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内気少女の怪奇な日常 ~世与町青春物語~  作者: 彩葉
四章、「人形」「不審者」

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20/221

2、人形②

 翌日、ハルは大和田と共に会場である児童館へと向かった。

大和田の話によると北本が所属する演劇部は人数が少なく、役者や裏方、演出等は全員で兼任しているらしい。

そんな話をぎこちなく交わしながら、二人はバスに揺られた。


 少し早めに着いたにも関わらず、児童館は予想以上に賑わっていた。

館内は案外広いようで読書スペースや娯楽室もある。

劇はバスケットコートが一つあるだけの小さな体育館でやるようだ。


「へぇ、結構人がいるね。もっとガキんちょ数人とかかと思った」


 大和田はヒョイヒョイと人をかき分け、あっさりと左後方に空いたスペースを確保する。

遅れを取ったハルが大和田の元に辿り着くと、彼女は既にスマホを弄っていた。


(SNS、ってやつかな。何を呟いてるんだろ……)


 少し気にはなったが、SNSの類いをやってないハルには聞いて良いものなのかすら分からない。

騒ぐ子供達の声をBGMにひたすら開演時間を待つ。


 手持ち無沙汰なハルはぼんやりと周囲を見渡した。

舞台スペースには簡素な箱や棚が置かれており、掛け軸や刀、日本人形などの小道具がセットされている。


(昔話か、時代物かな? 桃太郎とか?)


 元々劇場ではないため、舞台となるスペースの左右には小さな幔幕が張られている。

あの狭い中に演劇部員がスタンバイしているのだろう。


「あ、始まるっぽい」


 一年生らしい部員が司会の挨拶を始めると、大和田はスマホを仕舞い、デジカメを取り出した。

どうやらムービーを撮るつもりらしい。

素っ気ない言動や態度とは裏腹に、案外真面目に友人を応援しているのかもしれない。

大和田の意外な一面を見ながら、ハルも舞台に集中した。



 演目は桃太郎を改変した子供向けの創作劇であった。

既知の物語が面白おかしく変わっているので、とにかく子供達のウケが良い。


 北本がまさかの猿役で、これには流石のハルも大和田と一緒に大笑いしてしまった。

しかし物語が進むにつれ、ハルの中で小さな疑問が生じる。


(あの人形、いつ使うんだろ?)


 赤い着物の日本人形が妙に目立つのだ。

始めは和風な世界観を演出する為に棚の上に飾られているのだと思っていた。

場面が変わって棚に風景が描かれた布が掛けられても、人形は変わらずそこにあった。

また場面が変わり、棚に海の風景の布が掛けられると、いつの間にか人形はハリボテの船の脇に置かれていた。

ずっと注視していた訳ではないので誰が人形を動かしたかまでは分からない。


(ラストで使う重要アイテムかな)


 劇は大いに盛り上がり、そのまま終演を迎える。

結局、最後まで人形の出番はなかった。

盛大な拍手の中、ハルは微妙にスッキリしない気持ちで拍手を送った。


「まぁまぁ面白かったね。アカリが猿とかチョーウケんだけど」


「う、うん。そうだね」


 確かに思い返すだけで面白い。

ハルは大和田と声を出して笑い合った。


(良かった、大和田さんと普通に話せてる)


「あ、そうだ。ムービー見る? アカリもまだ片付け忙しいだろうし、待ってる間暇っしょ」


「うん、見たい見たい」


 観客がバラバラと散っていくのを尻目に、二人は近くのテーブル席に着くとデジカメを覗きこんだ。

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