表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/185

体験

 カキーン!


 打撃音が、練習場に響いた。


 「おお、結構飛んだぞ!」

 「スゴいレオくん!」


 ココは、ブロウボール打者練習場。前にも言ったとおり、バッティングセンターのような施設だ。

 俺等はココで、レオにバッティングの体験をさせている。


 昨日の夜は、オヤジさんの定食屋を手伝ったお礼とばかりに、一晩厄介になった。

 そして今、当初の目的である、レオにスポーツを体験させる為、ココに来ている。


 ブロウボール打者練習場は、プロも練習に利用しているが基本的に、料金さえ払えば誰でも利用可能だ。

 因みにレオがいるのは、子供用のコースだ。

 こっちは、昨日みたいな投石機の様なものでなく、パチンコ(スリングショット)みたいに、ゴム動力で飛ばすシステムになっている。とはいえ、ゴムでもそこそこのスピードは出るの。


 練習を続けるレオ。

 最初こそは、空振りしてたが、直ぐにコツをつかみ、ボールをバットに当てられるようになった。


 「レオくん、筋いいみたいですね!」

 「ああ。元々、運動神経はいいからな!」


 と俺達が話していると、レオが打ったボールが、ホームランスペースに入った。


 「おっ、ホームランだ!」

 「わぁ。レオくん、景品もらえるみたいだよ!」

 「ん⁉」


 子供用コースのネットには、ホームランスペースというものがあり、そこに打ったボールが入ると、景品がもらえるという、システムになっている。


 「景品?何だ食いもんか?」

 「お前、それしかないのかよ…」

 「はは…ほら、こっちだよ!」


 景品を貰いに行くリリーナとレオ。

 待っている間、俺は何気なく外に目をやった。

 すると、


 「⁉アソコを歩いてんのは…」


 オヤジさんの息子のディンが、トボトボと歩いていた。何やら、元気なさげだ。

 俺等が起きる頃には既に、朝練で朝早くから出かけていったと、オヤジさんが言っていた。

 俺が声をかけようとするとディンは、


 「⁉」


 俺に気付くやいなや、急に方向転換し、一瞬止まったと思ったら、そのまま逃げるように立ち去ってしまった。

 

 「?どうしたんだ…」


 疑問をいだいていると、リリーナとレオが戻って来た。

 レオの手には、景品の菓子が握られており、既にかじられていた。


 「本当に、食物だったのか…」

 「ええ。」

 

 バクバク!


 リリーナの横で、美味そうに景品の菓子を食うレオ。

 まぁ、子供用のコースの景品だからな。菓子とか子供の喜びそうなヤツが無難だろうな。

 

 「そうだ。さっきそこを、ディンが歩いてたぞ!」

 「ディンさんがですか?」

 「ああ。ただ、何だか元気なさそうだったぞ。」

 「元気がですか?そういえば、昨日も帰ってきた時も、気分がすぐれないって言ってましたね⁉」

 「だな…それに…」


 先程、ディンが立ち去る姿を思い浮かべる。その様子に、俺はどこか違和感を感じていた。


 そうこうしている間に、利用の制限時間を迎えた。

 練習場を後にした俺等は、練習場の近くでやっている、観光客目当ての露店で早めの昼食を済ませた。

 それから、次はケイキュウを体験させようと、ケイキュウのスクールに足を運んだ。

 スクール。この国のケイキュウのチームが、未来のエース選手輩出のために、合同で運営している施設だ。他にも、観光客にケイキュウというスポーツを、よりよく知ってもらいたいという目的で、コーチ付きでレッスンもしてくれる(有料)。

 因みに、これらは全て、定食屋のオヤジさんが教えてくれた事だ。

 

 受付を済ませ後、施設の人にレオを預けた。

 勿論ココも、子供用コースだ。 

 その際、係の人に

 

 「保護者の方は、離れたところから、練習風景を観覧出来ますが、いかがなさいますか?」


 と聞かれたので、観覧を希望した。

 頑張っている姿を見たいという気持ちもあるが、


 「レオが何かしでかさないか不安だから」


 というのが、俺等の本音だ。

 で、肝心のレオはという、練習している姿が中々サマになっている。まるで、どこぞの少年サッカーマンガの主人公みたいだ。


 「楽しそうですねレオくん!」 

 「ああ。この調子なら、本当にこの道に進めるかもな!」

 「ですね!あっ、タイガーさん、あそこにいる人…」

 「ショーじゃないか!」


 昨夜、わざわざ俺等の元に謝罪に来た、ショーがいた。

 ただ、少し様子がおかしかった。何かを探している様に見えた。

 気になって彼の元に駆け寄った。

 俺等に気付き、簡単に挨拶を交わした後、先程の様子について訪ねた。


 「…それが、その…」


 最初は、言いにくそうにしていたが、リリーナが、


 「遠慮なさらないで下さい!」

 

 と言ってのが効いたのか、ショーが口を開いた。


 「実は、ディン君を探しているんです!」

 「ディンさんを…」

 「ええ。実は…」


 ショーは少し貯めてから続けた。

 

 「僕も先程聞いたんですが、ディン君、ウチのチームを急に退団してしまったそうなんです!」

 「た、退団‼」


 本当に急な事なので、つい、大声で叫んでしまった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ