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Artificial Intelligence War  作者: 東雲 良
第四章 ただの喧嘩で構わない
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戦争開始、武器はなし




 暗い。



 スマートフォンのフラッシュを輝かせると位置が特定されるとでも思っているのか、先ほどから少年は電灯らしきものを点けていない。


 しかしカタリナには赤い石がある。

 視界そのものと処理する脳の方に補正が掛かっているので、少年の姿を何の問題もなく捉えられている。


 そして全ての前提条件はどうでも良い。


 ただのガキが分不相応に地下を支配する神に挑んできただけの話だ。


 カタリナ=グラフィックからすれば、その少年の胸に何が宿っているのかは分からなかっただろう。


 だから無視した。


「ふん。気に入らん」


 右目で『ある物』の反応を捉えられない。カタリナは特に興味もない有名人でも見かけたような口調で、


「レアメタルはどうした? 地上に置いてきたのか」


「お前に奪われて地上に逃げられても困るからな。地下へのゲートを開けるだけ開けて、ある人に保管してもらってる」


「大方フェリネアのヤツだろう。そして言葉が不自由という訳でもないのなら、一つ間違いがあるぞ」


 スマートフォンに似た、それでいて明確に違うガラスボード。


 カタリナの手に握られたそれが、茫洋とした光を放つ。表示されているのは乱数表にも似たデータ。カタリナが五〇年以上かけても解けなかった、赤い石の機能を停止させるアルゴリズムグラフ。


「地上に逃げる? 侵犯される、の間違いだろう?」


 左目に埋め込まれた赤い石の色彩が限界まで薄れて、透明になる。

 機能を失い、ゲートを通過させる体にしてしまう。


 だがやはり、その直前に。



「セレナ。やれ」


『ええボス』



 パァン‼‼‼ という破裂音が響き渡る。

 まるでワイングラスを高音域の歌声で割る芸当だった。


 アルゴリズムを解読したデータもろとも、ハンドサイズのガラスボードが弾け飛んだのだ。破片が勢い良くカタリナの頬をかすめて、ゾンビの頬に一筋の傷を作る。


「……貴様」


「借りは返したぞ、地底人。俺の秘書の使用料にしては安いくらいだけど」


「私もツケは払わせる性格だ。五〇年を超える悲願を台無しにした代金は頂戴するぞクソガキ」


 明確な私怨のこもった瞳があった。


 透明になりかけていた石も血のような赤に染まる。


 ガバリと開くのは右の太腿だ。

 薔薇の花のように開花したサイボーグ兵器が牙を剥く。アーク溶断に似た輝きの光線が陸斗の上半身と下半身を分けようとする。


「終われ」


 決着がついたと確信する。


 先ほどの衝突でも少年が生き永らえたのは、メアリーの助けがあったからこそだ。


 それこそ人間の反応速度で回避が追い着くような、生温い攻撃ではない。


「陸―――‼」


 地面に転がったサッカーボール同然の電磁性複合細胞の塊が何か言っていたような気がするがどうでも良い。


 代金を頂戴する。


 死神と化す。


 だと。



 いう。



 のに。




 ばしゅう‼ と。

 レーザーに似た光線は、全く見当違いの的を撃ち抜いたのだ。




「……あ?」






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