夜の浜辺
バーベキューを終えて、俺等はケビンの家に戻ってきた。
ガシガシガシ!!
「ふ~、なかなか落ちねーな…」
俺は今、ケビンの家の庭でバーベキューで使った、バーベキューコンロと網を洗っている。デカいので台所では無理なので、庭先でやっている。
が、焦げ付き等がなかなか落ちず、少々苦戦している。
バーベキューコンロは、1度使うだけでも結構汚れると聞いたことあるが、本当だったな。そりゃあ、肉汁や油等が飛び散りまくるんだから、当然と言えば当然か。
「どうだ、調子の方は⁉」
そんな最中、コリートが話しかけてきた。
手には、酒の入ったグラスを持っている。向こうでも飲んでたのに、帰って早々にまた飲むのかよ…
「焦げ付きが落ちづらいな…」
「そうか。まぁ、頑張ってくれや!」
それだけ言うと、引っ込んでいった。アンタ、何しに来たんだよ…
その後、苦労して洗い、できる限りキレイにした。それを風通しのいい所に置いて、乾燥させた。
家の中に入ると、リリーナとリサが、台所でおしゃべりしながら、使った食器類を洗っていた。
俺がバーベキューコンロを洗った事を伝える。
「お疲れ様です!」
「今お茶入れるわね、タイガーくん!」
「お構いなく!」
それから2人も洗い物を終え、一緒に茶を飲んだ。
「いやー、片付けは疲れるけど、結構楽しかったなリリーナ!」
「はい!私こういうのしたことなかったんで、楽しかったです!」
インドア派のリリーナには、こういったアウトドア的な物は新鮮なんだろうな。まあ俺も、似たようなものだけどな。
「ところで、レオとローラは?」
「あの子達なら、もう寝てるわよ!お腹いっぱい食べて、沢山遊んだから、疲れたみたい。」
リサが寝室を指差す。中を覗くと、2人共スヤスヤと眠っていた。子供らしいカワイイ寝顔をしている。寝ている時は2人共、普通の子供なんだよな。とても、食欲の化身みたいには見えない。
音を立てないように、そっと戸を締めて、俺は2人のいるリビングに戻った。それから3人で、他愛のない会話をした。
「そう言えば、船長とケビンは?姿が見えないけど…」
「うちの人は、また飲みに行ったわよ!ケビンさんは、それの付き添い…酔い潰れた時を考えてね!」
「まだ飲むんですか⁉山でも結構飲んでましたよ⁉」
「そういう人なのよ…」
呆れたように言うリサだった。
一方の俺等は、
「それはさて置き、俺等はどうするリリーナ⁉寝るにはちと早いぞ!」
正確な時間はわからないが、大体7時過ぎ位だ。
「そうですね…あっ、だったら、浜辺を散歩しに行きませんか?夜の浜辺って、昼と違った雰囲気がありますし!」
「そうだな…そうするか!」
「いいじゃない。行ってらっしゃい、2人で!」
「リサさんは?」
「留守番してるは。子供達は私が見てるから、気にせず行ってきて!」
手なわけで、お言葉に甘え、レオ達の事はリサに任せて、俺とリリーナは夜の浜辺へとくり出した。
「わ~!星がキレイ!」
サンダルで砂浜に音を奏でるように歩きながら、率直な感想を口にするリリーナ。
夜の浜辺から見える夜空。高層ビル等の類の無いこの世界の星空は、地球とは比べ物にならない位美しいが、ココはまた格別だった。
「そうだな!おっ、流れ星だ!あっ、消えちまった…こんな短い時間で3回は多いな…」
「3回って何のことです?」
「何って、願い事だよ!」
「⁉願い事…ですか?…」
キョトンとするリリーナ。
どうやら、流れ星が消えないうちに3回願い事をすると叶うってヤツを知らないようだ。そもそも、この世界には無いのかもな…
俺はそれをリリーナに説明した。
「へー、なかなかロマンチックですね!」
「まぁ、単なる迷信けどな!」
「次に、流れ星が流れたら、やってみます!」
と意気込むリリーナ。
「まあ見ようと思っても、なかなか見れるものじゃないし、それにほんの一瞬だからな…」
「でも夢があっていいじゃないですか!」
「まあな!」
それから暫く、散歩を続けた。
その間リリーナは、星空に注意を向けていたが、流れ星はお目にかかれなかった。
「そういや、スティーブの酒場って、この近くだったな!」
「スティーブさんって…ああ、メットさん達のお友達の!」
「そうだ!」
「そういえば、また何か、アドバイスをされたんでしたっけ⁉詳しくはまだ、聞いてませんでしたよね⁉」
「ああ、そうだったな!」
「どんなアドバイスですか?」
「そうだな…見た方が早いだろう!」
と言い、俺等は例の酒場に向かった。
酒場の前に着く。店内からは、複数人分の人の声が聞こえてくる。どうやら、それなりに流行ってるようだ。
「外観は、特に代わり映えはないですけど…何処が普通と違うんです?」
「それは…ほら、そこの窓から中を覗いてみな!」
俺に言われ、リリーナは窓から中を覗く。
「どうだリリーナ?」
「どうって…皆さん楽しそうにお酒飲まれてますが、特に変わったところは…」
まだ気付かない様子のリリーナ。
「もっとよく見てみな!」
「…あれ?そう言えば…」
どうやら気付いたようだ。
「何か気付いたか⁉」
「はい!」
「何に気付いた?」
「皆さん…」
少し貯めてからリリーナは答えた。
「座って飲まれてる人がおられません!食べ物を口にしてる人も、立ったまま食べられてます!いえ、そもそも…椅子が見当たりませんよ!」
「正解だ‼」
そう俺がしたアドバイス。それは…
椅子を無くし、立ち専門にすることだった。