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05.やさしさ、にせもの。
キャンバスに、乱暴に色を叩きつける。
ぐじゅ、と、色の染みる感覚。
真っ直ぐに線を引こうとしても、どうしてもぶれてしまう。
細かく、細かく刻まれた色の欠片は、命を吹き込まれても動き出せそうにない。
強くしなやかに線を描く。
ただただ、感情に任せて、線を描く。
強く描いた線は、柔らかみを帯びて、薄い花びらになった。
明るい色の優しげな花が、私を捉えた。
私は今、何を描いているんだろう。
描いていて、いつもいつもふとそう思う。
そしてそう思う度、激しくキャンバスを叩き折りたい衝動に駆られる。
その衝動を押さえ込むように、頭を抱えた。
「あぁ"…っ」
声とも言えぬ声が、喉を通って外の世界に放り出される。
「…かわいそうに」
顔を上げて、まだ湿っているキャンバスの色たちに、水でぼかしを入れる。
「もう…」
嫌だ。私の感情は、こんな甘い物じゃない。
どうして、どうして…。こんなにも描き出せない?