巫女の掌の上
ぺたりと巫女少女の太腿にそれを押し付ける。
自分にも電流が流れようがどうでも良い。
地下でオブスを目撃した時。カタリナとの邂逅。僧侶がパトカーを叩きのめした映像。今まで人生で何度か味わった事がある予感が、先ほどからビシバシと伝わってくるのだ。
こいつは。
やばい。
「セレナ、スタンガン起動‼」
『オーダーを承認』
そして。
バッヂィ‼ という、意識を切る衝撃と。
音が。
しなかった。
「……あ?」
「む☆ ふ☆」
「せれ、な。セレナ、くそ、バグか!?」
「いいやー?」
『いいえボス。確かにスマートウォッチの方はバグが連発していますが三七七回、瞬間的に再起動を行いつつスタンガン機能を起動させました。つまり正常に機能したはずです』
「ならどうし……ッ!?」
「人生に失敗は付き物じゃよ。原因なら夢の中で考えろ、ゆるりとな」
直後、巫女の少女は太腿に押し付けられたスマートウォッチを握り、そのまま陸斗の手首ごと捻り少年の胸にそれを押し付けた。
まるで剣術の達人が斬りかかって来た相手の剣の角度を変えるように。
さらに意味不明な言葉があった。
「起動。……すたんがんか、物騒じゃのう」
やがて時間差での爆発があった。
凄まじい音と共に高圧電流が流れ出し、陸斗の体が意識と共に軽く飛んだのだ。




