ無言で空を眺めながら立っている。


 「何をしようとしているんだ?」


 等と、思っていたら、ディンは橋の欄干に近づき、欄干に手をやった。


 「ヤバい!」


 と叫ぶやいなや、俺はディンの元へ、


 「早まるな!」


 と、叫びながら駆け寄った。彼が、川に身投げすると思ったからだ。

 が、肝心のディンは、欄干に手をやった後、身投げするどころか、その場にしゃがみこんだ。


 「「へっ…」」


 俺とディンは、同時に声を漏らした。

 そして俺は勢いそのまま、欄干に突っ込んでしまった。当然、欄干も石で出来ている。なので、かなりの痛かった…

 しかも、その勢いで逆に俺の方が、橋から落ちそうになってしまった。


 「ヒーーーー‼」

 「危ない‼」

 

 落ちそうな俺の身体を、ディンがすかさず掴んだ。

 直ぐ様、ショーも駆け付けて来てくれた。2人がかりで俺を引き上げてくれたので、俺は何とか、落ちずにすんだのだった…


 「はぁ…はぁ…」

 「アンタは、家の店のお客さん!それに、先輩も!」

 「ディンくん…」

 「身投げを止めようとして、自分が落ちそうになるとはな…」

 「身投げ‼俺が⁉何のことだよ?」

 「⁉何のことって、思い詰めた顔で、しかも、欄干に手をやってたから…」

 「いや俺は、靴紐を結ぼうとしただけだよ…」

 「靴紐…」

 「そう。ほら!」


 と、靴紐を指差すディン。

 聞けば、靴紐がほどけているのに気付いたので、結ぼうと思って、より掛かるために、欄干に近寄ったとの事。

 何と、ただそれだけであった…

 

 「紛らわしい…人騒がせな…」

 「驚いたのはコッチのほうだよ!なんだって急に…」

 「ディンくん。君が思い詰めた顔で出ていったから、嫌な予感がして、追いかけてきたんだよ!」

 「先輩…そうでしたか…」


 ディンは俺とショーを、交互に見てから続けた。


 「何だか、誤解があったみたいですけど、俺はただ単に、気分転換に来ただけですよ⁉」

 「気分転換⁉」

 「そう、気分転換。よく来るんすよ、ココには!」


 その様子から見て、本当のようだ。


 「どうやら、俺の早とちりだったみたいだな…」


 本当に身投げすると思って、かなり焦った。が、違うと解ってか、急に力が抜け、どっと疲れが出た。

 しかしコレって、漫画とかでよくある話しだな。まさか、実際に体験するとは、夢にも思わなかった…

 そんな俺を見てディンは、


 「取り敢えず、場所を変えよう!」


 と言ってきた。断る理由もないので、合意した。

 俺等は、近くの公園に場所を移した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ