第1章 この男勇者になる
シャドウに見送られて町を出た。
太陽は高く上がりちょうどお昼時だろう。シャドウが作ってくれたお昼を食べるためにちょうどいい木影を探すことにした。
--なぜか人が倒れていた。
「……!! 大丈夫ですか!?」
返事がない……。道中で死体を見つけたとか笑えない。村に引き返してシャドウに言うか? そうするべきなのか?
「ぁ……ん。あんた誰や?」
「えっ……? 死体が喋った!」
「誰が死体や……。自分、初対面の人に死体とか失礼やなぁ」
マイペースにそう言う男性。いつの間にか座ってあくびを1つおとす。
「……ごめん。道端で倒れていたから魔物に殺られたと思って……。」
「別にかまへんよ。俺も倒れてるやついたらそう思うし。」
「ありがとう……。なんでこんな所で倒れてたか聞いていい?」
「そりゃー……」
グゥゥっと大きい音が男の腹から聞こえた。
「まぁこーいうことですわぁ。……自分なにわらってるん?」
「……ごめん…。随分大きな虫を飼ってるだなぁって思って……しまって……ダメだ…我慢できない! あはははは!」
「めっちゃ笑うやん。」
「ごめんって……。ふふ、お詫びとして僕のお昼半分あげるよ!」
僕はそう言いながら風呂敷を広げてサンドイッチを目の前に出した。男は嬉しいそうに「ほな! 遠慮なく!!」といい大きな口を開けてサンドイッチを食べた。大口を開けた時に見えた歯は鋭く光る犬歯が目立った。男は僕の視線など気にせず美味しそうに食べている。
「……そんなに見てどうしたん? 俺の顔に見とれてもうた?」
笑いながら男はそういった。確かに男の顔はイケメン言われる分類なんだろう。よくよく見たら同じ性別である僕から見ても整ってると思ってしまった。
「確かにイケメンだね。」
「えっ……否定してや! 恥ずかしいやん!」
「あはは……」
苦笑いをして僕はサンドイッチを1口かじった。さすがシャドウが作ったサンドイッチだ。パンは柔らかく舌触りがいい。中の具材である野菜がみずみずしいだけでなくお肉まで肉汁が溢れて香ばしい匂いが鼻を通る。時間が経ってもこんな美味しい料理作れるなんて天才だ。僕がサンドイッチに夢中になってると男は話しかけてきた。
「あっ名前なんて言うん? 俺は轟って言うねん!」
「トドロキ?」
「ちゃうちゃう。と・ど・ろ・き」
「と……とどろき?」
「せやで! それで自分はなんて言うん?」
「僕はセプラだよ。」
「せぷらなぁ! せぷらは俺の恩人やから途中まで護衛したるわ。」
「護衛なんて大丈夫だよ。むしろとどろきの方が心配だよ。」
「俺は大丈夫やで? せぷらより強いし。」
「道端に倒れてた人に言われてもなぁ……。」
僕は笑いながらそう言うと轟は考え込んだ。しばらく二人の間に沈黙が生まれた。少し気まずいなぁと思いサンドイッチをかじる。僕がサンドイッチを食べ終わると轟が沈黙を破った。
「せぷらは種族が違うだけで化け物だと思う?」
どこか僕を試すような目を向けてくる轟。きっと轟は種族差別のことを言いたいのだろう。おじさんからそのことを聞いた事あるが幼い僕にはよくわからなかった。しかしシャドウはおじさんの考えを聞いてとても嬉しそうにしてたのを覚えてる。ただただ僕の中ではおじさんが種族差別なんてくだらないって言ってことしか記憶にない。
「別に気にしないけど? 種族が違うだけで生きてるのには変わりないし。」
僕がそう言うと轟は満足そうに笑った。そして小声でなにか言っていたが僕には聞こえなかった。
「せぷらが種族差別しない人で嬉しいわ!」
「別に普通じゃあない?」
「……普通ねぇ……。確かに普通のことやなぁ。」
少し困ったように笑ったと思ったら急に僕の手を握り真っ直ぐ僕の目を見てきた。
「せぷらは俺が守るから安心してなぁ。」
いまさっきまでおちゃらけた声ではなくとても真剣な声で言ってきた。少し驚いてしまった。
「うん? ありがとう?」
「お礼なんてええのに!」
そう笑いながら言う轟。いまさっきあった真剣さなんて嘘だったかのように見えた。
「まぁしばらくよろしゅうなぁ!」
「えっ? よろしく?」
驚いて気が抜けた声でよろしくと返すと熱い握手をされた。何故こうなった? と考える時間など轟はくれないらしい。いつの間にか僕が引いていたリアカーを引き「はよ行こうや!」って言い先を歩いていた。
「ちょっ……! とどろき待って!?」
「なんや! 追いかけっこか!? スピードやったら負けへんで!」
「いや……違うから!」
どうやら都市に向かうさながら運動神経のいい浪人を拾ってしまった見たいです。