幻想郷案内されました
チュンチュン!
俺が博麗神社で居候し始めて初めての朝を迎えた。
外から鳥の鳴き声が聞こえる。
俺は布団から起きると障子の戸を開けた。
外はいい天気だった。
鳥が数羽並んで飛んでいるのも確認できた。
着ていた着物から自分の服に着替え、そばに置いていた木刀を持つと俺は外に出た。
「ん~!」
外に出て伸びをすると軽い運動をして木刀を振る。
剣道を始めてからいつもこの行動をしてきたので幻想郷に来てもこの行動をしているのは最早クセと捉えてもいいだろうと思いながら木刀を縦に、横にそれぞれ200回ずつ振る。
いつもは竹刀でやっているが木刀でも大した違いはないなと思いながら素振りを終えた。
「何してるの?」
素振りを終えた俺は声のした方を見る。
そこには箒を持つ博麗神社の巫女こと霊夢がこちらを見ていた。
「素振りさ。外の世界でもしてたからな」
「ふ~ん・・・」
霊夢は大して興味がなさそうな返事をすると神社の掃き掃除を始めた。
「おーい!霊夢~!岳~!」
俺が掃き掃除している霊夢を見ていると上空から声が聞こえた。
上を見上げると箒で飛んでいる魔理沙の姿が。
「おぉ、魔理沙。おはよう」
「おはようだぜ、岳」
魔理沙は博麗神社に降りると箒を手に持つ。
「どうしたの?こんな朝に」
霊夢が掃き掃除を止めて魔理沙に聞く。
「あぁ、岳が幻想郷に住むんなら幻想郷を知らないといけないだろ?だから幻想郷を私が案内してやろうと思って来たんだぜ」
住むという言葉に「帰るまでの間だけどな」と俺は付け加える。
ただ、幻想郷について知りたいのは事実。
どのくらいの間居るかわからないが幻想郷について色々知っておくのは大事だと思った。
「案内ってどこ案内してくれるんだ?」
「岳、何案内される気満々なのよ」
霊夢が俺を見てキツく言う。
「貴方ねぇ・・・まだ自分の立場わかってないんじゃない?」
「いいじゃないかよ!霊夢」
魔理沙がそんな霊夢に言い放った。
「岳だってずっとここにいるのは暇だと思うぜ!それにいつ帰るかもわからないんだからさ、その間くらい幻想郷ってこんな場所なんだぜっての岳に知ってもらいたいって考えてるからさ。いいだろ?霊夢」
霊夢は何か考えているようだったがやがてため息をすると
「わかったわ。ただ、私も同伴するわ。魔理沙だけじゃ不安だから」
「不安ってなんだよ・・・」
魔理沙は霊夢の意見に不満げだったようだが、とりあえず案内させてもらうことはできそうだ。
「ありがとな霊夢」
「・・・」
霊夢は俺を見てまたため息をはいた。
「で、どこ案内してくれるんだ?」
俺は今魔理沙の箒に乗って空を飛んでおり、前に乗っている魔理沙に気になったことを聞いた。
始め箒に乗る時、乗れるのか不安だったが意外と箒の上は安定していた。
「とりあえずまずは人間の里だな」
魔理沙が振り向かずに返事する。
「そうね。そこなら安全だわ」
隣を飛んでいる霊夢がそれに答えた。
霊夢は何も使わず普通に飛んでいる。
俺がそれを見て驚いた時、霊夢は「これくらい大抵の人はできるわ」と答えていた。
それを聞いて幻想郷ってスゲーなと密かに俺も飛べたらな・・・と思った俺だったが口には出さなかった。
人間の里は博麗神社からそれほど離れていないようで、少し飛んでいると村らしきものが見えてきた。
「あれか?」
「そうだぜ」
魔理沙は答えると高度を下げ始め、人間の里の入り口に着地した。
「はぁ~」
人間の里というくらいはある。
そこは多くの人間たちで賑わっていた。
建物自体は木造建築の平屋が並んでおり、人達は殆どの人が着物を着ていた。
まるで江戸や明治時代にタイムスリップしたかのようだった。
「どうだ?」
隣から魔理沙が聞いてくる。
「あぁ、なんかタイムスリップした気分だ」
「岳のいる世界とは違うの?」
霊夢が聞いてきたので俺は頷くと答えた。
「俺のいる世界だとこんないかにも木造ですよって平屋が並んでいるところはもう歴史の一部ってことになってる。こっちの建物は殆どコンクリート製だからな」
「こんくりーとって何なんだぜ?」
「セメントって言う粘土みたいなものと水とか砂を混ぜて固まらせたものだな。わかりやすく言うと石で出来た建物が多く並んでいる感じか?」
「よくわからないけどそっちの世界は変わってるわね」
「もちろん、木で作られた家もあるぞ?ただ、平屋みたいな1階建って言う建物はあまり見ないかな・・・こっちの方じゃ普通に20階建てのマンションとかあるし」
「に、20階!?どんだけ大きな建物なんだぜ・・・」
そんな話をしながら人間の里を歩く俺たち。
俺たちとすれ違う人達がこっちを見ているのがわかる。
詳しくは霊夢や魔理沙ではなく、俺の方をだ。
「なんか、見られてるような気がするんだが・・・」
「そうでしょうね。貴方この人間の里じゃ見かけない人だし」
霊夢が説明してくれた。
「ついでに言うと殆どの人間は着物着てるけど貴方のは洋服みたいだし。正直そんな服着てるのは妖怪が殆どよ」
「え!?マジか!」
俺の反応が面白かったのか霊夢が笑う。
「安心しなさい。誰も貴方が妖怪だって思ってはいないから」
「まぁ、妖怪もこの人間の里には入ってくるがその妖怪たちは人間を襲うとかしないからここは人間にとっちゃ安心なんだぜ」
「そうね。万が一ここが襲われても守ってくれる住民もいることだしね」
「守ってくれる住民?」 「今は寺子屋で子供たちに勉強教えてるんじゃないか?」
俺たちはとりあえず寺子屋へと向かった。
俺にとっては寺子屋と言うものがある時点で時代感を感じてしまったが建物を見て思わず「おぉ」と感動のあまり声を出した。
「感動するものか?」
魔理沙に言われたが寺子屋を初めて見た俺は頷いた。
「こっちには寺子屋って言うよりは学校や塾とか予備校と言うものがあるけど、なんかテストとか志望校合格のためとか堅苦しい感じなんだよ。
ただ、寺子屋ってそんな雰囲気って言うよりは子供たちに勉強を教えるだけって感じだから楽しいんだろうなって思ってな」
そう、それこそ俺たちの世界で言う幼稚園や保育園のような感じで楽しく過ごせるところのイメージが俺にはあった。
「とりあえず入って紹介させましょうか。彼女は人間には友好的だから」
霊夢がそう言い、魔理沙も霊夢に続いて入っていくので俺も付いて行く。
寺子屋は俺のイメージ通り外から中の様子が見れるようになっており、中では薄い群青色の長髪で青い服が目立つ女性が子供たちに勉強を教えていた。
勉強を教えている雰囲気は小学校に似ていた。