完成品
それから俺等は、ケビンの家のリビングで、皆で朝食をとっている。
メニューは、パンとサラダにスープ。それから牛乳といったものだ。どうやらここのような南国でも、食事のメニューは、他の所と殆ど変わりないらしい。
ただサラダの中には、マンゴーやバイナップルみたいなな、南国のフルーツが何種類か入っている。なので、そこは南国らしかった。
「へー、リサさんと船長さん、お二人にそんな馴れ初めがあったんですか⁉」
「ええ、この人ったら、柄にもなくカッコつけちゃって、思わず笑っちゃったわ!」
「よせよリサ!今となっては、スゲー恥じーと思ってんだからよ!」
「ははは!(黒歴史ってやつか…)」
そんな感じで、他愛のない話をしながら、和気あいあいと食べている。
一方で、
ガッガッガッ!
カチャカチャ!
レオとローラは、食べるのに集中している。
レオは何時ものようにがっつくように食ってる。対してローラは、バーベキューの時と同じく、姿勢良く食べている。
最も2人共、大人の俺等よりも大量に食っているのは同じだけどな…
そんな感じで俺は、皆と話しながらも、そんな2人に目をやっていた。
ふと気づくと、ケビンの姿がなかった。
「あれケビンは?」
「ありゃ、いつの間に…」
「何処に行ったのかしら?」
「トイレですかね?」
他の皆も、気づいてなかって様だ。
しかし、ただ一人、
「ケビンおじさんなら、素早く食べ終えたらまた、庭の方に行っちゃったよ!」
と、目の前の料理を食べ終えたローラが、口元を拭きながら教えてくれた。
「忙しないな…」
「朝食ぐらいゆっくりだべればいいのに…」
「そういやぁ、庭で何かをせっせと作ってたぞ!」
「何かって何です?」
「さぁな、聞いても「出来てからのお楽しみだ!」って言って、教えてくれなかったんだよ!」
「まぁ検索しないでおこうぜ。アイツは昔っから、アレコレと言われるのと、作業の邪魔をされるのが嫌いだったからよ!」
「だな。まぁ、完成したら教えてくれるだろうし、今はそっとしておう!」
てなわけで、検索しないでおくことにした。
それから朝食が終わって。
リサとリリーナは、台所で洗い物をしている。
ローラとレオは、絵本を読んでいる。正確には、ローラがレオに、絵本を読み聞かせしているのだ。レオはまだ字が余り読めないのだ。字は俺とリリーナで教えてはいるが、まだまだ不十分で時間がかかりそうだ。
コリートは、パロにエサの豆を与えている。
俺はそんな皆の姿を見ながら、
「(さて、今日は何すっかな?…)」
今日の計画を考えていた。
そこへ、
「出来だぜ!」
と威勢のいい大声をあげながら、ケビンが入って来た。
「出来たって、何がだ?」
「コレだ!」
そう言ってケビンは、完成した品をテーブルの上に置いた。
それは、
「これって、リバーシのコマと盤か?」
「そうだ!」
そうケビンが作っていた物。それは、リバーシのコマと盤だった。しかし、ケビンが作ったのは、全くクオリティーが違っていた。
俺が用意したコマは、元は酒瓶のフタのコルクを薄く切って色塗ったの物なので、大きさや厚みにバラツキがあった。それに、横から見ると、斜めに傾いている物もあった。
それに比べてケビンの作品は、大きさ・厚み共に粗均一でゲームがしやすい。何より、角も磨かれ手触りが良かった。
盤もコマに合わせて、作られている。
木製であることを除けば、元の世界で市販されているのと遜色は無かった。
「作ってたのって、コレか⁉」
「ああ、昨夜リサちゃんとローラちゃんがしているのを見てな。 そん時、何だか少しやりづらそうだったんでな。で、見かねて作ってみたんだよ!」
俺の用意したのは先程も述べたように、大きさはバラバラで、つかみにくいのもいくつかある。しかも、何度も使っていたので、角が欠けたり割れてるのもいくつかある。盤も、チェスの物を使いまわしている。なので、全体的に無骨な代物だ。
対して、
「わ~、コマひっくり返しやすい!」
と、ローラも絶賛している。確かに、やるんなら使いやすい方がいいだろう。
喜ぶローラを見て、
「それじゃあコレは、もう要らないよな…」
と、お役御免となった、自家製リバーシセットを手にしながら寂しげに言った。
が、ローラは、
「ううん、そんな事ないよお兄ちゃん!」
ローラが言って来た。
「だって折角、お兄ちゃんとお姉ちゃんが、用意してくれてんだもん。それはそれで、味があったし!」
味があるって、こんな小さい子が使うのか…
俺が些細な疑問を抱きながらも、ローラは続けた。
「だから、それはあたしの宝物として大事に取っとくよ!」
「そうだぞ兄ちゃんよ。俺もやってみたが、このゲームなかなかおもしれーぜ!俺のカンだとな、こりゃあ国々に広まるし、後世にも残っぜ!そうなりゃ、ルーツとなるコレは、歴史的価値がつくかもな!」
と言うケビン。
「ははは、大げさな…まぁ歴史的かは兎も角、そんなに気に入ってくれて、大事にしてくれるなら、作ったかいがあったよ。ありがとうローラ!」
「こちらこそ、ありがとうお兄ちゃん!」
家内がホッコリとした雰囲気に包まれたのだった。
因みに、この時は大げさと言ったが、後にそれは現実のものとなるのだった。そのことを、その時の俺は愚か、その場の皆、予想していなかった。