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Artificial Intelligence War  作者: 東雲 良
序章 曖昧な定義を明確に
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くすぶる何か





「セレナ? どうした」


『おはようございます、ボス。ご報告します。一時間ほど前、ミスメアリーから情報を抜き取られました』


「え、あ?」


『SNSアカウントにて、よく登録情報で使用する「パスワードを忘れた際の質問とその答え」を丸ごと閲覧されたと思われます。他にもメモ帳アプリなどの個人情報に繋がるものに対する不正アクセスを二五七件ほど検知しています』


「確か好きな動物は? とか初めて作った料理は? とかくだらない質問ばっかり載ってるあれだろ? 何の意味があるってんだ」


『それよりもわたくしのファイアウォールが簡単に突破されたのがショックでなりませんが』


「もう前に何度か突破されてるだろ。がんばれ、ファイアウォールの強化はお前に任せてる」


『ええボス』


 テーブルに座りながらこんな事を言い合う陸斗とお手製の秘書プログラムだったが、さっきまで機嫌良さそうに料理していたメアリーが近づいてきてゴトリ! と乱暴に皿が置かれる。


「……むう」


「びっくりした。何だ、ソーセージ山盛りだけどパンは?」


「……今軽く焼いているところです。ただし陸斗のこの大きなソーセージを私は挟んであげません、自分で満足してください。つーん」


「うんもう少し言葉を選ぼうか」


「?」


「い、いや何でも。別にホットドッグぐらい作れるよ、ありがと」


「どういたしましてです」


 うん? 何だかありがとうの一言で随分と機嫌が直ったような? と首を傾げる理系高校生。


 ……それにしても無駄に高性能だ。

 機嫌が良い悪いから声に乗った感情の波。それら全てが人間に読み取れるように瞬時にプログラムされる機能の高さ。


「……怖いな、技術ってのは」


 新妻アンドロイドには聞こえないように、というより独り言と認識されるようにポツリと呟く。


 本日は平日。


 つまり今日も今日とて学校である。


『平和ですね、ボス』


「これが普通なんだよ、セレナ」


 そう、世界は救われた。

 これからは、こんな風に幸せな日々が永遠に続いて行く。






・・・・・・・・・・・・・・・・




 本当に?

 そんな単純な話で済むのか?


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