宴会
会場に入ると、コリートの言って通り、既に宴会は始まっていた。
コリートの船の乗組員達の姿がアチラコチラで見られる。皆、知人らしき人達と、仲良く飲み食いし会話に華を咲かせている。
「お~い、タイガー!リリーナ!」
「お兄ちゃーん!お姉ちゃーん!」
「2人共、こっちよ!」
「おお、レオにローラ。リサさんも!」
レオとローラ・リサは既に会場内にいた。
レオは大盛りの、料理の乗った皿を片手に持ち、勢い良く食ってる。
ローラも甘いオヤツを上品に食べている。が、今までのパターンからして、既にたらふく食べた後だろう…
この2人の食いっぷりは、ココまで来ると、完全に見慣れた光景だよ。
側のリサは、ジュースの入ったグラスを片手に持っいる。リサは普段から、そんなに沢山食べる方ではないらしい。コリートも人並みには食う方とのこと。そんな2人から、何だってこんな娘が産まれてきたんだろうか?何とも不思議な話だな…
等と考えてても仕方ない。俺等も宴会を楽しむこととした。
宴会は、バイキングスタイルだ。皆が皆、好きな品々を選んで、皿によそって食べる。料理は会場の端の、調理スペースで料理人達が調理し、出来立てを提供してくれる。
このスタイルは、俺的にも有り難かった。バイキングなら、マナーとか気にする必要性は殆ど無いからだ。気兼ねなく楽しめる。
肉のコーナーにて。
香ばしい匂いが、辺りに充満している。
「お~肉の焼ける、いい匂いだな!」
「よっ、タイガー!」
端の調理スペースにいる料理人達。その中の1人が、船のコック、ゴンザレスだった。
船での姿と違い、小綺麗な調理着を着て、コック帽を冠っている。
「何だよアンタも作る側かよ⁉」
「ハハハ、俺は作ってる方が、性に合ってるんでな!それはそれとして、食うか?」
「おうよ!ステーキを頼むぜ!」
「焼き加減は?」
「ミディアムで頼む。」
「あいよ!」
ゴンザレスの焼いたステーキ。焼き加減も味も、共に1級品だった。1切れ1切れ味わ出て食った。
そして最後の1切れにフォークを伸ばす。
すると!
「もらい!」
レオが一瞬の内に、自身のフォークを最後の1切れを突き刺し、盗って行った。獲物を奪い取る獣の様に鮮やかで、素早い早業だった。
「あっレオ!お前また…!」
叫び切る前に、レオのヤツは、人混みの中へと消えて行ってしまった。
本当に、しょうがないやつだな…
まぁ、宴会を楽しんてるみたいだし、良しとするかな…
「ん~甘~い!♡」
リリーナも、デザートのコーナーで、好物の甘い物に舌鼓を打っている。
横にはリサとローラもおり、おしゃべりしながらデザート類を美味そうに食べている。
他の所でも、ケビンやメットが楽しそうにやっている。
酒場の店主のスティーブは、酒を飲まない俺は行かないが、酒のコーナーでカクテルを作っている。
皆思い思いに、宴会を楽しんでいる。まぁ宴会というより、パーティと言ったら方が良さそうだが、細かい事は気にしない。
そんな最中、進行役のような人物が現れ、皆の視線を集めた。そして、
「それでは、本日のショー・タイム‼」
と言うやいなや、ゴツい男が数名現れた。
彼等の姿は、先程入り口付近見た、オッタマゲ大王の姿に似ていた。
但しコチラは槍でなく、長さ1m位の棒を待っている。
そして徐ろに、ステージ端から小さめの松明の様な物を持った、アシスタントらしき女性が出て来て、彼等の棒の両端に火を付けると、そのまま退散した。
そして彼等は、両端に火の付いた棒を豪快に回しだした。気付はステージの端に太鼓等の打楽器を演奏している人がいた。彼等の演奏に合わせ、踊る男達。
それを見て俺は、
「そうだ。そうだよ、コレだコレ‼」
俺は何か1つ、忘れてるような気がしていた。そして今、気が付いた。
そう俺は、ファイヤーダンスを見たかったのだ。俺はハワイと言ったら、白い砂浜と並んで、ファイヤーダンス!というイメージなのだ。
昔テレビで見てから、本場のファイヤーダンスを、1度でいいから生で見てみたいと思っていた。
それがこうして、叶ったのだ。なので、感動もひとしおだった。
ステージ上で繰り広げられる豪快なファイヤーダンス。会場も大盛り上がりだった。
食うのに一生懸命なレオ1人を除いて…
ダンスのおかげもあって、宴会は大いに盛り上がった。おかげて島での最後の夜を皆が思う存分、満喫することが出来たのだった。
そして翌朝、島を離れる時が訪れた。