行事内容は理解しておいた方がタメになる
くそこんなの聞いてないぞ。
意識が朦朧とする中、自分の体に魔法によって治癒が起こる。
それでも動ける気力は乏しい。
俺はここで死ぬのか。
そんな弱気な考えが頭に浮かぶ。
それでも、力を振り絞り、腕の中にあるものを握りしめる。
ここで死ぬわけにはいかないのだ。
俺には救わねばならない人物がいるのだから。
最後の力を振り絞り立ち上がる。
体は先程よりも言うことを聞くらしい。
頭から流れている血のせいで、視界がぼやけている中、敵を直視する。
「おぉー!」
叫びと共に体を起こす。
その直後。
「「バァン!」」
突如上空から何者かが下りてきた。
いや俺はその人物を知っている。
「勝手に死なれたら困る」
数時間ぶりにその男に再開した。
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「起きてるー!」
朝早くからいらない人型目覚ましが鳴る。
「うるさい。それと勝手に入ってくるな」
再び布団を被ろうとする。
「今日は抽選会だよ!わくわくして寝れなかったよ!シルネもさっき起こしてきたから!何か不機嫌そうだったけど」
だろうな。
そんな迷惑極まりないハーティに壁に掛かっている時計を指差す。
「あれ見えるか?短い針は何処を指しているでしょうか?」
ハーティはニコニコしながらこちらを向き、
「4時!」
「帰れ!」
ハーティを部屋からドロップキックで追い出し、もう一度眠りに着く。
が、変に目が冴えて眠れない。
寝れる方法を模索しながら、部屋を見渡すと、先程指で示した時計に目が行く。
まぁこの部屋自体その時計とベットしかないから自然と目の行先は限れるのだが。
でもこの世界に何故時計があるのだろうか?
時間という概念はこの世界にもあるだろうが、それをこの世界ではどうやって定めたんだろうか?
俺が元いた世界で古く知られているのであれば、日の出、日の入りであるが、結局地球の自転で定めれたた。
そうと考えるならばこの世界で日の出や日の入りで決めるのは可能であるだろう。
というかそれしか浮かばない。
そんなことを考えている内に短い針は五時を指していた。
抽選会は昼の一時からだ。
俺はもう一度睡眠に挑戦する。
「起きなさい。起きなさい。起きなさいー。てか起きろ!」
激しく体を揺すられ目を覚ます。
「はぁぁ~。おはよう。てかハーティじゃないのか?」
てっきりハーティがまた起こしに来たと思ったのだが、そこにいたのはシルネだった。
「おはようじゃないわよ。後一時間後に始まるわよ。ちなみにハーティは下で寝てる」
あいつ遠足の日の前日眠れないタイプだな。
それから支度を済ませた俺たちは街の中心の噴水広場に向かった。
「もう結構人がいるわね」
確かに。
夏休みの土日に遊園地に訪れた時の様である。
「これじゃ番号わかんなくないかな?」
先程までテーブルに涎を垂らして寝ていたせいか頬が白いおバカなハーティさんがまともに心配していた。
「ハーティだったら突っ込め!とか言いそうだけど」
「私を何だと思ってるの!」
「「馬鹿」」
シルネと意見が一致したようである。
「大丈夫ですよ。お嬢さん方」
いつの間にか隣立っていた、その貴族っぽい金髪男はその髪をなびかせながら言った。
「抽選番号が呼ばれるとその抽選権から魔法陣が発動するので心配ご無用ですよ」
突如として現れた割に親切なやつである。
「このシステムお前が作ったのか?」
「・・・。
お嬢さん方心配なら前の方にご案内させていただきましょうか」
おいこいつ俺を無視しやがったぞ。
完全に女しか興味がないだろ。
まぁここの周りを見渡す限り男しかいないからかね。
「いや結構です。シュウもいるので」
「うんっ!」
こういうときは頼もしいんだなお前ら。
いざというときもこれならいいのに。
「わかりました。念のためここにいましょう」
あきらめが悪いこと。
「さぁやって来ましたーーー!一年に一度の抽選会!広場にお集まりのお客様抽選権はお持ちでしょうか!」
噴水の前のステージに現れた司会者が開始宣言を軽く済ませると、各自に参加者の証の抽選券の確認を行う。
指示に従い、ポケットから抽選権を取り出す。
俺の番号は9179 8081 0271 019。
「抽選権に書かれている番号も確認をお願いします!なお当選番号は私が発表いたしますが!もし聞き取れなかったとしても、その後抽選権から当選のサインの魔法陣が浮かび上がるのでご安心ください!ではまず今回の目玉賞品の紹介をさせていただきましょう!剣の中でも珍しい疑似色彩が可能と言われて名高い剣でございます!」
司会者が両手でその剣を上に掲げる。
刀身は1mであろうと思われる青白い片手剣。
疑似色彩が何かわからないが、人々の雄叫びなどからとても高価なものだろう。
「色彩って確か・・・」
シルネはいつものように考え事。
「かっこいいー」
ハーティは言うまでもない。
がしかし、かっこいいのは確かだ。
あれを・・・。
「それでは行ってみましょう!最初は水をすぐに吸収してくれるタオルからだ!番号は9179 8081 0271 020!」
おっ。
出落ちかと思ったぜ。
そんな紙一重で交わした俺の横を貴族らしき男が横切って中心へ向かって行った。
「あれ?」
「何かもう当たったみたいよ。あの剣が俺を呼んでいるとか言ってたのにね」
考え事が終わったのか、シルネは貴族らしき男から今後の黒歴史を入手していたようだ。
「あれ?戻って来たよー」
手で望遠鏡を作って見ているらしいが、それ意味ないぞ。
「お疲れ様・・・」
静かな足取りで戻ってきた貴族らしき男に対し、一度も話をしていないとはいえ、可哀想なので言葉を投げかける。
「最後に一言いいか?」
下を向いていて顔は窺えないが相当落ち込んでいるんだろう。
「あぁ」
「君は僕のタイプだった!次会ったら運命と思っていてくれ!」
それだけを言い残すと貴族らしき男は去って行ってしまった。
「・・・」
「よかったわねっ」
楽しそうなシルネ。
「いいなー」
笑顔のハーティ。
「「ボコツ!」」
「「痛い!」」
「何にも嬉しくねーわ!」
なおこの一部始終は周りの人達には聞こえていなかった。
その後も当選番号は次々に発表が行われていたのだが、一向に俺の持っている番号は呼ばれていなかった。
そして残る賞品が二つになった頃。
「結構人いなくなったわね」
この抽選会は全員が必ず当たる仕様らしく、当たった人達はダブルチャンスなどはないため、次々に帰っていく。
しかしそれにしても人がまだ多い。
誰が当たったのかという野次馬精神が働くものばかりなのだろうか。
いや。
「この抽選会に最初はいなかった人が多数いるわね」
そうシルネの言うとおり。
明らかに今回の目玉のために集まったと思わしき人物だらけである。
「これはやばいかもな」
「確かに。でもあれはあの色彩の能力を扱える剣なのよ。こうなるのも必然だと思うけれど」
「その色彩って?」
「そうね。色彩は・・・」
「もう次だよ!」
ハーティが説明を遮る。
「次って、俺のが当たるかわからん・・・」
待てよ。
これは確実に当選するタイプの抽選だ。
つまり二賞が発表された時点で既に確定してしまっているのだ。
「そして栄えある疑似色彩の剣を手にしたのはこの方だ!9179 8081 0271 019!」
俺の番号。
もちろん抽選券からも魔法陣が浮かび上がっている。
普通の世界の俺なら喜んで取りに行くが、今回はやばい気がする。
シルネを見つめる。
「それがいいと思う」
納得しているみたいだ。
今回はやめておこう。
「はーーーい!」
おいっーーー!
テメェー!
「おい勝手に手を挙げてんじゃねー!今回はなぁ」
「こちらにどうぞ!」
司会者に促される。
これは絶対に断れないわ。
渋々広場の中心へ向かう。
嫌な視線を感じながら、賞品の剣に近づき、それを手に取る。
「おめでとうございます!今の感想は!」
最悪です!って言えたらいいけど。
「最高です」
軽めに済ませる。
「ありがとうございます!今年の抽選会はここまでまた来年!」
司会者が終了のアナウンスを終わらせるより前に二人の元に剣を携え全力で走る。
「早く戻るぞ!」
「わかった!」
「何で?」
状況を理解できないハーティは置いておき、俺たちは走る。
俺らの予想通り、数人が追手が来ていた。
「どうするの?このままギルドに戻る?どこかに」
「いやこのままギルドに戻る。殺されることはまずないだろうからな」
シルネは納得したのか頷く。
無事ギルド前に着く。
まだ後ろから追いかけているが、スタートダッシュが早かったためギルドの中のどこにいるかは察知されないだろう。
「ザシさんいますか!」
「どうした?てかそれ!わかった。地下に案内する」
やはり事情を把握できたってことは。
俺たちはザシさんに案内され、地下の倉庫の奥の部屋にたどり着いた。
「ここは俺が寝泊まりしてる場所だ。三人厳しいと思うが我慢してくれ」
倉庫の奥に部屋があること自体珍しいがこれは隠れるには持って来いの場所である。
「ありがとうございます。ここならうまく隠れそうです」
「あぁ。まずこの倉庫にはギルド関係者の中でも俺と受付の数人しかこない。安心してくれ」
「あの一つ聞いていいですか?」
「何だ?トイレか?」
俺の真剣な質問に対し、逃げるかのようにジョークをかます。
「それも後々教えてもらいんですが、何故この抽選会について色々隠していたんですか?」
「そりゃ頑張ってくれた報酬だか」
「往生際が悪いんじゃないですか?第一この剣を見て、即座に対応しといて言い訳もクソもないですよ」
「はぁ。嘘はつけそうにないな。そう俺は色々隠してお前さんに抽選券を渡した」
やはり。
「今回は剣が高価な賞品で、場合によっては命を狙われる危険があることを知っていた上で、券を渡したのは謝る。だが、当たるかどうかまではわからなかった。だからすまん」
今はそれを聞きたいんじゃない。
「もう一つ聞いていいか?いや聞く。昨日の草むしり人がいなかったのはその抽選券を配られることがわかっていたからじゃないか?」
「ご名答。本来抽選券自体高価なものなんだ。この国に有益をもたらしたもの、貢献したもの、後は抽選で選ばれたものだけが手にできる券で配布期間は抽選会開始の半年前から一週間前まで配布される。その期間中には賞品の情報は何処にも出回らないんだ。発表されるのは配布期間を終えた次の日。つまりその間はこぞってその券を手にしようと皆が奮闘する。はずだった」
「それは賞品次第では命を晒す危険があったから」
「そう。この抽選会で当たる目玉賞品は毎回異なるが普通じゃ手に入らない逸品ばかり。そのため毎年目玉賞品は命と隣り合わせとなる。さらにこの抽選会で当選した賞品は何があろうとその当選者が所持しなければならない。これに逆らうと王都への反逆と見なされ、死刑になる」
「死刑ですって」
浮かれてあの場にいたとしたら、今頃。
シルネはその事実を知るや否や口を押えて泣き出した。
「すまない。君たちを危険に晒してしまって。そうしなければこちらも危なかったたんだ」
「どういうことですか?」
「本来抽選券を配る役目を持っているのは王都にいる人間のみが保持する。がしかし、近年王都の隊に参加せずダンジョンに向かう冒険者の増加から、このギルドでもその役目を授かった」
「それでその一枚が俺の元に。でも配布期間は終わったはずでは?」
「普通わな。ギルドで配布でしなければならなかった券は合計十枚。俺も最初は楽だと思ったさ。でも現実は違った」
「命の危険」
「そう。さっきも言ったそれだ。しかし、俺らもそれを全て配布しなければ死刑は免れなかった」
「だから期間を過ぎてもなお配布し続けた」
「あぁ。でも賞品が発表された後なんて誰も欲しがろうとしなかった。というか一般人はそれを欲しいと思う人物はいなかった。では何故王都の人間はこぞって欲しがるのか」
「勲章か」
「そうだ。当たったという事実だけが欲しかっただけなんだよ。だからこのギルドで配布した人たちは全員王都の人間だ。それでも一枚残った」
ここまでをまとめると
抽選会から半年から一週間前までに抽選券が配られるが、配布先は基本王都だが、今年に限ってギルドでも配布の任を得た。ギルドで配布を頑張ったが、当たった事実が欲しいだけの王都の人間たちしか欲せず、結果として一枚余りを出してしまった。そしてそれを何も知らない俺たちに押し付け、その結果として一番回避したかった現実が起こった。
「俺らはどうすればいいんですか?」
手に持っている剣を見つめる。
「それは保持し続ければならない。特に盗まれて売りに出されては最後だ」
そうか。
俺が当てたものを盗んでもそいつは被害を被ることはないのか。
「だから会場に男しかいなかったんだな」
「あぁ。王都の人間たちは自分達では出向かない。代わりの者を遣わすのさ。戦闘に長けた人物をな」
多数で行ったのも間違いか。
「そんなに落ち込む?それをずっと持っていればいいだけの話でしょ」
今まで黙っていたハーティが口を開ける。
「お前なわかってんのか?この状況が?」
「何とかなるよきっと」
ハーティの瞳は俺にそれが可能であるという真実を込めていた。
「カタッ。カタッ」
倉庫の入り口の方から足音が鳴り響く。
もちろん逃げることなど不可能な俺たちはその場に立ちつくす。
そして一番回避したい状態に陥った。
「見つけた」
見つかってしまった。




