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内気少女の怪奇な日常 ~世与町青春物語~  作者: 彩葉
番外編

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219/221

1、再掲・詩集

本頁は同作者の詩集(?)作品「十人十色の語り唄」に掲載していた内気少女関連のみを抜粋&加筆修正したものです。



①『追いかける』 宮原ハル


ねぇ待って

その一言が難しい

いつも先に歩きだす君

迷いがないその足取りに、私の足はもつれてばかり


追いつけそうで追いつけない

まるで時計の針みたい



ねぇ待って

そう言ったら困るかな

いつも素早い決断の君

せっかち気味な行動力に、私は迷って戸惑うばかり


追いつけそうで追いつけない

まるで影踏み遊びみたい



ねぇ待って

そう言う前に気付かれる

ふと思い出したように

何て事ないような顔で

急に緩められた速度に、私はようやく追いつける


追いつけない私を隣に並ばせてくれる

そんな君が好きなのだ



②『境界線』 天沼竜太


中身の見えない箱があったなら

誰もがきっとこう思う


『何が入っているのだろう?』


もしかしたらただの空箱かもしれない

でも面白い物が入ってるかもしれない

逆に物騒な物が入ってるかもしれないけれど


だから俺は箱に手をかけるのだ



見慣れぬ扉があったなら

大抵の奴はこう思う


『何の扉だろう?』


もしかしたらただの倉庫かもしれない

でも楽しい遊び場かもしれない

逆に危険な空間かもしれないけれど


だから俺は扉に手をかけるのだ



見知らぬ道があったなら

気付いた奴はこう思う


『どこに繋がっているのだろう?』


もしかしたらただの小道かもしれない

でも便利な近道かもしれない

逆に迷って帰れなくなるかもしれないけれど


だから俺は道の先を覗き込むのだ



好奇心は猫をも殺す?

そんな事は分かってる


だから大丈夫

箱も扉も開けてないし、道もちょっと覗いただけ


分かってるから大丈夫

箱も扉も少し覗いただけだし、道も一歩足を踏み入れただけ


まだ戻れるから大丈夫

──だからもう少しだけ覗いてみよう



③『力になるよ』 北本明里


好きなものって、多ければ多い程幸せじゃない?

私はそう思うんだよね。


楽しい事大好き!

嬉しい事も大好き!


美味しいものは仲良しのお友達と一緒に食べればもっと美味しいし

苦手科目の宿題だって、皆で集まれば楽しくやりきれる。


大人数でワイワイ騒ぐと寂しくないし

特別仲良しの子と少人数で親睦を深めるのもとっても素敵。


たまに疲れたり悩んじゃう事もあるけれど、大丈~夫!

だって私は一人じゃないんだもの。

信頼できるお友達がいて、本当に私は幸せ者だよねぇ。


だからさ。

あなたも、困った事があったらいつでも言ってね?



④『変化』 桜木陸斗


重い前髪に伏し目がちの無表情

時々引きつったように息を飲む


そんな君がいつからか

少しだけ前を向くようになった

頑張っているんだなぁ

他人事ながら感心した


いつも下を向いていて

時々怯えたように肩を揺らしてる


そんな君が突然に

髪をバッサリ切ってきた

思いきったなぁ

感心しながら興味が湧いた


いつも一人の時間を過ごし

声をかけられても()()()だけ


そんな君がいつからか

クラスの輪に馴染んでいった

良かったな、本当に

直接話した事はないけどそう思う



地味な奴だと思ってた

でも本当は凄い奴だと思ってた


いざ話をした君は

思った以上に普通の人で、見た目以上に大人しく

思った以上に何も出来ない、でも俺以上に凄い奴だった


勝手な思い込みはさよならだ

俺と友達になって下さい



⑤『拝啓、馬鹿兄貴』 大和田佳澄


──────────


あー、えっと

久しぶり

元気してた? ってのも変な質問か


アタシは元気にやってるよ

……なんつーかさ

今年のお盆はいつもと違う気がするね


お盆前に一度帰って来てくれたからかな

今まで一度も帰って来てなかったって分かった時はちょっとムカついたけど、許すよ


一緒に夏祭りに行く約束破った事とか、マジで怒ってないからね

だから安心してまた来年のお盆に……いや、


いつでも帰ってきなよ


お兄ちゃん


──────────



⑥『※口には出さない』 八木崎浩二


道端の小さな石っころ

蹴っ飛ばす価値もねぇ

一瞥だけはくれてやらぁ


道端の小さな石っころ

いちいち視界に入ってウザってぇ

いつ割れっかが見物だな


道端の小さな石っころ

今日も呑気に邪魔くせぇ

聞こえねぇよう舌鳴らす


道端の小さな石っころ

前にも増して丸っくなった

少しは尖れよ転がんぞ


道端の小さな石っころ

その内車かなんかに轢かれそうだ

面倒くせぇと蹴っ飛ばす


道端の小さな石っころ

最近妙に生意気だ

調子に乗んなとひと小突き


道端の小さな石っころ

だっから何でわざわざそっちに転がんだ

馬鹿かお前はざっけんな


道端の小さな石っころ

今日も間抜けな面してやがる

その内その辺のクソガキにでも拾われっちまいそうだ


さっさと磨いてくれる奴に拾って貰え

俺ぁ絶対(ぜってぇ)拾ってやらねぇ



⑦『嫉妬』 宮町リナ


ドロドロ、ジュクジュク


熟れすぎた柿みたいなこの感情に、何て名前をつけようか──


ギリギリ、ギュウゥ


万力で締め上げられるようなこの胸の痛みは、どうやって晴らそうか──


ほら、また一つ

ほら、また二つ


嫌いな奴等の歪む顔


ざまぁみろ、ざまぁみろ


ほら、また一つ

ほら、また二つ


嫌な奴等の不幸が光る


あぁ楽しい、あぁ楽しい


ドロドロ、ジュクジュク

ギリギリ、ギュウゥ──


この感覚は終わらない

何べんだって繰り返す


あぁ苦しい、おかしいなぁ



⑧『やり直しフレンド』 志木由羽子


楽しい時は一緒になってバカ笑い


腹立つ時は一緒になって大激怒


二人の自撮りも慣れたもの


好きな人の相談したり、親のグチ言ったり、苦手科目の補習に頭抱えたり──


毎日会ってるのに休み時間だけじゃ全然話し足りなくて


放課後とか休日とか、いっぱいいっぱい遊んだね


何でも話せる一番の友達


私の事を一番理解してくれる友達


一番大好きな友達


そう思ってた



でも私、全然あんたの事分かってなかったのかも


好きな人の事も、家族の事も何もかも


特に聞いてもいないのに、何故か分かった気になっていた


もし私が何か聞いてたら、あんたは教えてくれたかな



もしまた会えたら聞いてみよう


いっぱいいっぱい聞いてみよう


その日が来るまでいくらでも待つよ


友達だもの



⑨『※顔には出さない』 七里忍


耳を澄ませ


目を凝らせ


全身で感じろ


喰われる前に掴み取れ


呑まれる前に飲み干せ


最も身近な隣人共は


いつだって闇の中で牙を剥く




手を伸ばせ


腰を据えろ


全身で受け止めろ


(いざな)う声は袖にしろ


拒絶の言葉は包み込め


最も身近な隣人共は


いつだって闇の中で喚いてる




息を吸え


声を出せ


全身で立ち向かえ


巡る悲しみは終わらせろ


詮無き恨みはここまでだ


最も身近な隣人共は


いつだって救いを求めてる




「おぉっと良かった間に合って


はいはい、どうも。おつかれさま」



⑩『対人スキル』 川口大地


基本は微笑み三割増し


   でも悲しみ怒りは控えめに



口調は常に柔らかく


   でも舐められないようハキハキと



話す相手の表情読んで


   でも見つめ過ぎには要注意



会話の流れを早めに掴み


   でも悟られないよう自然に合わせ



ノリ良く、程良く、テンポ良く


   でも引き際にも注意して



困ってる友達には親切に


   でも気遣わせないよう、時には軽いお礼を求めたり



嫌な人には関わらない


   でも必要な時には笑顔で対処



これが俺の生き方で

これが俺の過ごし方


生きやすいけど、生きにくい

生きやすいのに、息が詰まる


   たまには素顔で深呼吸してみたいんだけど


<あとがき>


流石に丸ごと使い回すだけでは申し訳ないので、次の頁では新作の詩もどきを五つ追加します。

(次回の更新は1週間後位の予定です)


ちなみに元掲載の「十人十色の語り唄」はコチラから↓↓

https://ncode.syosetu.com/n2330gt/


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