リサ&ケビン
コリートの奥さんでローラの母親、名前はリサ。
腰近くまで伸びた髪。スラッとした体型には、ロングスカートがこれまたよく似合う。ローラのスカートがよく似合うのは、彼女に似たからだろう。
見れば、目元や口元などがよく似ている。
女の子は父親に似ると言うが、ローラは母親の方に似たのだろう。
それはさておき、今コリートの友人宅の一室では、リサによる、コリートとローラへのお説教タイムとなっている。
理由は言わずもがな、コリートは飲み過ぎと調子に乗っていた件、ローラは勝手に船に乗っていなくたなったことでだ。
窓やドアを締め切っているので、声はハッキリとは聞こえないが、激しいものになっているのはわかる。
離れていても、異様な気を感じる程だ。
「…船長さんとローラちゃん、大丈夫でしょうか?…」
リリーナが出された茶の入ったカップを両手で持ちながら、コリート達のいる部屋を眺めている。
2人が気になって、仕方がないようだ。
「まぁ、取って食われるわけじゃないし、大丈夫だろう!」
と、俺は同じく出された茶をすすりながら答えた。
サクサク!サクッ♪
俺の隣では、レオがお茶請けとして出されたクッキーを、貪るように食っていた。
「そうそう、あの夫婦は新婚の頃からあんな感じだ。慣れっこってやつかな⁉心配はいらんよ!」
と言うのは、コリートの友人だ。
名をケビンと言い、大工をしている。昔は船大工をしていた頃もあり、何を隠そう、コリートの船である俺様号の製造にも関わっているらしい。
コリートとは、彼が見習いの船員の頃からの付き合いで、同じくして彼も、大工の見習いをしていたという。
で今俺等は、ケビンからコリートの昔話を聞いている。
「…で、コリートとはよく、互いに上からドヤサれた時に、グチをこぼし合ってたもんだ。」
「へーそうなんですか!」
「ああ、アイツは見習いのくせに、気に入らないことがあると、上に突っ掛かって行ったからな!」
「ハハ、船長らしいな!」
「そんなアイツも、今や立派に船長やってんだから、たいしたもんだぜ!」
と、ケビンは茶をすすりながら、お茶請けのクッキーを口に運んでいる。
コリートと違い、ケビンは下戸で酒は1滴も飲めないらしい。
ピエールと同じだ。
それからまもなく、説教タイムも終わったらしく、コリート・ローラ・リサの親子3人が部屋から出てきた。
「ふ~、ケビンさん、お部屋お借りしました!」
「なーに構わねーよ、リサちゃん!どうせ、使ってない空き部屋だ!」
簡単な会話を交わしたリサとケビン。
それから、リサに続く形で、コリートとローラが出てきた。
「「……」」
相当絞られたらしい、2人共げっそりしている。
「ほら、2人共しゃきっとしなさい!」
と、姿勢を正させるリサ。
それから席に座った親子。
「全く…あっ、申し遅れました!コリートの妻で、ローラの母のリサと申します!」
「あっどうも、タイガーです!」
「リリーナです。そしてこの子はレオくんです!」
「ん!」
遅ればせながら、挨拶を交わした。
「夫から聞きました。急な誘いでご迷惑じゃなかったでしょうか?」
「いやいや別に、強引に誘われた訳じゃないんで…」
「そうですよ、急ぎの旅でもないですから!」
「そうそう、旨いモン食えるんならドコでも行くぜ!」
「レオくん!」
レオを諫めるリリーナ。
もう何度目の光景だろうか…
それからリサがいろんな菓子を出し、新たに紅茶を入れたことで、ティーパーティ状態となり、会話に花を咲かせた。
俺等のこれまでの旅の話。
コリート親子の思い出話。
コリート・ケビンの過去話 等などだ。
話は結構盛り上がった。
しょげていたローラも、今は満面の笑みでレオと一緒に、テーブルに並んだ菓子を食べている。
「今鳴いた烏がもう笑う」とはこのことだな。
和やかな雰囲気が続いた。
が、暫くすると、
「特にこのシーン!胸が熱くなったものよ!」
「あぁ、分かります!その部分、何度も読み返しましたよ!」
「でしょー!」
リリーナとリサ、周りを蚊帳の外状態にし、2人の世界に入り浸っている。言葉遣いも、親しげになってる。
どうやら、リサも本好きらしく、フームの時と同じく、意気投合している。
本好き結構いるんだな。まぁ、娯楽と言えるものが限られてるこの世界なら、不思議ではないかな…
「コナル・クリスティア先生の新作も面白かったですよね!」
リリーナが何時ぞや買った本を取り出して見せた。
「あっそれ、最新巻⁉実はまだなの…私の住んでるとこ、新刊本入ってくるの遅くて…」
「よかったら、お貸ししましょうか?」
「えっ、いいの⁉」
「勿論!どうぞ遠慮なく!減るものでもありませんし!」
「わぁーありがとう、リリーナちゃん!」
完全に俺等の事忘れてるな…
見ればレオとローラは、仲良くお菓子食ってるし、コリートもケビンと駄弁っている。
俺1人だけ、取り残されたようになってしまった…
「…気晴らしに、ちょいとこの辺の散策でもして来るか!」
俺は1人ケビンの家を出て、辺りを歩き出した。