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06.侵食、おはなし。
「アンタは嘘つきだ」
「え、えー…珍しく話し掛けて来てくれたと思ったら…」
「嘘つきだ」
「心外だよ。私はとっても素直だよ?」
「私も嘘つきだ」
「えっ? キミが、誰にいつウソをついたの?
キミも正直者でしょ?」
「嘘つきなんだ」
「えっ、ちょっと、泣かないで!どうしたの!?」
「もう嫌なんだ」
「さっきの絵のこと?
とっても良くできてたよ。落ち込むことないよっ」
「私が描きたいのは、あんなんじゃない!!」
「きっと、皆また喜んでくれるよ」
「…アンタは嘘つきだ…ッ」
「ウソなんかじゃない、本当よ、ウソじゃない」
「誰も、私の本心になんて気付かない…。
あんな、優しさの塊なんて、私が生み出したんじゃない…」
「キミは疲れてるのよ。お休みなさい。
明日になれば、きっとまた笑えるよ」
「その言葉、何回目だ。ウソつき」