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Artificial Intelligence War  作者: 東雲 良
第三章 人工知能戦争
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意味ある問いかけ





「不正解だ」


 陸斗の心配に対して、フェリネア=グラフィックは冷静に否定した。


「ゲートを通った者にレアメタルは付随する。その口振りだと君がカタリナよりも先にゲートを通ったんだろう? だったらポケットを叩いてみろ」


 どこのポケットを叩いても何もなかったが、スマートウォッチのセンサーが反応してスマホからこんな声が響く。


『ボス。フードの中に異質の反応があります』


「?」


 パーカーに手を突っ込んでみると、果たしてそれはレアメタルだった。


 確かに一度、メアリーを地下から連れ出した時はメアリーがレアメタルを持っていた。あれはゲートを通った法則による結果だったのか。


 そういえば、メアリーがゲートのある位置に陸斗を突き飛ばしたのは、カタリナがレアメタルを盗られる可能性を示唆してからだった。


「……地上からオブスが急にやってきたのは?」


「君が理解している通り、メアリーが地上に出たからというのもその一因だ。ただしあれは妹の操作なしではあり得ない。レアメタルがなくてもオブスを送り出す方法を開発でもしたか」


「……はあ、駄目だ。セレナ、情報がゴチャゴチャだ。俺の頭を整理してくれ」


『ええボス。頭に入れておくべきは次の通りです』


 セレナは充電中のスマートフォンにパパパッと次々に項目を映し出す。


『一、ミスカタリナは地下の生物をある程度操れるが地上には出られない。二、この制約を解放するためのレアメタルを渡してはならない。この二つが重要です』


 そう、長話はこの二つの真実に尽きる。


 歴史や身の上話など、興味のある者だけ覚えておけば良い。

 結城陸斗が先ほどから見ているのは白いアンドロイド少女のみだ。


「単純だな」


『いいえボス。ここからです』


「?」


『ミスメアリーを救い出す。ボスはそう仰いましたが実際はどうするおつもりですか。このままボスがレアメタルを使って地下に向かい、ミスカタリナを上手く跳ね退けてミスメアリーを地上に連れ帰ったとしても再びミスフェリネアの妹は牙を剥きます。それこそゾンビのように何度も』


「ああ、オブスがまた地上を席巻するだけだろうな。今はメアリーが地下に戻って機能を解放してるからオブスが止まったんだろうけど」


 これが正解か不正解かは分からなかったが、フェリネアが口出ししてこない事からもどうやら正解らしい、と陸斗は適当にアタリをつける。


 しかし問題ない。


「……心配するなセレナ。そこについては考えがある。だけど問題はやっぱりいくつかあってだな」


『ええボス。問題はいくつもあります』


「まずこの時間でもやってるバイク便を一つ頼む。それとレベル2まで権限を解放、俺以外のオーダーも通すようにしてくれ」


『オーダーを承認。ただし意図を明確にしてくださいますと助かります』


「その前に」


 一度スマートフォンをパタリと伏せる。


 これは人工知能の介在しない問題だ。


 即ち、フェリネア=グラフィック個人の議題。


「……フェリネア。俺はお前の妹をどうすれば良い?」


「なに?」


「地下から連れ出せば良いのか、それとも壊せば良いのか? ずっと幽閉しておくってのもアリかもな」


「何を……」


「お前が決めるんだ、フェリネア」


 真っ直ぐに。

 世界のために声を荒げる事のできる、ある意味ではアラン=グラフィックと同じ性質を持つ少女に今一度挑みかかるように目を合わせる。


 平等に扱う、いいや、むしろ敬意を払うためにそう言った。


 まるで城から出れなくて拗ねてしまったお姫様に明日のオヤツは何が良いか聞くくらい気軽に、それでいて人生そのものを左右する重みを含ませる声で。


「……お前が決めるべきだ。これからの人生を妹と生きたいのかどうか」


「それは……」


「聞かせてくれ、フェリネア=グラフィック。俺は、いいやお前はカタリナをどうしたい?」






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