表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/184

ハイワ島 上陸

 「島が見えたぞー!」

 「懐かしの故郷だ!」


 目的地の島が、俺等の肉眼でも見えるくらいの距離まで来た。目的の島が見えて、船員クルー達のテンションが上がっている。

 そして間もなく、船は島の港の船着き場に定着した。


 「着いたぞー!」

 「帆をたため!」

 「イカリを降ろせー!」


 船員クルー達の威勢のいい声がアチコチに響き渡った。

 数日間の航海の末に、俺等はコリート達の故郷の島に着いたのだ。

 島の名前は「ハイワ島」というらしい。俺には聞き慣れた名前に感じた。いや実際、地球で言うところの、ハワイに雰囲気が似ている。温暖な気候で、当然ながら、近代的な建物の類等は一切ないが、ヤシの木に似た木々がソコラに生えている。

 前世じゃハワイなんて、テレビでしかお目にかかったことない。金の無い庶民の俺には、ハワイは正に夢の国だった。

 それが今、異世界とはいえ、とてもよく似た場所に来ている。それもタダで。何とも不思議な話だ。

 と、染み染み感じていた。

 

 「うーし、着いたぞオメー等!」

 「着いたか…」

 「無事に着いて良かったですね!」

 「あったりめーだ!俺等と俺様号にかかりゃあ、世界の反対側にだって、余裕で行けっぜ!!」


 ポン!

 グビグビ!


 と、コリートは無事に到着した事の祝い酒と言わんばかりに、酒瓶のコルクを豪快に飛ばして外し、酒をラッパで飲み始めた。

 

 「船長、程々にしとかないと、またカミさんに怒られやすよ⁉」

 「バッキャロー!女房が怖くて船乗りができっかよ!」

 

 豪快に笑いながら、再びラッパで飲むコリート。

 メットが飛ばしたコルクを拾いながら注意するも、当のコリートは聞く耳を持たない。まさに、蛙の面に水の状態だった。

 それから船と船着き場に、渡り板をかけ、各自荷物を持ちながら下船していく。


 「ふ~、数日ぶりの地面だ!」

 「えぇ、快適な船旅でしたけど、地面に立っているだけで、安心感を感じますね⁉」

 「ああ、妙に落ち着くな…」


 数日ぶりに地面。リリーナの言う通り、ほんの数日だったというのに、妙に安心感を感じる。普段から当たり前にありすぎて、その物の、ありがたみを分からないでいたのだろう。


 「船旅もよかったけど、やっぱ地上が落ち着くよなレオ⁉」


 と俺はレオに話しかけた。

 が、当のレオはというと、


 「クンクン!うひょ~、アチコチからうまそ~な匂いがプンプンすっぞ⁉」


 レオは相変わらず、食い気全開だった。

 確かに、潮の香りだけでなく、いい匂いがアチラコチラから漂ってくる。


 「あぁ、この辺には、観光客向けに食物関連の店が沢山あっからな、そこからだろう!」


 と、コリートが説明してくれた。


 「顔馴染の店もあっから、一緒に行きゃサービスしてくれっかもしんねーぜ!」

 「マジ⁉サイコーじゃん!早く行こーぜタイガー!リリーナ!」

 「行こう行こう!」

 

 と、レオだけでなくローラまでハイテンションになっている。冗談抜きで本当に、お似合いかもな、この2人…


 「慌てんな!店は逃げねーよ!先に荷物を置いてからだ!」

 「そうですね。船長さん、船長さんのお友達の家は、何処ですか?」

 「ここから歩いて数分のトコだ!」

 「へぇ、近いんだな!」

 「ああ、だから偶に里帰りした時なんかにな、利用させてもらってんだ!何しろ俺には実家ってもんがねーからな…」


 と、珍しく少し寂しげに言うコリート。

 聞けばコリートは、幼い頃に両親を亡くしたらしい。他に頼れる親戚もなかった彼は、幼くしてとある船に見習いとして乗船したらしい。そこで様々な雑用をこなしながら必死に頑張って、苦労の末に、現在、船長になったのだとか。

 そうコリートは、こう見えても、なかなかの苦労人だったのだ。今の呑んだくれからは想像出来ないけど…


 「まぁ俺の昔の事はどうだっていい!今はこうして、愛する家族と、部下達にも恵まれたんだからな!」


 と、ローラを抱きかかえて明るく振る舞うコリート。

 それを見ていると、何とも微笑ましい感じになった。


 そこへ、メットやシェフを始めとする、他の船員クルー達が話しかけてきた。


 「コリート船長!そんじゃあ俺等はこの辺で!」

 「また後日に!」


 島に到着した後は、各自、出航の準備に入るまで自由行動らしく、自分の荷物を持った面々が集まっている。


 「ああ、それじゃあな!集合時間、遅れんじゃねーぞ!」

 「うっす!」

 「船長こそ、飲み過ぎて遅刻しないで下さいよ⁉」

 「ウッセー!」

 「「ハハハハハ‼」」


 豪快に笑い声をあげた後、船員クルー達は解散して行った。

 

 「そんじゃあ、俺等も行くか!」

 「ああ!」

 「ハイ。ほらレオくん、行くよ!」

 「ん!」


 俺等はコリートの友人宅を目指して、移動を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ