1ヶ月のサバイバル生活始まります3
「さて、夜になったぞ」
俺は拠点のところにいた。
運が良かったのか、拠点は破壊されたりしていなかったので、そこで竹の棒を何本か作り、たけのこを焼いて食べて夜まで待っていた。
輝夜の話では相手は妖怪ではなく、人間だと言う。
なら人間は人間でも霊夢や魔理沙、咲夜のような強い人間ということだ。
だからやりあう以上は彼女らと戦うことを想定して・・・
俺は冷や汗が流れた。
「いやいや、霊夢と魔理沙と咲夜さんだろ?絶対勝てないよ・・・。相手が加減してくれていることを祈るしかないか・・・」
俺は竹の棒を構える。
気配が近づいてきた。
感じる気配は1人みたいだが、あの時は少なくとも2人いた。
なら、もう1人はどこだ?
「ぎゃぁぁぁあ!!」
その答えは別のところからの悲鳴が教えてくれた。
今回は1人だけってことだ。
なら、この1人だけに集中していればいい。
どの距離に居るかわからないが、近くに居ることだけは確かだ。
こういう時、マントがあればこちらから忍び込んで奇襲をかけることができそうだが、ない以上は仕方ない。
「・・・」
いつ来てもいいように構えていると、奥の方が少しばかり明るくなってきた。
「ん?なんだ?」
俺は明かりのところを見て、正体がわかると、すぐにその場から離れた。
こっちに向かってきたものの正体、それは炎だ。
炎の弾がこちらに向かってくる。
流石に曲がったりはしないみたいだが、炎の弾は竹に当たり、竹を焦がした。
燃えないことから炎の弾の威力はそれほど高くないのか?
「いや、燃え移る心配をしてのあの威力ってことか」
俺は焦げた竹を見ながら呟いた。
それにしても、相手は炎の弾を放ってくるだけでこちらに近づいてくる気配がしない。
しかし、俺がいる場所はわかるのか、炎は的確にこちらを狙ってくる。
俺はこの炎の弾を避け続けていたが、途中から炎の弾が向かってくることがなくなった。
何故か気になったが、その答えは空から漏れる明かりが教えてくれた。
「あぁ、朝か」
気配も消えている。
俺は拠点に戻ると、倒れるように眠りについた。
-7日目-
「よっ」
5日も炎の弾を受けていると避けるのは容易い。
初めは避けるのが精一杯だったが、今ならあれも可能かもしれない。
俺は炎の弾を避けると、放たれた所へ走る。
数十メートル走ると今度は右側から炎の弾が。
俺はそれを避けてその方向へと向かう。
しかし、その場所に向かっても炎を放っている人物が見つからない。
やがて、8日目の朝がやってきた。
「くそっ!」
俺は悔しそうに言うと、拠点に戻った。
-竹林のどこかにある木造の平屋-
その中に妹紅と慧音が居た。
「なぁ、慧音。アイツって戦い慣れてる?」
「いきなりどうしたんだ?」
たけのこ料理を作った慧音が料理をテーブルに置く。
妹紅はそれを箸で口に運ぶ。
「いや、今回はただ避けてるだけじゃなくてこっちに向かって来たからさ」
「へぇ、確か岳さんは剣道をしているって言ってたな」
「けんどう?」
「外の世界のスポーツだそうだ」
「へぇ。そういえば他の参加者はどうなんだよ?」
「あと1人だ。今日で終わらせるよ」
「そうか。私の方はもう少し楽しませてもらうかな。慧音は何があっても手を出すなよ」
「・・・何度も言うがちゃんと加減はすること。手を出しても気絶程度で、だ」
「はいはい。わかってるよ」
妹紅はそう言うと、壁に背をつけて座りながら眠りについた。
-12日目-
俺は朝起きて拠点周りでたけのこを探していた。
「ほんと、たけのこはいたる所にあるな・・・」
見つけたたけのこを採る俺。
「あっ、ここにもあったんだな・・・」
俺はもう竹になりかかっているたけのこを見ながら呟く。
元々たけのこは採る日を逃したらすぐに竹になってしまうが、ここの竹の成長速度は速い。
「ん?待てよ・・・」
俺は拠点の周りを歩く。
「なるほどな・・・。なら夜になる前にさっさとやりますかね」
「きゃあ!」
夜、作業が思ったよりも長引いたので疲れて眠っていた俺は、その声を聞いて起きた。
何やら可愛らしい悲鳴が聞こえてきたが、俺はそれにニヤリとして呟く。
「かかったな」
「なっ・・・なんだこれ!?」
妹紅はぬかるみにハマった両足をなんとかして抜け出そうともがいていた。
俺が作ったのはぬかるみの罠。
それも来た瞬間必ずかかるように作った罠だ。
深さはざっと40センチ。
だが、ヘドロに足を取られたらなかなか抜け出せないように、妹紅はぬかるみにはまった両足をまだ抜け出せないでいた。
俺は声が聞こえた所に向かう。
「っ!?やばい!」
俺が近づいてくるのがわかったのか、妹紅は両手から炎を出すと、自分の足元へと放った。
「な、なんだ!?」
突如、数十メートル先に炎が巻き上がると、何者かが空を飛ぶのが見えた。
炎の翼のようなものが見えたが何者かの正体がわかる前に遠くの方へと飛んで行った。
罠を仕掛けた所は地面が焼け焦げていた。
「逃げたか・・・」
おそらくだが、もう今夜は襲ってこないだろう。
俺は拠点に戻ると横になって目を閉じた。
竹林の中にある平屋で妹紅が汚れた箇所を確かめていた。
「あ~あ、私の靴とズボンが泥で汚れてるじゃないか・・・」
「なんだ?何かされたのか?」
「あぁ、泥沼にはめられた。顔が見られそうになったから急いで抜け出したけどな」
「なるほど、罠ってわけか・・・それにしても、妹紅が引っかかるなんて余程の数の罠でも作ったのか?」
「さぁな。だが、初めての向こうの抵抗を受けたな。なかなか楽しめそうだ」
-15日目-
「うわっ!またか!」
妹紅は岳が仕掛けた罠に足を取られた。
「こっちだな!」
岳は竹の棒を構えながら罠の方向へと向かう。
「あぁ!くそ!」
妹紅は炎を使って罠から抜け出すと、空を飛んでいった。
「・・・またどこかに行ったな」
しばらくしてたどり着いた岳は空を見て呟くと、拠点に戻り横になった。
その様子を遠くから慧音が見ていた。
「なるほどな」
慧音は竹に触れながら呟いた。




