薬の副作用です?5
『あははは!!』
「ん・・・何?」
自分の部屋で寝ていた霊夢は騒がしい声に目を覚ました。
霊夢は声のする所へと向かう。
襖を開けると、そこには宴会を楽しんでいる人妖たちが居た。
「え!?なんで宴会が始まってるのよ!?」
驚いた声を出した霊夢に酒を飲んでいた俺は気付くと、彼女の元へと向かう。
「霊夢、すまないな。ぐっすり寝てるから起こすのが悪いって華扇さんが。まぁ、起きたから宴会を楽しもうな」
俺は霊夢に飲み物を渡す。
「・・・ねぇ、岳」
「ん?」
霊夢は受け取った飲み物を見る。
「なんで私の飲み物がジュースなの?」
「ん?何かおかしいか?」
俺は霊夢に答える。
「おかしいかって・・・普通宴会だったらお酒でしょ?」
「何言ってんだ?子供がお酒飲むのはいけないことなんだぞ?」
「なっ!?」
俺が考えたことはこれだった。
霊夢が5歳児程度になった事を利用して俺に高価なものをねだっていたのなら、こちらも霊夢を5歳児程度の女の子として接する事にしたのだ。
宴会を楽しんでいるのはたくさんの人妖たち。
幼い霊夢はお酒が飲めない中、俺たちは通常通りお酒を飲みながら宴会を楽しむ。
宴会では酔っ払うくらいまで飲むほどの酒好きの霊夢にとっては地獄だろう。
「でも!リアだって飲んでるじゃない!」
「リアはあの見た目でも300歳超えてるぞ?」
「うっ・・・。そうだ!魔理沙や早苗はどうなのよ!」
「いや、いつも飲んでるからな・・・まぁ、未成年でも仕方ないんじゃないか?」
正直そこについては今更感がある。
それこそ、元に戻った霊夢にも当てはまるだろう。
「岳さ~ん!じゃんじゃん飲んじゃいましょう!」
「そうだな。ワインもパァーッと開けますか!」
『おぉ~!』
紅魔館から贈呈されたワインを開けて宴会を楽しんでいる俺たち。
その光景をジュースが入ったコップを持ちながら霊夢は見ていた。
「おいおい、どうした~?霊夢ちゃ~ん?宴会なんだ、楽しもうぜ~!」
その霊夢の肩を魔理沙が掴むと宴会の席へと連れて行った。
「・・・」
魔理沙に座らされた幼い霊夢を初めて見る人妖たちが集まって来た。
「本当に小さくなっていますね」
「この霊夢にならあたい勝てるぞ!」
「お酒は大人になってからよ。おチビさん」
「・・・」
「いいじゃない~!可愛いから~!!」
多くの人妖に言い寄られて、紫に抱きつかれている霊夢を見ていると肩をトントン叩かれた。
「岳さ~ん!じゃんじゃん飲みましょう!」
振り返ると、一升瓶を片手に持ちながら早苗が酒の席に勧めた。
顔を見るとさっきより赤くなっている。
どうやら酔っているようだ。
「あ!早苗!!それ私の酒よ!!」
早苗の一升瓶を見て霊夢が叫ぶ。
5歳児の記憶なら自分の酒とわからないはずであり、先程から言葉もいつも通りになっている。
霊夢も隠すつもりはないようだった。
「・・・」
その霊夢を見て俺は正直残念な気持ちになった。
「岳!アンタも私が好きな酒って知ってるでしょ!早くあの女止めなさいよ!」
霊夢がこちらに話しかけてきたが、俺は何も答えず早苗を見る。
「岳さん?」
「早苗、身体を壊さないように飲みなよ」
「ちょっ!?岳!?」
「大丈夫ですよ~。こんなものくらいじゃ~・・・わたひはだいりょうぶれふ」
「いや!もうやばくなってるぞ!?」
俺はフラッとした早苗を支える。
「いやん!エッチ!」
「ちょっ!?変な所触ってないだろ!?」
「「岳!!やるなら徹底的にやって責任とれ!!」」
俺が早苗を支える光景を見ていた神奈子と諏訪子が叫ぶ。
「アンタ等神も何言ってんだ!?」
「岳さん、セクハラは感心しませんよ?」
「あらあら?岳さんも積極的になったわねぇ~」
「何ですか!胸が大きい方がやっぱり良いのですか!」
「ま、胸が大きい方が魅力的よねぇ~」
「は?所詮脂肪のかたまりだろ?」
「何ムキになってんの?あ、そうか。妹紅胸ないからねぇ~」
「お前もないだろ!」
「なんですって!」
気づいたら宴会の場が胸のある者とない者の口論へと変わっていった。
「おいおい!みんなやめろって!」
「そもそも少年は胸が大きい方と小さい方どっちがタイプなのよ?」
「え?いや・・・」
「大きい方でしょ?」
「いえ!普通サイズですよね?」
人妖たちに言い寄られている中、俺はふと霊夢が居たところを見る。
先程まで座っていた霊夢の姿がなかった。
「・・・霊夢?」
「なによ!勝手に人の酒で宴会するなんて!」
霊夢は夜の空を飛んでいた。
「岳も岳よ!戻った時覚えてなさいよ!」
霊夢は空を飛んでいたが、突然高度が下がっていく。
「え?ちょっと・・・」
戸惑いながらも霊夢は地面に着地する。
周りは田地が広がっていた。
どうやら人間の里へと続く道のりのようだった。
「どうして飛べなくなったのよ?」
霊夢はもう一度飛ぼうとしたが、身体が浮かぶことはなかった。
それでも飛ぼうとしていた霊夢の目の前に何かが出てきた。
それは2本足で立つ猿だった。
しかし、大きさは2m近くあり、牙が剥き出しの猿はどう見ても妖怪であった。
「はぁ・・・」
牙を剥き出しにして唸り声を上げている妖怪に対して、霊夢はため息をする。
「アンタ、私が誰だか知ってて喧嘩売ってんなら痛い目見るわよ?」
霊夢の言葉に妖怪は飛び掛かってきた。
霊夢は妖怪に向かって弾幕を放とうとしたが
「っ!?弾幕が出ない・・・!くっ!?」
弾幕が出せなかった霊夢は妖怪の攻撃を受けてしまった。
「痛っ・・・」
霊夢には誤算があった。
身体が小さくなった事により、霊夢の身体能力もそれくらいに落ちていたのだ。
よって、霊夢の霊力も普段と比べると極端に落ちていた。
今の霊夢では下級の妖怪を相手にすることすら難しい。
妖怪は霊夢を見て今度こそ食らおうと口を開けると、飛び掛かってきた。
「っ・・・!?」
思わず目を瞑ってしまった霊夢だったが、しばらく経っても妖怪の攻撃が来ることがなかった。
「・・・?」
ゆっくりと目を開けた霊夢が見たのは・・・