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初級魔法をショボイと言わせない  作者: タロウ
第一章
11/22

パーティメンバーの重要性

「知ってたのか?」

疲労しきって倒れたシルネを背中におぶり、宿に戻る道すがらクロムに問いかけた。

「何をじゃ?具体的に言わんとわからん」

「裏路地の人たちのことだ」

シルネが甲冑男?に対し、あいつらの被害者だと名乗った人たち。

俺も数人しか会ったことがないが、あの人たちが奴隷として売られてここにいるなどとは想像も出来ない。

もしその事実を知っていたらあの人達の顔を見るだけで苦痛にも耐え難い。

「知っておったよ。だからこそあの人たちに協力するために買い物はすべて裏路地で済ませておる。もちろん買い物をする街を選んだ理由も含まれておる」

クロムは決してこちらを見ようとせず、ただ真っ直ぐ続く道を見つめていた。

「今回の件で解放されるのか」

「さぁどうじゃろ。お主の言ったことが本当ならば王都から人がこちらに派遣されるじゃろう。どちらにしてもこの街を今日は離れればならん。お主は残ってもいいが」

俺にはやらねばならないことが増えたのだ。

ここで立ち止まるわけにはいかない。


「クロム。俺旅に出るよ。そして自力で王都の隊の試験を受ける」


「わしの隊じゃなかったのか?」

先程までとは違い、面食らった顔をする。

「確かに俺の最終目標はそこだ。でも段階を踏まなきゃいけないってのがわかったからな」

先程の戦いは俺が策を労した結果勝利したもの。

純粋な実力勝負であればこちらが負けるのが必然であった。

もう自分には魔法階級の上下で勝とうなどは出来ない。

何故なら自分には初級魔法しか使用することが許されないからだ。

その中でも今回みたいに策を労せば勝てなくない場面は今後も登場するであろう。

でもそれだけではダンジョン攻略など夢のまた夢である。

だからこそ体を鍛えたり、魔法に対しての知識を得るために段階を踏もうと考えた。

まぁこんなことクロムに話しても嘲笑われるだろう。

「わしはお主の行動に関していちゃもんつける気は毛頭ない。好きなようにやれ。そしてわしのとこまで来い」

「あぁ!」

その会話を終えた頃だろうか、いつの間にか太陽が辺りを照らし始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うーん」

「起きたか?」

体が重い。

ここはどこ?

そんなことより何故こんなに地面が揺れているの?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「キョロキョロしてどうした。お前あの後倒れちまったんだぞ」

「えっ?」

どうやらここまでの経緯を話さねばならないらしい。

「シルネいいか・・・」


俺らが宿に到着後、既に馬車は玄関で待機していた。

もちろんその運転手は前回と同様の人。

俺たちはすぐに宿に戻り、荷物を纏め、すぐに馬車に乗り込むことになった。

本当はシルネをベットの上で寝かせてやりたい気持ちがあったが、シルネをこの街に置いておくのは不安になり、とりあえず馬車の中で寝させていた。


「つまり勝手にここまで連れてきたってこと?」

「まぁ、そうなるな」

これは決して誘拐の類でない。

確かにあちらに意識がなかった状態で連れてきたのだから、疑われる可能性が十分にありえるが、一応この街で俺との関係が恋人になっていたのだからギリギリセーフなのではないか。

「確かにここまで色々してもらって消えられるのはこちらもごめんだけど」

「これからどうする?あの街にはいられないだろう?」

まだあの街に男たちの仲間が潜んでいる可能性がなきにしもあらずなのだ。

もし見つかった場合今回のことも合わせて何をされるかはわからない。

「とりあえずあなたたちの行く場所に向かう。それから考えるわ」

「そりゃちょっときついかな。俺はすぐに旅立つし、クロムはダンジョン攻略に向かわないとだし」

ここまで連れてきておいて無責任なのは承知の上だ。

「そうか。とりあえず向こうに着いてどうするか決めるとして。あの時に使った魔法は何なの?」

そう思えば知りたがっていた気が、てかもう一つ俺に聞きたいことがあった気がするが、まぁいいか。

「最初に言っておくが、俺は本当に初級魔法しか使えない。使えない理由は色んな種類の魔法を使っていたから察しはついていると思うが」

「それに関しては私も察しはできていたわ。でも何故あの初級魔法にあれほどの威力が出せたのか。そして何故魔法陣に魔法陣が重ねることができたのか。それが理解できない」

魔法の知識で言えば、シルネと圧倒的な差があるのだ。

そんな俺が説明できるなど、あり得るわけがない。

それでも化学知識であれば少しは教授できるかもしれん。

「まず前者だが、火って言うのは酸素を与えることで燃える激しさを増すことが可能だから。

後者は俺も正直わからんがあいつらの火の玉を作るために魔法陣が干渉していたのを元に試しただけだ」

「結果何にもわかってないじゃない」

おっしゃる通り。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まぁいいじゃないか。それを嬢ちゃんが解明すればいいだけじゃろ?それに嬢ちゃん。嬢ちゃんのために色々してくれた恩人を少しは休ませてやれ」


今まで会話に参加していなかったクロムが口を出す。

確かに私はこの人に色々してもらってばかりだ。

そう思いながら自分の姿を見直す。

綺麗になった髪、新品の服、新品のブーツ・・・?

靴なんてもらってたっけ。

「ねぇ?この靴は?」

「やっと気づいたか。実はあの会議の後、靴を買ってなかったことを思い出して急いで買いに行ってたんだよ。そして帰ったら部屋にいなくて、で部屋を覗いたら窓が開いててそれでもしかしたらって」

「でも、それでどうして私の位置がわかったの?」

「正直に言うと感に近いが、大通りではないと思ったからかな」

なるほど。

偶然こちらに向かうことができたのね。

「てことは昨日一睡もしてないの?」

「まぁそうだな。さっきもシルネの看病してたし」

「看病って。ただの魔力不足よ」

「まぁ一応」

ただのお人よしだ。

この人に対して私は今この人に何にも返すことができない。

今はそれがたまらなく悔しい。

本当、私死ぬつもりだったのに、死ねないじゃん。

くそ。

「寝なさい」

「でももうそろ着くんじゃないか?」

「少しでも睡眠は必要」

「そうじゃぞ」

クロムも同意する。

「わかったわかった。そうするよ」

そのままその人は横になり、10秒と経たぬ内に寝息を立てていた。

「クロム。この人の名前って何?」

「わしもわからん。何せそやつは魔女の残り香じゃからの」

じゃ記憶が。

「私にできることってあるかな」

「そんなの自分で考えろ。でも一つアドバイスするなら、膝枕かの」

いやらしい目つきでこちらを見ながら言う。

「何ですか変態ですか」

「やっぱりわしに冷たくない?」

クロムを放置し、起きないように頭を抱え膝の上に乗せる。

「これでいいかな?」

「やさしさがあれば十分じゃ」

先程と違いとても暖かい表情である。

「私決めたよ」

起きない程度に膝の上に頭を乗せている人物の右耳に囁いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「到着です!」

運転手と共に馬が鳴く。

「あぁあ~」

すっかり寝ていたようだ。

やけに左耳が痺れている感覚がするが、寝返りを打たずに同じポーズで寝ていたせいだろうか。

だんだんぼやけていた視界がはっきりとしだす。

「うーん」

上の方から聞こえる。

頭を動かし、上の方に視線を移す。

そこには今にも寝違えそうに頭を深々と落としながら寝ているシルネがいた。

なんで上に?そしてこの妙に暖かい感覚。

そこでようやく気付く。

「これって膝枕?」

途端に顔が赤くなってしまう。

なんで?俺人生でされたことないのに!

「あああ!」

思わず飛び上がる。

「なに~」

欠伸を手で覆い隠しながらシルネが起きる。

「ななな何にもないよ!」

「どうしてそんなに慌てておるんじゃ。はよ降りんかい」

クロムが妙に笑みを浮かべていることは、運転手だけが目撃していた。


「じゃ!また次もよろしく!」

それだけを言い残し、馬車はその場を去る。

「あのーさっきは・・・」

とりあえずお礼を言おうと思うが言葉が喉に詰まりうまく出せない。

「私こそ・・・」

お互いその場に固まっていしまう。


「おかえりーーー!」

ここで相変わらず空気を読めない人の登場。

これもこの人がモテない理由なのではないか。

「姉さん!すいません。何かムード壊してしまって」

言葉が余計だ。

「お前ら待っておったのか」

「お土産をね!ってその子は?」

本当にただのガキにしか見えないなあれ。

「シルネって言います」

「可愛いー!」

「姉さん!」

シルネの元へ向かおうとするクミルの首を握るセリフィス。

下手したら死ぬレベルだぞあれ。

「痛いじゃない!」

「自己紹介からしろよ!」

これが俗にいう兄弟喧嘩というやつである。

「ふっ」

突然シルネが吹く。

「どうした?」

「何か賑やかだなーって。それとね私、この後どうするか決めたの。それも今のやりとりを見て尚更それがいいって思えた!」

その時の顔は服をプレゼントした時と同じような笑顔を浮かべていた。

「それって?」

その質問の答えを何故か全員で待機する。

「あなたと共に旅に出る!」

「え?」

「私はもっと魔法を知りたい。今のあなたはそれを多く学べる気がするの。いいや絶対そう。そしてあなたの旅をサポートしたい。欲を言うなら親を探したいってのもある」

「どうするんじゃ?」

クロムが俺に問いかける。

「過酷だぞ。知っている通り俺には初級魔法しか使えないそれでも・・・」

「それをサポートするって言ってんの!黙って頷いてよ!」

警告は無駄のようだ。

「了解、承諾するよ」

「ありがとう!」

ここに俺のパーティメンバーが一人増えた。

純サポート魔法を扱える人物。

俺にはもったいない気がするがこれ以上言うと怒られるので言わないことにする。


その日は次の日の旅の準備を行った。

シルネも夜までにクミルとセリフィスと打ち解けていた。

クロムに対してはたまに冷たいが。

そして旅立ちの日。


「クミル、セリフィスありがとう!また必ず来るから隊の一員として!」

「待ってる!」

「うん僕も」

二人に別れを告げた後クロムの元に向かう。

「そしてクロム」

クロムは感謝したくてもしきれない。

今回の旅に必要なものをすべて揃えてもらったり、南に行く手配もしてもらったのだ。

「わしはそう言うのは嫌いじゃ。はよ行って来い!」

「おう!」


「いやーーーー」

ん?

この感動の時間を潰す気なのか。

声のする方角を凝視する。

あれは!

俺がこの世界に来て初めてあった人類の一人。

そして初めてあったモンスターの一匹。

てかまだやっていたのかよ。

「門出は邪魔させない!」

「同感!」

クミルとセリフィスが弓に矢をセットし、放つ。

二本の矢はイノシシの両目に直撃する。

ちなみにこの命中率関してはもう触れない。

「ウォォォーー」

目を潰されたイノシシが悶え、先程までの進行速度が急激に低下する。

「最後はわしがやるかの」

クロムがイノシシの方へ手を向ける。

「イレクトリズモス!」

その発言の直後、目で捉えるのがやっという程度の素早く放たれた一筋の閃光はイノシシの頭部に直撃する。

その後イノシシはキューブと成り果てる。

魔法が放たれてキューブ化するまで一秒とかかっていない。

あれって初級魔法だよな?

あそこまで威力とは。

指揮官レベルの凄さを痛感する。

その関心を余所に追いかけられていた人物がこちらに近寄る。

「ありがとう!いやーずっと追いかけてくるんだよ!迷惑!迷惑!ってどうしてそんなぽかんってしてるの?」

「「シュウ」」

シュウ?

その子は俺のことをそう呼んだ。

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