大陸
朝方の港町。コリートの船が停泊している。
「そんじゃあな。俺等は直ぐに出港すっから、ここでお別れだ!」
「もう行かれるんですか?」
「ああ、次の仕事は別のトコでな。ここには、物資を摘み為に寄っただけだからな。摘み次第、出港だ。」
「そうか。短い間だったが、世話になったな船長!」
「お世話になりました。ほら、レオくんも!」
「ん、船の飯美味かったぜ!」
「違うでしょ、もう…」
「ははは、そう言ってくれっと嬉しいぜ!」
「この先も、気を付けて行けよ!」
「アンタこそ、飲み過ぎんなよ!」
「ハハハ!それはちと、難しいな!」
ココはジョウの店がある港町。
約束通り、コリート等にココまで送ってもらった。コリート等は、次の仕事があるので、彼等ともいよいよお別れだ。
今いるのは、船を停めている停泊所。コリートを始め、メットやゴンザレス達と別れの挨拶をしている。
そこへ、
「お~い、オメー等!」
「今帰ったの?」
「あっ、ミチヒコさんにファンさん!」
ジョウの店の2人が来た。またまた、港に買い出しに来ていたらしい。魚河岸と同じで、ここいらの店は、朝早くからやっているのだ(働いていた時の情報)。
2人と、簡単に挨拶をかわす。
「よかったら、店に寄ってかないか?俺等も、買い出し終わって、丁度戻るとこだ!」
「もちろん。どっちみち、店に顔出すつもりだったしな!」
元々、土産持って行くつもりだったので、このまま店に向かうこととした。
「3人共、元気でな!」
「ゲンギデナ!ゲンギデナ!」
「「アバヨー!」」
コリートと、声まねするパロ。メットやゴンザレス等船員達も、見えなくなるまで手を振って見送ってくれていた。
彼等と別れの、ジョウの店に。
今はまだ準備中。店員達がアクセクと動いている。
店内の水槽内には、例のクラゲが元気に漂っている。
「おや、皆さん!お久しぶりです!」
「ああ。島の土産持ってきたんだ。皆で食ってくれ!」
「おやおや、ご丁寧に。まぁ、お茶でも飲んでいって下さい。」
こうして、店でジョウ達と、土産の菓子をお茶請けに、土産話に花を咲かせた。
暫くして、
「さてと。もうすぐ開店時間だし、そろそろ行くよ!」
「もうそんな時間ですか。時間が経つのは早いな…」
「ところであなた達、次はどこ行くの?」
空になったカップを片付けながら、ファンが聞いてきたので、答えた。
「実は、北の方に行ってみようと思ってるんだ。」
「北の方に⁉そっちって確か…」
「そう。大陸一、スポーツが盛んな国だ!」
今更ながら説明すると、俺等のいるのは、元の世界のアメリカ大陸位の広さの大陸だ。元いたブラウンタウンを始め、これまでの旅で訪れた町や、レオのいた山も、大陸の極一部分に過ぎないのだ。
で、その大陸では、各地で文化風習が異なったりしている。ブラウンタウンのような牧畜や農業をしている所もあれば、今いるココみたいに海があれば、漁業をしているとこもあるし、森林が多ければ林業をしている。まぁ、当然といえば当然だし、自然といえば自然だけどな。
で、肝心なのはここからだ。そんな大陸の中で、他とは違った特色の国が、チラホラだがあるのだ。
その内の1つが、次に行く予定の国だ。
何故かは解らないが、そこでは大陸一、スポーツが盛んなのだ。この世界にもスポーツはある。同じとは言えないが、野球やサッカーに近いモノが特に人気らしい。他にも、テニスやバスケに値するモノも。ブラウンタウンには、あまり浸透してなかったが…
「あの国に…でも何故、あそこにしたんです?」
「そうよ。あなた達、スポーツにはあまり関心ないんでしょう?」
確かに、俺は運動はあまり得意じゃないし、リリーナもインドア派で運動は苦手だ。
レオは運動神経はいいが、食うことの方が好きだ。
それなのに、何故行くのかと言うと…
「それは…」
「あっ、レオくん!また!」
突然、リリーナが大声をあげた。見るとレオがジョウ達に出した土産以外の物にまで、手を付けていた。
「それは、ケティ達に買ったやつだって言ったでしょう‼もう…」
「またか…相変わらず、スゴイ食い気だな…」
呆れ気味に言うミチヒコ。
「ああ。だから、例の国に行こうと思ってな!」
「だから?」
そう。レオの有り余ったエネルギーを、そっちに向けさせようと思ったのだ。何かしらのスポーツにのめり込めば、才能が開花する可能性もある。
それに、食う以外の趣味を持てれば、今みたいな食い意地の悪さも改善するかもしれない。そうリリーナと話して、決めたのだ。
その様に、ジョウ等に説明した。
が、
「それがダメなら…別の食いモンね~かな?」
と、店の厨房に行こうとするレオ。
「ああ、そっちには仕込んだ食材が!」
「ダメー、レオくん!」
かつての事がフラッシュバックしたのか、血相変えてレオを静止するリリーナとジョウ。
そんな光景を見て、
「出来そうか?」
「大丈夫なの?」
と、聞いてくるミチヒコとファン。
それに対して俺は、
「…わからん…」
と、力無く答えた。早くも幸先が不安になったのだった。