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Artificial Intelligence War  作者: 東雲 良
第三章 未知の存在を標的に
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ブラックボックスに手を掛けて

 さて、随分と遅い更新にもうこんな小説読むかふざけんな的叱責を受けても致し方ありませんが、待って良かったと思っていただけるような物語を書ければと思っております。

 メアリー、カタリナ、そしてスマートフォンを握る理系高校生・結城陸斗。

 彼らの冒険を見届けていただければ。

 ぜひよろしくお願いします。






「がっ!?」


 今日で何度目の気絶だろうか、と目を覚ました瞬間に結城陸斗は茫洋と考える。


 そして再びの強烈な痛みは股間からであった。


「ぐおうぁあああ……」


「どうした、また急所を打ったのか? いちいち行動不能になるくらいならプロテクターでもしておいたらどうだ」


「お前は俺を馬鹿だと思ってるだろ。いい加減に誰が犯人かくらい分かるぞ」


「ふん」


 多少は人を疑う事でも覚えたか、といった笑みであった。


「クレバーになれよ、結城陸斗。いつまでもクソガキのままでは足元をすくわれるぞ。さっきも戦況を見ればメアリーを一度諦める必要があった事くらい分かったはずだ」


「……それでも」


「?」


「それでも俺は、簡単に置いてけぼりにするようなヤツにだけは、なりたくないんだよ」


 その言葉は、かつてレアメタルのせいで地下に幽閉された事のあるカタリナにどのように響いたのだろうか。


 一度咳払いをして、思考のレールを切り替える。


 その間にもキョロキョロと周囲を見渡して、陸斗は情報を集めていた。ポケットからスマートフォンを取り出してカメラで撮影しているのは、危険な状況にある時の癖のようなものなのだろうか。


「……セレナ。メアリーとの距離は?」


『ぼーす。オフラインだと言ったでしょう。GPSも機能しません。ポケットに入れられていてはどれほどの距離を移動したのかも分かりません。意識と共に前提条件も吹っ飛びましたか?』


「はあ、世界が厳しい……」


 スマートフォンにインストールされたアプリだけでもこの罵り様。

 地下のセレナの本体に繋がった状態ならば、心をへし折られるレベルで蔑まれていたかもしれない。


 何と言っても計算できる桁が段違いだ。スマートフォンの中にインストールされたセレナが百の位までしか計算できないとしたら、スパコンに繋がったセレナは億や兆の位では利かない。


 ツイていない。心強い味方が万全の状態ではない事は確かであった。


「ならネットに一度繋ごう。お堂の方に行けば衛星から情報を受け取れるって話だったよな?」


「お堂ってあの馬鹿デカい中央の建物か? 歩いてすぐだが罠がないとも限らんぞ」


『しかしそれを言い出してはここから一歩も動けませんが』


「必要なのは情報だよ、カタリナ。ボールの軌道くらいしか計算できないアプリよりも、核の発射コードに手が届く人工知能の方が頼りになる」


 カタリナが小さく息を吐いた事で、次の目的地は決まった。


 お堂に行って衛星経由でスマートフォンをインターネットに繋ぐ。いい加減にあの万梨阿の無双ぶりを抑え込む方法を見つけないと、殺されるのは時間の問題だ。


 ただし永遠と灰色のコンクリートでできたトンネルみたいな場所に幽閉されていたカタリナ=グラフィックにとって、こういった森林じみた神社は慣れないのだろう。命の懸かった戦闘モードなら気にならないのだろうが、スイッチオフの状態で歩くと色々と気になるものがあるらしく表情がえらい事になっていた。


「ちっ、草がうぜえな。足に当たるだけでイライラする」


「お前と一緒にハイキングは行かないって心に決めたよ」


「感覚があるというのも善し悪しだな。草はまだ良いが虫が接近したせいでサイボーグ部分のセンサーが脳に余計な信号を送ってきやがる」


「あの地下に虫なんかいなかったもんな」


「虫よりもひどいもんは山ほどあったがな」


「済まないカタリナ、反応に困る。それってお前の事も言ってるんだよな?」


「んな訳ねえだろオブスとかだよぶちのめすぞ」


 虫よりも腹が立ったのか、サイボーグ兵器が奇妙な音を立てていた。


 いつこっちを向いて唸り声を上げるのかヒヤヒヤものである。


 ややあって、お堂の方へと辿り着く。周囲に人影はないが、高い木が林のように立っているので隠れるための遮蔽物はいくらでもある。


 油断はできない。


「セレナ。ここからオンラインには設定できないのか?」


『検証中……完了。どうもまだ電波が入りませんね。やはり中央に向かう必要があるでしょう』


「よし、入るぞ。可能な範囲に入り次第、すぐに衛星経由でネットに繋げ」


『オーダーを承認』


 扉に手を掛ける。

 ぎぃ……と音を立てて、重々しい木製の扉が奥へと開いていく。


 そこには……。








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