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転生

 「なんてつまらない世界に来てしまったんだ…」「なんの意味のある異世界転生だ!」 


 俺がそう感じるまでに、さほど時間はかからなかった。

 

 気付くと俺は一人森の中で倒れていた。頭はぼんやりして、服装も着た覚えは愚か、漫画とかでしか見たことの無い様な服を身に着けていた。


 「何だよこのへんな格好は?てか、ここどこだ?」

 

 兎に角、今いる場所が森の中であることはずくにわかった。特に宛がある訳ではないか、とりあえず移動することにした。  

 少し歩くとジャンプすれば飛び越せそうな位の幅の川があった。

 

 「きれいな水だけど飲めるかな?」


 俺は手で水をすくい匂いを嗅いでから恐る恐る一口飲んでみた。すると、「うまい!」と感じ、今度は川に顔を直につけてゴクゴク飲んでみた。

 川の水を飲むなんて、初めてだ。特に都会のコンクリートで舗装されたドブ様な川じゃまず、考えられない。


 「ぷはー!生き返った気分だ。」

 

 俺はその場な大の字に寝そべった。俺はどちらかと言えばきれい好きな方で、服に土とかが付くのが嫌なタイプだが、今はそんなことを完全に忘れていた。そもそもついさっきまで地面に倒れていたのだから今更といった感じだ。

 水を飲んでおかげなのか、頭が少しはっきりして記憶も戻ってきた。


 「そうだ、確か休日に友人と遊びに出かけようと家を出て、途中で横断歩道を渡ったら下りの階段で足を滑らせて「ヤバい!」と思う間もなく意識が途絶えて…そっからの記憶がない…」


 ふと空を見上げると今まで気付かなかったか、太陽が僅かだか膨らんだり縮んだりしている。太陽がこんな動きするわけがない。ここは地球ではないようだ。いやそもそも元々いた地球が存在する世界とも思えなかった。


 「まさか、俺…その時に死んだのか!てことはここはまさか異世界!今流行っていうか、沢山あり過ぎて飽和状態の異世界転生ってやつか!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 興奮していたが、冷静になって落ち着いて考えることにした。


 俺の名前は金田虎之助(かねだ とらのすけ)、21歳の大学生。名前が虎之助なのは、2つ上の兄の名前が竜之助(りゅうのすけ)で兄弟なら似た名前がいいだろうという安易な理由で付けられたと聞いている。あだ名感覚でトラと呼ばれることが多い。

 趣味は漫画を読む事とネットサーフィン。両親はサラリーマンの父と主婦の母。兄弟は兄以外は中学生の妹がいる。兄・妹とは、特別仲がいいわけではないが、かと言って悪い訳でもない、いうなれば極普通の兄弟だ。彼女はおらず、友人はそこそこいる。当然童貞。

 学校の成績は小学校から高校までの間、全く出来ないというわけではないが良くて中の下位。


 「うん、元々の記憶で、特に欠落している部分は無いみたいだな。たぶん…」


 正直あまり自信は無かった。


 「さて、本当にここが異世界なのかどうかはともかく、暗くなる前に森を出ないとな。情けない話だが、現代人というだけで、なんの取り柄もない俺が森で自給自足していける自信は全くないからな。」


 本当に俺には取り柄と言えることが何もないのだ。「誰にでも取り柄はある」なんて言葉は嘘だと何度思ったことか。

  

 「異世界と言えど、人は居るだろうしな。その人達に助けてもらおう。」

 

 それが得体のしれない世界での唯一の宛だった。

 ひとまず川を降ってみることにした。水は全ての生き物の源。これは異世界であっても変わらないだろうから、水のある所に人は集まるはずだ。俺は川の流れに合わせて降って行った。

 

 「はーはー…この森何処まで続くんだよ。」


 かれこれ数十分は歩き続けたが今だ人の匂いはしてこない。暗くなってきた。日が沈んだというより太陽の明かりが弱まったといった感じた。空を見ると、先程と比べて太陽が輝きを失っている。いや、今や太陽と言うより月に近い。例えるなら、蛍光灯を豆球にしたといった感じだろう。そういえば、位置も先程から一切変わってないように見える。この世界ではこれが日暮れなのだろうか。

 

 「マズイな…このままじゃ野宿になるかも…」


 周りから聞いた事の無い鳴き声があちこちから聞こえてくる。この世界の虫や鳥の声といったところか。

 等と考えていたら、歩いていた川沿いの道がその辺りから急に斜面になっており、俺は派手に転げ落ちてしまった。


 「痛ってーなくそ…踏んだり蹴ったりだ。」

 「きゃっ!」

 「え⁉」


 ふいに女性の声が耳に入ってきた。声のした方を見ると、若い女が川で水を汲んでいた。俺は、この世界では初めて自分以外の人に出会った。


 「あのー…大丈夫ですか?」

 「えっ⁉あー大丈夫、少し転んだだけだ。」

 「まー、膝を擦りむいてますよ。よかったら家に来てください。手当しますから。」

 「いいのかい?見ず知らずの男を家に入れて。」

 「構いませんよ。さぁこっちです。」


 その娘が手招きした。


 「それじゃぁお言葉に甘えて…」


 俺は内心「助かった」と思った。これで最悪、野宿は免れそうだし、情報も手に入る。

 渡りに船とはこの事を言うんだな。そう思いながら俺は、その娘の後を追った。

 

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