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 俺とテツがマリーの店に戻ると、リリーナの姿は無かった。


 「おい、リリーナはどうした?」

 「明日早いからって、先に帰ったよ。そう伝えてって言ってたよ。」


 アレコレしててすっかり夜になっちまってる。考えてみりゃ俺も明日早いんだ。遅刻したらまた怒られちまう。


 「そんじゃなテツ、例の件よろしく!」

 「おう、任しときな!」


 そう言うと俺は帰路についた。

 俺が帰った後のマリーの店にて。


 「テツ、あんたまた飲んだね。さっきより酒臭いよ。」

 「ラーメン屋でゲンとばったり合っちまってな、愚痴を肴に盛り上がっちまぅたんだよ、ヒクッ!」

 「全く飲みすぎよ。ほら、水。」

 「サンキュー。」

 

 そう言ってテツはマリーが出したガラスのコップに入った水を一気に飲み干した。


 「ところでさっきタイガーが言ってた「例の件よろしく」って、なんの事だい?」

 「ああ、実はなタイガーからある物を作ってくれと頼まれたんだよ。」

 「ある物?」

 「これだよ。」


 そう言ってテツは懐から紙の束を取り出し、マリーに見せた。紙はノートのページを切り離した物で、ラーメン店で店長が使っているノートを頼んで提供してもらった物だ。それに様々な図と絵、そして汚い字で何やら色々と書き込まれている。それを見てマリーは、


 「何なんだい、これは?」

 「タイガーが言うには、これでガキの遊び道具らしい。」

 「遊び道具!これが?」

 「ああ、上手く行けば、人儲け出来るかもだってよ。」

 「こんな物で?いまいち信じらんないね。」

 「俺も半信半疑だが、どうせ最近鉄工所は開店休業に近いからな、ダメ元で付き合ってみようと思ってな。」

 「いや、もしかしたら億万長者かもよ。」

 「億万長者は言いすぎじゃねーか?」

 「いいや、あたしの店だってこの前まで行き詰まってたのに、彼のアイデアのおかげて盛り返せたんだから、あながち夢でも無いかも知んないよ⁉」

 「確かにな。しかし…あの兄ちゃん、本当何者なんだ?沢山の女客を引き付ける食物や、こんな妙な物のアイデアを沢山出したりと、普通とは思えねーよ。マリーもそう思はねーか?」

 「あたしは彼が何処の何者かなんてどうでもいいよ。彼のおかげて客足が増えたんだし。それよりも、あたしが気になるのはタイガーがリリーナの事どう思ってるかだよ。」

 「どう言う事だ、そりゃ?」

 「そのまんまだよ。実はあの2人、お似合いじゃないかと思ってんだよ、あたし。」

 「おいおいまた、余計なおせっかいする気か?」

 「余計で結構だよ。リリーナ、あの子も色々と苦労してるからね、何とか人並みでも幸せになってもらいたいんだよ。」

 「なる程な…さてと、そんじゃなそろそろ帰るぜ。」


 そう言うとテツは腰を上げた。


 「ああ、あたしも明日の仕込みしないとね。」

 「じゃあなマリー、また来るぜ。」

 「あいよ、ってちょっとテツ、待ちなよ。」

 

 店を出ようとしていたテツは急に呼び止められ、上半身をひねってマリーの方に向けた。


 「んー何だよ、何か用か?」

 「何かじゃないよ、そういやテツ、勘定まだ貰ってないよ。」


 マリーは掌を上にして、テツの方に向けた。


 「うっ…マリー…付けといてくれ。」


 テツは似合わない、猫なで声で答えた。


 「駄目!大の男が気持ち悪い声出してんじゃないよ。一体いくらツケが貯まってると思ってんだいアンタは。今日こそ払ってもらうよ。ほら!」


 マリーは、テツが今まで貯めてきたツケの伝票を、水戸黄門の印籠のごとくテツの顔に突きつけた。

 テツは土下座こそしないものの、冷や汗を流し、顔色を曇らせた。


 「頼むもう少しだけ、なあー。」

 「駄目なものは駄目!」


 そんな2人のやり取りが行われる中、ブラウンタウンの夜は更けていくのだった。



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