執事のバイト始めました5
「ミネストローネはまだかしら?」
「え?あっ、申し訳ありません。ただ今お持ちします」
俺は注いだミネストローネを3人の前に置いていく。
レミリアはミネストローネをスプーンで一口飲む。
「あと2週間と数日あるわ。それまでにもっと私たちを満足させてちょうだいね」
「は、はい・・・じゃなかった。かしこまりました!」
これは認めてもらっていると受け取っていいのではないだろうか。
俺は心の中で、よしっ!とガッツポーズをした。
「それに、岳、貴方もしかしたら咲夜よりも才能あるわよ」
「え?それはどういう?」
「だって咲夜が働き始めた時なんかムグッ!」
「お嬢様。言葉が過ぎますよ」
気づいたら咲夜がレミリアの口を塞いでいた。
フランの前にはムニエルがご丁寧に温めて置いてあった。
「わぁー!」
フランはそのムニエルを口に運んで美味しいのか満面の笑みを浮かべた。
「ムゥ~!」
レミリアは咲夜に離せと言ってるのか咲夜の手を離そうとしており、パチュリーは俺がだした料理を完食したのか口元をナプキンで拭いていた。
「はぁ、はぁ。やっと離してくれたわね・・・」
「お嬢様が話そうとするからいけないのですよ」
「わかったわよ。言わなきゃいいんでしょ!」
レミリアはそう言うと食事を再開した。
「あっ、お兄様?今日もフランと遊んでくれる?」
俺が仕事を片付けてから寝る時間までの間に時間があるとフランと遊んでいる。
遊びの内容は鬼ごっこなのだが、フランをまだ捕まえることができないでいる。
「良いですよ。今度こそ捕まえてみせますよ」
「わーい!」
フランが遊んでくれるのが嬉しいのか喜んでいる。
「岳、それより先に魔導書の場所を教えてくれないかしら?」
「あっ、そうですね、わかりました。フラン様、先にパチュリー様に魔導書の位置について教えますのでそれが終わってからでもよろしいですか?」
「うん、いいよー!」
フランは席を立つと食堂を出て行った。
「また後でね!お兄様!」
食堂を出る前に俺に手を振って出て行った。
俺もそれに応えて手を振った。
「ごちそうさま。美味しかったわ。また後でね」
「はい、お粗末様でした」
そのあと、レミリアも食事を終えて俺たちの食事の番になる。
「美味しいですね!」
「岳さん!美味しいですよ!」
美鈴や小悪魔は高評価だったのだが
「・・・」
咲夜だけは何も言わずに食べていた。
まぁ、食べ続けているから食べられない味ではないのだろう。
やはりメイド長は厳しいなと感じた俺。
「あれは咲夜さん、悔しいんだと思いますよ・・・」
隣で食べていた美鈴が俺に耳打ちする。
「え?どういう意味ですか?」
「正直、岳さんの料理の方が美味い・・・痛っ!」
話している美鈴の頭にナイフが刺さる。
「聞こえていますよ」
咲夜がナイフを構えながら美鈴に言う。
普通なら死んでもおかしくない。
「痛いです・・・咲夜さん・・・」
しかし、涙目の美鈴が頭に刺さっているナイフを抜いている。
美鈴は見た目は完全に人間なのだが妖怪だ。
『妖怪だってナイフが刺さったら痛いんですよぉ・・・なのに咲夜さんは容赦がないんですぅ・・・』と、俺に話してくれたのを思い出した。
「・・・何か?」
「い、いえ・・・なんでもないです」
俺は目を逸らすと食事を開始した。
「待てー!」
「きゃぁー!にげろ〜!」
夜も遅い時間、パチュリーに魔導書の場所を教えた俺は、紅魔館の庭でフランを追いかけていた。
フランは翼で空を飛んでいるので捕まえれない。
今日こそ捕まえたいと思っているのだが、果たして捕まえることができるのだろうか。
ただ、何とかしてもフランを捕まえたいと考えた俺はフランに言うことに。
「フラン様、私は飛べませんので飛ばれると追いかけることができません。よろしければ降りて普通に追いかけっこをしませんか?」
「お兄様空飛べないの?」
「はい、そうなのです」
「う~ん・・・」
フランはゆっくりと降りて足を地面につけた。
「いいよ!これでお兄様も追いかけられるんだね!」
「えぇ、では行きますよ!」
俺が走り始めたので逃げるフラン。
庭を数周走り回り、やっと手が届くところまで来た。
俺は転ぶのを覚悟でフランに飛びかかり、抱きしめるように捕まえると背中を下にしてフランを傷つけずに捕まえることができた。
「はぁ、やっと捕まえられた・・・」
「きゃははは!捕まっちゃった!」
フランは俺に捕まえられているのに笑っていた。
フランは俺から離れる。
「捕まったから次はフランが鬼ね!」
「あっ・・・あれ?終わりではないのですね・・・」
立ち上がった俺にフランは両手を前に出すと
「お兄様、早く逃げないと捕まえちゃうよ~!」
「はっ、はいぃぃぃ!」
悲鳴をあげながら俺は逃げ出した。
およそ10秒で捕まえられた。
-働き始めて3週間目と数日-
「痛っ!」
調理中に寝ていた俺の頭を咲夜が叩いた。
「何寝ているんですか」
「・・・」
俺はスマホを取り出すと画面を見た。
「大丈夫ですよ。まだ10分ほど煮込みますから」
「そういう意味ではありません。その間にも食器を準備したり・・・」
「してますよ?」
「・・・階段の掃除もあるでしょう」
「メイド長、それもうチェック済みですよね?」
「うっ・・・た、確かにそうですね」
咲夜は煮込んでいる鍋を見る。
「弱火で煮込んでいるじゃないですか。これで時間稼ごうとしてもそうはいきませんよ」
「これは時間をかけてでもゆっくり煮込んだ方が美味しいんですよ。それに火をこれ以上強くすると焦げてしまいます」
「だ・・・だったらその間にも他の料理を作れば良いじゃないですか」
「・・・冷蔵室を見てください。あと、煮込んでいる鍋とは別の鍋も見てください」
咲夜が言われた通り冷蔵室を開ける。
そこには豆腐サラダが人数分置かれていた。
煮込んでいる鍋と別の鍋を見てみると、そこには今回のスープが作られていた。
「そのスープはこちらの煮込みが終わり次第また温めなおすので大丈夫です」
「・・・貴方が10分経っても起きなかったらどうするのですか。そう、私はそれを考えて貴方を起こしたわけです」
「それも心配いりません」
俺はスマホを咲夜に見せる。
「これは?」
「俺がここに来た時に一緒に持ってきたスマートフォン。通称スマホです。これはにとりに直してもらって、幻想郷でも通常通り使えます。で、これにはアラームという機能があって、時間になると教えてくれるので大丈夫です」
「そのあらーむという機能で貴方が起きなかったら?ですので私がした行為は必要なものだったということです」
なぜか勝ち誇ったように言う咲夜。
ここで「そうでした。すみませんでした」と言えたら良かったのだろうが、負けず嫌いの俺はそうはいかなかった。
「俺は寝ていましたがそれなりに人の気配とかはわかりますよ。例えばですけど、メイド長、俺が料理を作る時見てましたよね?」
「えっ!?」
「まぁ、始めからって訳じゃありませんでしたが、そうですね・・・ちょうど煮込みバーグを作ろうと思った時からでしょうか。その辺りからずっと見てましたよね?」
「うっ・・・!」
「そして、俺が目を閉じてから2分くらい経って俺の頭を叩いた。その時見ていた視線が消えたと思うとメイド長が頭を叩いていた。それはつまりメイド長が時を止めてその隙にここに来て俺の頭を叩いた。違いますか?」
「・・・」
「・・・はぁ、あと7分くらいですか。俺が仕事を終わらせていないならともかく、ちゃんと仕事していた俺を叩いたメイド長の方が悪いと私は思うのですがどうでしょう?悪いと思っているのでしたらあと7分寝る許可を貰えるとありがたいのですが」
「・・・すみませんでした」
咲夜はそれだけを言うとその場から消えた。
おそらく時を止めてその間にその場を離れたのだろう。
「・・・言い過ぎたかな?」
俺はそう呟くと目を閉じた。
咲夜にも言い返すことは考えるとあったと思う。
「それでも寝るなんて貴方は仕事をなめているのですか!」とか言われたらこっちも言い返す余地を考える必要があっただろう。
それか「メイド長命令です。ちゃんと起きなさい!」とか言われたら言うことに従うことしかできなかっただろう。
やっぱり言い過ぎたなぁと思った俺だった。




