検問所2
国に入る者達の審査をする兵士達。入国者達が何列かに別れ、それぞれ兵士が審査をしている。
他所の列の様子を見た。
物資の運搬中の馬車の御者が出した書類を確認し、馬車の物資を一通り見渡した後、
「よし。通ってよし!」
兵士が書類を返しながら言う。
御者も軽く頭を下げながら書類を受け取ると、入国税を払い門を通っていく。
他列の、大荷物を持った3人組と兵士。
「3名ですね、書類を!」
「はい。」
3人のうち、代表一人が纏めて書類を渡す。
「…確認しました。それと、荷物を確認させてもらえますか⁉」
「どうぞ」
手早く3人の大荷物の中を確認し、
「ご協力ありがとうございました。どうぞお通り下さい!」
これまた軽く頭を下げ、入国していく3人組と言葉遣いが丁寧な兵士。
書類の確認の後、危険物等を持ち込んでいないか、手早く荷物の確認をする。
審査はこの様な感じだ。兵士それぞれ、言葉遣いが異なるので、そこに各個人の人柄が出ている。
一方、俺等の馬車。
「乗り合いの馬車か。では、まずは御者から!」
「ヘイ!」
初めに、御者のおじさんの審査から始まった。
兵士は書類に目を通しながら、
「⁉もしかして、先週も来なかったかい?強い雨が振っていた日に。定員オーバーなくらい乗ってた!」
「へぇ、来やした。その日なら覚えてやす。急な雨で、乗りたいって客が押し寄せて!」
「大変だったろ!ギャーギャーと叫んでうるさかったんで、よーく覚えてるよ。」
「へぇ、半ば強引に乗ったのに、狭い狭いって文句言われましたよ…」
等と、世間話をしだした。しながらも、審査と荷物確認の方はしっかりとしている。こっちの列の兵士は、話し好きでフレンドリーな性格のようだ。
おじさんが終わると、今度は俺達乗客の番だ。
「2人は夫婦かな⁉」
「ええ、この国に息子夫婦が住んでまして…」
何でも、夫婦は息子夫婦に会いに来たらしい。
この夫婦は、問題なく審査を終えた。
次の若い女性。
「何だ、この国の生まれなのか?」
「ええ、都合で離れてたんだけど、色々あって今日、戻ってきたの!」
「色々ね…」
色々というところが気になったみたいだが、書類と手荷物に不審な点はなかったので、通った。
国によって違うが、入国審査の厳しさはまちまちだ。入国の理由や目的を、とことん問い詰める国もあるらしいが、ココは比較的緩やかで、理由は特に問わず、書類・荷物に異常が無ければOKのようだ。大阪の、某映画のテーマパーク並だ。
そして俺達の番だ。俺等の書類に目をやり兵士は、
「1人名字が違うけど、関係は?」
「友達です。休みを利用して、各地を旅行してるんです。彼の、弟くんも一緒にです!ねっ、レオくん!」
「ん!」
「二人暮らしで、置いていくわけには行かないんで、連れてきたんすよ!」
「成る程…」
兵士は、特に疑っている様子はなかった。
この世界にも、名字は存在する。異世界物で、名字を持つのは貴族以上の身分の者だけ、というパターンが偶にあるが、前の世界とこの世界では特にそういうことはない。
リリーナのフルネームは「リリーナ・スプリングス」。
俺の方は、「タイガー・ゴールデン」だ。俺の名字は、文字通り書類上、名字が必要だったので、元の名字「金田」から作ったものだ。
因みに、レオは俺の弟という事にしてある。なので名字も同じだ。
それは置いといて、レオの書類を使うのは初めてだ。
審査を通るだろうか…
顔には出してないが、俺もリリーナも、内心スゲー緊張している。下手したら、最悪檻の中もありうるが、果たして…
「…よし。手荷物を拝見するぞ!」
「(ホッ…)」
大丈夫だった。それから軽く手荷物の確認を済ませた。
「全員問題なし。行っていいぞ!」
無事に入国審査を通過できた。
それから、入国料を御者のおじさんが集め、代表して自身の分と一緒に、纏めて払った。
無事に通過できたと思って、ホッとしてた。
そこへ、
「あっ、そうだ‼」
「‼」
と俺等の審査をした兵士が大声をあげた。
思わず、皆が皆、ビックリした。
「(何だ、まさか今更怪しまれたか?…)」
内心焦っていると、兵士は、
「あぁ、驚かせてすまない。いや何、大事な事を言うのを忘れていたもんで。」
「大事な事?…」
それから兵士は、徐ろに俺等に向かって敬礼して、
「諸君らを歓迎する!素敵な時間を過ごしてくれ!」
と言った。
それを聞き俺等は、何ともほっこりした気分なった。
そんな兵士に俺等は、軽く手を振って返したのだった。
唐突に名字が出てきましたが、かなり前から考えてたんですが、中々出す機会がなかったので、ココで出しました。
尚、タイガーの名字は、
金田↓
金=ゴールド
+
田=デン
と、こんな感じです。
因みに、ホリィ達の名字も設定上ありますが、それはまた今度で。