シップス公国
審査を通った俺等は、国内の馬車乗り場で降りた。
他の乗客も全員だ。
「本日は、ご利用ありがとうございやした。またのご利用をお待ちしとりやす!」
「お疲れ様でした!」
「ども!」
俺等は、御者のおじさんと簡単に挨拶を交わした。
「どうも!」
「またあったら、その時もよろしく!」
「へぇどうも!」
他の乗客も挨拶を交わしている。
それから俺等は、後の方に目をやり、到着した国を見渡した。
「へぇ、随分と立派な国だな!」
「ですね!」
俺達が来たこの国。
名前は「シップス公国」という。
因みに、王国と公国。読みはよく似ているこの2つの違いは、
王国は国王、つまり王様がおさめている国のこと。
対して公国とは、貴族を君主として有する国のこと。
早い話が、国をおさめている人の違いだ。
なので、ここシップス公国は、貴族階級の人物がおさめている。
そしてここシップス公国は、前にも言ったとおり、この大陸でも随一となる、スポーツが盛んな国だ。
一口にスポーツと言っても、様々な種類があるが、この国で一位二位を争う人気スポーツは、ブロウボールとケイキュウという、元の世界の野球・サッカーに似たものだ。やはり、コッチの世界においてもその2つが、人気の筆頭のようだ。
他にも、水泳や陸上競技なども人気らしい。
と、説明はさて置き、
「タイガーさん、私達も行きましょう!」
「えっ⁉あぁ、そうだな…」
気付は、一緒に馬車に乗っていた人達は、もう何処にもいなかった。後には、俺等3人と、馬車の点検と内部を掃除している、御者のおじさんだけだった。
「よし、一先ずアチコチ見て回ろう!」
「はい。ほら、レオくんも行くよ!」
「ん!」
俺等は乗り場を後にし、町の方に向かって歩き出した。
「うぉー、スゲーな…」
「ええ、町中スポーツ1色ですね…」
流石、スポーツが盛んな国だ。
右を見ても、左を見ても、スポーツ関連の施設と店だらけだった。
スポーツに使う物を取り扱っている店がアチコチにある。スポーツウェアや道具の専門店に、武道具店・トレーニングジムみたいなとこもある。
バァーン!
カッキーン‼
何やら大きな音がした。
「何の音だ?」
「アソコからしたみたいですよ⁉」
言いながら、リリーナが指差す。
そっちに目をやるとそこには、何やらバッティングセンターのような施設が。中には複数人の人が両サイドにいる。
「よーし、次!」
リーダーらしき男が言うと彼等は、投石機のような装置をセッティングし始めた。そして、くぼんだ所に野球ボールみたいなモノをセットした。
「セット完了です!」
「コッチも!」
「同じく!」
「よし。ではいきますよ⁉」
リーダーらしき男が、反対側にいる客達に手を振りながら叫んだ。それに対して、バットらしき棒を持った客達は次々と手を上げてそれに返した。全員の手が上がったのを確認し、
「よし発射!」
リーダーらしき男が叫ぶと、投石機みたいな装置のレバーを一斉に引く。
すると、
バァーン!
と、先程と同じ大音がし、ボールを凄まじい勢いで客達目がけ飛ばした。
そしてそれを、バット?で打ち返す客達(勿論、空振りの人もいる)。
「コレの音か…」
「タイガーさん、アソコに看板がありますよ!」
「ん~、何なに…「ブロウボール打者練習場」⁉…」
みたいではなく、本当にバッティングセンター的な施設みたいだ。投石機みたいなのを使うことで、人よりも速くボールを放てるというわけか。確かに、特訓にはなるだろう。それにしたって、少々大がかり過ぎる気もするがな…
「何だが危ないと思いますけど…」
リリーナも同じ様な心境らしい。
それ以降も、町中を見て回った。
何処もかしくも、本当にスポーツ関連のモノが大多数だ。普通の青果店や衣類店・雑貨屋等もあるにはあるが、はっきり言って申し訳程度にしかない。
「本当に、スポーツが盛んなんだな…」
「ですね…」
「腹減ったー!」
と藪から棒にレオが叫ぶ。
本当に相変わらずだ。コイツのために、この国に来たんだが…まあ確かに、沢山歩いて俺も腹が減ってきたところだ。なので近くにあった飯屋に入った。
席に座り、メニューを見ると、
・減量したければコレ、野菜盛り沢山コース
・脂を抜き、さっぱりと仕上げた鶏料理コース
・筋肉を作りたければコレ、大豆たっぷり沢山コース
・あっさりと動物の栄養素を取れる、魚料理コース
等といった、ラインナップだった。
「変わったメニューですね…」
「だな…」
疑問を抱きながらも、レオが肉を希望したので、鶏料理コースを頼んだ。
少し待って、運ばれて来た料理を食べた。
「…なんだかな…」
「美味しいんですけど…」
「味薄!量も少ねー!」
遠慮なく文句を言うレオ。
確かに薄味で、量も少なめだ。ついでに、本当に脂っぽさが感じられない。
「当たり前よ!」
とウエイトレスが話しかけてきた。レオのグチが聞こえたらしい。
「いい身体を作るために、お医者さんの助言を参考にして、考えられたメニューなんだから!余計な調味料や脂は、一切省いてるのよ!」
とのこと。よく見れば、他の客は皆、スポーツマンタイプの人ばかりだった。
「マジかよ…」
この国は飯屋すらも、スポーツ思考よりだったのだ。
「エライとこに来ちまったな…」
と、この国に来たのを、少し後悔しかけた。