3、ドリームキャッチャー(ほのぼのショート)
※ドリームキャッチャーとは北アメリカの少数民族の伝統的な魔除けの装飾品である。
「悪夢を捕らえる」とされるクモの巣をモチーフとしており、下にある羽根飾りは寝ている者に「良い夢を垂らす」という。
現在では主にアクセサリーや装飾品として流通している。
◇
ある休日、ショッピングモールの雑貨屋にて。
竜太は一つの商品──ドリームキャッチャーの前でピタリと足を止めた。
その品にはソフトボール大の白い綿毛のような「なにか」が引っ掛かっている。
もがくようにモゾモゾと動いているその綿毛は、どこからどう見ても以前ハルに紹介した「招き綿毛」であった。
(これはどう見ても捕まってる……よなぁ……)
一体どこの何がどう絡まっているのやら。
いかにも鈍くさそうな白いフワフワは、まるで網から逃れたがるようにフルフルと音もなく震えている。
引っ張って助けてやるか、そのまま購入してケサランパサランのように飼うか、いっそ見なかった事にするか──
(宮原のじいさんもハルさんも、触ったら可哀想って言ってたけど……)
竜太の中で好奇心と良心と二人の言い分がせめぎ合う。
その結果──
(この場合は不可抗力だよね)
恐る恐る綿毛を摘んで引っ張ってみれば、いとも簡単に網から外れた。
触ったという感触は一切ない。
ほよん
ふよん ほよん
自由の身になったソレは、空中で数回跳ねると何の感慨も無さそうに薄れて消えてしまった。
(ま、そんなもんか)
別に感謝されたかった訳でもない。
むしろ竜太は数年に渡る「触ってみたい」というささやかな願望が叶った事に感動を覚えていた。
数日後。
「ハルさん、これあげる」
「わ、何?」
ハルは雑に押し付けられた品を戸惑いつつも受け取った。
「あ、これ見たことある。えぇっと……ドリームキャッチャー? へぇ、悪夢を取ってくれるんだ。嬉しいけど……でも何で急に?」
「キャッチ性能自体は本物みたいだったから、何となく。福の泊もついてるしね」
「? よく分からないけど、ありがとう。なんか凄そうだし、大切にするね!」
本当に大事そうにドリームキャッチャーを握りしめるハルに、竜太はどこか満足げに頷くのだった。




