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Artificial Intelligence War  作者: 東雲 良
第三章 人工知能戦争
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戦争の責任感




「メアリー」


「……分かっています、陸斗。もはやお答えできませんと答える限界値を迎えました」


「こうなる事は分かってたのか」


「これほど早いとは思いませんでした。私の機能の制限により、この事態は避けられたはずでした」


「つまりイエスなんだな!? こんなに大事な事を黙ってたのか‼ 一体どれだけの被害が生まれると思ってた!?」


「陸斗、私はただ……」


「お前は一体何なんだ!? あの地下空間からお前を連れ出したのは俺だ! つまり全て俺の責任になるんだメアリー‼ お前が黙っていたせいじゃない、俺が追及を怠ったからだ‼ お前は俺を大罪人にしたいのか!?」


「……申し訳、ありませんでした」


 頭に血を上らせているばかりでは、何の生産性もない。

 やはりどこまでも冷静なのは秘書プログラムであった。


『ボス。今は必要な事を優先なさるべきです』


「分かってるセレナ。今すぐ答えろメアリー、お前の知ってる情報を‼」


「……はい陸斗。この際、致し方ありません」


「まず第一に」


 無表情なメアリーと向き合いながら、陸斗は必要な事を並べていく。


「この事態を収める方法はあるのか? 具体的な手段はこっちで用意する、だから教えてくれ、何か方法があるのなら」


「はい陸斗。オブスは非常に比重の高い低知能生物です」


「オブス? ヤツの名前か?」


「はい陸斗。地下から来た生物が侵略者という定義であれば、私も当てはまってしまいます」


「……ならあのオブスには何か弱点はないのか。地下空間では猛禽類の群れにやられていたみたいだけど」


「ノー。彼らに弱点はありません」


「……」


『ボス。話を先に進めてください』


「……低知能ってのは?」


「単細胞という事です。動く標的を追い、捕食できるものを捕食する。金よりも比重が重いため、オブスに破壊できない物体の方が珍しいでしょう」


「だったらどうしてマンションにアタックしてるんだ、あいつ」


「マンションの向こうに何か目標があったか、それともマンションに入って行った人間を追ったのか。何かしらのきっかけがあったに過ぎないはずです」


 陸斗はわずかに考える。


 スマートフォンがぶるりと振動したのも反応が遅れるほど、思考に没頭していく。単騎で一台のスーパーコンピューターを組み上げた元はハイレベルな脳がそのギアを上げる。


『どうなさいますか、ボス?』


「先にお前の意見を聞かせてくれ、セレナ」


『ええボス。侵略者改めオブスは、おそらく打倒、破壊は難しいでしょう。根本的解決に目標を定めるべきかと』


「根本的解決、か」


『即ち、彼らを根絶する方法を探すべきです。目の前のオブス一体ではなく、残り六六体のオブスも行動不能にさせる一手を打つのです』


「……それ、一体を相手にするよりも難易度上がってないか?」


『失礼ながら、ボス。難易度が上がれば諦めるのでしたら、そうオーダーをなさってください。今は最善の手を算出するというタスクを実行中です』


「……そうだったな」


 はあ、と一度だけ深いため息をついてから、陸斗はメアリーに再び視線を投げる。やはり情報が不足し過ぎている。アンドロイド少女に頼るしかない。


「メアリー、あいつらを停止させる都合の良い方法はあるのか?」


「ノー。ありません」


 絶望的な回答には続きがあった。


「しかしキーとなる物体があります」


「?」


「レアメタルです」


 意外な名詞が飛び出してきた。


 ここで五日間調べ上げたレアメタル以外の鉱石、という訳ではないだろう。そもそも地下に放り込まれたのはアレが原因だったのだ。


「……よくよく考えれば、当然の帰結ではあるのか」


「あのレアメタルにはいくつかの機能があります。ここで詳しく説明してもおそらく理解が及びません」


「もう細かい事は後回しだ。一番知りたい事だけ聞くぞ」


「はい陸斗」


「あのレアメタルが手に入れば、この地獄は収集がつくんだな? せめてそのメドが立つ」


「はい陸斗。その通りです」


 事務的な受け答えが逆に安心感を与えてくれる。


 ならば行動は決まりだ。

 メアリーに聞きたい事、教えて欲しい事は山ほどあったが、全ての責任を取ってからでも遅くはない。




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