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ラーメン屋

今年初の投稿です…

 俺とテツはラーメン店に入店した。暖簾や提灯、券売機等は当然無いが、中はラーメン店らしい作りだった。

 今更だか、


 「この世界にこんなラーメン屋があるものなのか?」


 と少し疑問だが、細かい事は置いとこう。

 俺とテツは注文を済ませ、出て来るのを待っていた。店の端にボロい本立があり、書籍が数冊置いてある。この世界の雑誌のような物なのだろう。店の片隅にこういった物があるのは、前の世界と同じか。

 適当に手に取ってみたが、ページのあちこちがラーメンの汁で汚れ、端っこは折れたり、破れたりしている。全然大事にされてないな。まあ、こんなとこに置いてある以上、持っていかれてもいいようなやつなのだろう。特に読む気にもならなかったので、そのまま本立に戻した。


 「ヘイ、お待ち。」


 いかにもラーメン屋のオヤジ的な店主の渋い声がした。

 お待ちかねのラーメンが出て来た。この世界のラーメンは、元の世界と大差はなかったので、妙に懐かしい感じがした。

 俺は早速、麺をすすって、久々のラーメンを味わった。リリーナが言っていたとおり、辛口だか動物の骨ベースらしく、それが中太の麺と絡んで良い味を出している。


 「うめー!これこそ人間の食べ物だ。」

 「なんだよ兄ちゃん、そんな感動するほど美味いのか?」

 「近頃、ろくな物食えてないからな。」


 俺はテツと、当たり障りの無い世間話をしながらラーメンを食った。話によるとテツの経営する鉄工所は最近あまり景気が良くないらしい。ついこの前までのマリーの店と同じだ。

 本当、異世界らしさの無い話だ。


 「しかし、酒を飲んだりこうやってラーメン食う余裕はあんだろ?」

 「とんでもねー。少ない小遣いを、やりくりしてんだ。はっきり言って、飲まずにやってけるかってんだ。」

 「そうなんだな…(日本のサラリーマンと同じかよ…)」


 この世界も何かと大変なんだと、俺はつくづく痛感した。


 「(全くなんだってこんな異世界に来ちまったんだ俺は?)」


 とまた思った。


 「あっ、テツのおっちゃん。」


 何処からともなく、子供の声がして来た。声の方を見ると、そこには小学生位の男の子を連れた男がいた。


 「よう! ゲン、おめーか。」

 「何だテツの知り合いか。」

 「ああ、正確には、ダチとその息子だ。」

 「ようテツ、暫くだな。」

 「ああ、お前も来てたのか、奇遇だな。ガキと飯か?」

 「まぁな、久々の外食だよ。」

 「そうか、よっしゃ一緒に飲もうぜ。親父、ビールとグラス2つな!」

 「あいよ。」

 「テツ、また飲むのか?」

 「飲まずにいられっかよ。」

 

 テツとその友人、名前は「ゲン」とのこと。テツと同じく町外れで小さな印刷所をやってるらしい。

 2人は、俺と子供をほったらかしにして、酒盛りを始めた。仕方ないから俺は子供の相手をしている。相手といっても一緒にラーメン食いながら会話するだけだが。


 「そうか、お前も勉強は嫌いか、俺もだ。」

 「うん。俺はどちらかというと、体動かす方が好きなんだよ。なのに、父ちゃんも母ちゃんも、勉強しろ勉強しろって、やんなるよ。」

 「子供も色々大変だな。」

 「まあ、学校で友達と遊ぶのは楽しいけど…」

 「どんな遊びしてんだ?」

 「ありきたりだけど、「獲物探し」とか「獲物追い」それ以外はノートとかに落書きしたりボール遊び。後は放課後草むらや川で虫取りや魚取りくらいかな。」

 「獲物探し、獲物追い?」

 「おじさん、知らないの?」

 「おじさ…俺はまだ二十歳過ぎたぞ…まあいい。それってどんな遊びだ?」


 俺はそれらの遊びの説明をしてもらった。聞く限り、かくれんぼや鬼ごっこみたいなものらしい。しかし、全体的にかなりアナログな遊びばっかだ。コンピューターゲームは無いだろうが、それにしても無いにもほどがあるぞ。

更に話を聞くと、遊び道具も積み木や木で出来た車・汽車みたいなやつ位ときたものだ。元いた世界の子供じゃ3日と保たず飽きるだろう。

 最も、こっちの世界じゃこれが至って普通なのだろうけど…


 「でも…最近それらも飽きてきたところでさ、何か刺激になる事無いかなと思ってるよ。」

 「刺激になる事って、待てよ…それならこの世界に無い物を作って見たらいいんじゃ無いか?上手く行けば、一山稼げるかも。」

 「おじさん…?」

 「うん、小さいけどテツは鉄工所、ゲンは印刷所の経営者だ。」

 「さっきから何ブツブツ言ってんのさ?おじさん。」

 「もしかしたら、俺が刺激になる物、作ってやれるかもしんないぞ。」

 「本当?」

 「ああ、おいテツ!」


 俺は酒盛りをしているてつを呼んだ。


 「何だよいきなり…ヒクッ!」


 テツは酒臭い息をしながら近づいて来た。俺は酒臭さを我慢して切り出した。


 「いい儲け話って訳じゃないんだが、乗る気はないか?上手く行けば、一山稼げるかもしんないぜ。」

 「⁉」

 

 

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